「握る」と「掴む」は、「手を握る」や「手を掴む」といった風に、なんとなく使っている言葉です。皆さんは、違いを説明できますか?
そこで今回は、「握る」と「掴む」の意味を詳しく述べて、違いを解説します。
☆「握る」「掴む」の違いをざっくり言うと……
目的語におけるモノ | |
握る | 重要な事柄、握り飯 |
掴む | 人の気持ち、物の要点 |
結論:指に力を入れる「握る」、捕らえる動作も含む「掴む」
一方で、「掴む」は5本の指を曲げるところまでを視点に入れ、動きにも焦点が当たっています。また、目的語には、人の気持ちや物事の要点を取ります。
「握る」について、詳しく解説
「握る」は、「指に力を入れる」という部分に視点を置いています。「握る」は、4つのモノを目的語に置けます。
- 手の指全部を内側へ曲げる。また、そのようにして、物をつかんだり、持ったりする。
- 物事をとらえて自分のものとする。手中に収める。
- 重要な事柄を確実につかむ。
- 握り飯や握りずしを作る。
「握る」の使い方の例
次に、用例を紹介します。
- 拳を握る。
- 実権を握る。
- 秘密を握る。
- 寿司を握る。
①は、拳が「手の指を全て内側に曲げている状態」であるため、「握る」が最適です。
②は、権力を自分のものにしていることを表しています。
③は、重要な事柄を手に入れ、離さないでいることを表しています。
④は、握り寿司を握っていることを表しています。
「掴む」について、詳しく解説
「掴む」は、「五指を曲げる」ところまでに視点を置いて、そこまでの動きにも焦点をあてています。
「掴む」は、4つのモノを目的語に置けます。以下の通りです。
- 手で、しっかりと握り持つ。強くとらえて離すまいとする。
- 自分のものとする。手に入れる。
- 人の気持ちなどを、自分に引きつけて離さないようにする。
- 物事の要点などを確実にとらえる。
「掴む」の使い方の例
- 腕を掴む。
- チャンスを掴む。
- 心を掴む。
- コツを掴む。
①は、腕を手でしっかりと握り持っている状態を表しています。
②は、チャンスを自分のものにしたことを表しています。
③は、心を自分に引きつけて離さないことを表しています。
④は、コツを確実に捉えたことを表しています。
「握る」と「掴む」の違いを実感しよう
文章で実感
問題形式にして、違いを紹介します。( )には、「握る」と「掴む」のどちらが入るでしょうか?
- 所有権を( )。
- 固定客を( )。
- 警察が、事件解決の糸口を( )。
- 事件解決の鍵を( )人物。
- りんごを( )。
①は、「握る」が入ります。権利は、自分にとって一定期間効力を持つものです。そのため、手にしてからも離さない「握る」が適切です。
②は、心を引き付けて離さないことを表しているので、「掴む」が入ります。
③は、警察が事件の要点を捉えたことを表しているので、「掴む」が入ります。
④は、③と似ている文章です。しかし、この文章では、重要な事柄を捉えている人のことを表したいので、継続性のある「握る」が入ります。
⑤の文は、りんごを手で持っていることを表せれば良いので、「握る」と「掴む」のどちらも入る可能性があります。
ことわざで実感
- 握れば拳開けば掌
- 溺れるものは藁をも掴む
①の場合、「拳」と「掌」が対象関係になっています。したがって、5本の指を曲げるという動きを表す「掴む」では、ことわざが成り立たないことがわかります。
②の場合、指に力を入れることに焦点がある「握る」を使うより、なんとか藁を捕らえようとする動作も含む「掴む」が自然です。
まとめ
以上、この記事では、「握る」と「掴む」の違いについて解説しました。
- 握る:指に力を入れているという部分に焦点がある
- 掴む:5本の指を曲げるところまでを視点に入れ、動きにも焦点が当たっている
目的語におけるモノ | |
握る | 重要な事柄、握り飯 |
掴む | 人の気持ち、物の要点 |
「手を握る」と「手を掴む」も、違う状況を表しています。違いをしっかり捉えて、「握る」と「掴む」を使い分けましょう。