今回ご紹介する言葉は、ことわざの「乗りかかった船」です。
言葉の意味や使い方、由来、類義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「乗りかかった船」をざっくり言うと……
読み方 | 乗りかかった船(のりかかったふね) |
---|---|
意味 | 一度関わった出来事や、一度始めた出来事は、途中でやめるわけにはいかないということ |
由来 | 一度岸を離れた船からは、何があろうが途中で降りることができないことから |
類義語 | 渡りかけた橋、乗りかけた船、騎虎の勢いなど |
英語訳 | past the point of no return (もう後戻りできないところまで来ている) |
このページの目次
「乗りかかった船」の意味をスッキリ理解!
「乗りかかった船」の意味を詳しく
「乗りかかった船」とは、一度関わった出来事や、一度始めた出来事は、途中でやめるわけにはいかないということを意味することわざです。
これはあくまでも価値観の違いではありますが、中には「一度始めたら絶対にやり遂げる」ということを信念とする人がいます。このような価値観を持つ人は、何事も関わったり、始めたりしたものについては途中で投げ出すことを良いこととは捉えません。
この考え方を「乗り掛かった船」ということができます。
一度始めたものでも、それを続けることを邪魔する様々な出来事や、誘惑、障害が必ず立ちはだかります。
例えば、怪我をしてしまったり、他に趣味ができたり、他のことが忙しくなってしまったりです。このような状況の時に、一度始めたからにはやめるわけにはいかないということを表すのが、「乗りかかった船」ということわざです。
何事があっても諦めず、真面目で、責任感のある人に対して当てはまることわざです。
「乗りかかった船」の使い方
- 一度引き受けた案件は乗りかかった船だ。最後までやり遂げる。
- 受験勉強は投げ出したくなるぐらい辛いものだ。しかし、乗りかかった船、最後の志望校合格までやり切る。
- 友人の恋愛相談に乗ったからには、乗りかかった船と心に決め、最終的に付き合うまで手を貸した。
➀、➁のように、まだやり遂げるかどうか分からなくても、これからやり切るという意思を表明する場面でも、「乗りかかった船」を使うことができます。
また、➂のように、途中で投げ出さずに最後までやり切ったという事実を表明する場面でも、もちろん使うことができます。
注意が必要なのは、途中で投げ出した場面では使うことができないということです。例えば、「乗りかかった船だが、途中でやむを得ず諦めた」というような使い方は誤りということになります。
「乗りかかった船」の由来
「乗りかかった船」の由来は、その言葉そのものにあります。
「乗りかかった」とは、「出航してしまった」ということを意味します。勘違いしやすいのは、「乗りかかった」と「乗りかけている」と混同してしまうことです。
「乗りかけている」は、「まだ出航していない」ことが前提にある言葉です。
一方、「乗りかかった船」は「出航してしまった船」を意味します。
出航してしまった船は、岸から離れるため、もう途中で降りることはできません。
このことから、「乗りかかった船」で、一度始めたものは途中でやめるわけにはいかないという意味で使われるようになりました。
「乗りかかった船」の類義語
「乗りかかった船」には以下のような類義語があります。
- 渡りかけた橋:「乗りかかった船」と同義
- 乗り出した船:「乗り掛かった船」と同義
- 騎虎の勢い(きこのいきおい):勢いがついてしまって、途中でやめられなくなること
「騎虎の勢い」の「騎虎」とは、虎に乗ることを意味します。虎の背中から降りると、虎に食べられてしまいます。そのため、走る虎に乗ってしまった者は、途中で降りるわけにはいきません。
そのことから、「騎虎の勢い」でこのような意味を表すようになりました。
「乗りかかった船」の英語訳
「乗りかかった船」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- past the point of no return
(もう後戻りできないところまできている) - too late to turn back
(遅すぎて戻ることはできない) - as long as one has come this far
(ここまで来てしまったからには) - The person out at sea must sail or sink.
(海に投げ出された人は船を漕ぐか、沈むかしかない。) - We have gone too far to turn back.
(今さら引き返すことができない。)
past the point of no return と too late to turn back は、文ではないので主語と動詞をともなって使います。
as long as one has come this far は、条件節として使うので、主語と動詞をともなった文とともに使います。
まとめ
以上、この記事では「乗りかかった船」について解説しました。
読み方 | 乗りかかった船(のりかかったふね) |
---|---|
意味 | 一度関わった出来事や、一度始めた出来事は、途中でやめるわけにはいかないということ |
由来 | 一度岸を離れた船からは、何があろうが途中で降りることができないことから |
類義語 | 渡りかけた橋、乗りかけた船、騎虎の勢いなど |
英語訳 | past the point of no return (もう後戻りできないところまで来ている) |
「乗りかかった船」の意味や使い方など理解することはできたでしょうか。
何事も、一度始めたものはできるだけ最後までやり遂げたいものです。しかし、それを阻害するものは数多くある場合があります。
何か事情があっても、「乗りかかった船」という言葉を思い出してみましょう。最後までと言わないまでも、できるところまでやり切るモチベーションになるかもしれません。