「飛んで火に入る夏の虫」の意味とは?使い方から英語や類語まで解説

言葉

今回ご紹介する言葉は、ことわざの「飛んで火に入る夏の虫(とんでひにいるなつのむし)」です。

漠然と意味はわかっていても、その由来までは理解していないという方もいるかもしれません。「夏の虫」とは何なのか等、疑問を抱く方は多いでしょう。

以下では、「飛んで火に入る夏の虫」の意味・由来・使い方・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。

☆「飛んで火に入る夏の虫」をざっくり言うと……

読み方飛んで火に入る夏の虫(とんでひにいるなつのむし)
意味それと気づかずに、自ら進んで危険や災難に飛び込んでいくこと
由来灯火に向かって飛んでくる夏の虫が、そのまま焼かれて死んでしまうこと
類義語「蛾の火に赴くが如し」「愚人は夏の虫」「手を出して火傷する」など
英語訳Who perishes in needless danger is the devil’s martyr.(不必要な危険で死ぬ者は悪魔の信仰によって命を落としたも同然である。

「飛んで火に入る夏の虫」の意味をスッキリ理解!

飛んで火に入る夏の虫(とんでひにいるなつのむし):それと気づかず、自ら進んで危険や災難に飛び込んでいくこと

「飛んで火に入る夏の虫」の意味を詳しく


「飛んで火に入る夏の虫」は、自ら進んで危険や災難に進んで飛び込んでいくという意味です。「火」が災難、「夏の虫」がそこへ飛び込む人のことを指しています。また、「入る」を「はいる」とは読まないため、注意しましょう。

「飛んで火に入る夏の虫」のニュアンスとしては、そこに災難があると気づかず、当人は良かれと思ってやっているという前提があります。危険だと気づかずに飛び込んでいくある人物について、第三者が批判的に表現する時に使われることが多いです。

「飛んで火に入る夏の虫」の由来

灯火に向かって飛んでくる夏の虫が、そのまま焼かれて死んでしまうことが「飛んで火に入る夏の虫」の由来です。この由来について説明する際のポイントとして、ある種の虫に備わっている走光性という習性が挙げられます。

走光性とは、光を刺激として受け取った生物が、その刺激をもとに運動をする性質のことです。虫は、昼間は太陽、夜は月の明かりに対して一定の角度を取り、自らが進む方向を決めています。

虫にとってのポイントは、光源となる物体が遠くにあるということです。太陽や月は遠くにあるため、虫はそれらと一定の角度を保ちながら飛ぶことができます。

 

では、たとえば人工的に用意した明かりの場合はどうなるでしょう。この場合、光源と虫との距離が近くなるため、光源と一定の角度を保って飛ぼうとすると、虫は光源の近くを周りながら飛ぶことになります。

結果として、虫は光源に徐々に近づいていくことになります。もし光源が火であった場合、虫は焼け死んでしまいます。

このように、それと気づかずに危険に飛び込んでいく様子を「飛んで火にる夏の虫」と表現しました。「夏の虫」とは「ヒトリガ」という蛾の仲間です。漢字では、火取蛾・燈取蛾・火盗蛾・灯盗蛾などと表記します。ヒトリガは火に向かう習性が目立ってあるため、このような名前がつきました。

ちなみに、害虫を駆除する際に用いる誘蛾灯(ゆうがとう)は、虫に備わっている走光性を利用し、火を使っておびき寄せているのです。

「飛んで火に入る夏の虫」の使い方

「飛んで火に入る夏の虫」は、以下のように使用します。

  1. 敵の陣地に丸腰で侵入するなんて、飛んで火に入る夏の虫だ。
  2. 飛んで火に入る夏の虫とはこのことで、素人の彼がボクシングのチャンピオンに挑むなんて無謀だ。
  3. 君が彼のところに説得に行くなんて、飛んで火に入る夏の虫だからやめておいたほうがいいよ。
どの例文も、当事者に対して、第三者が「飛んで火に入る夏の虫」と表現しているという構図がありますね。

①は、武器を持たずに敵の陣地に行くという行為は、危険だということを表しています。②と③は、絶対に勝てない相手に勝負を挑むことの無謀さを表しています。

「飛んで火に入る夏の虫」の類義語

「飛んで火に入る夏の虫」には以下のような類義語があります。

  • 蛾の火に赴(おもむ)くが如し(ごとし):好んで危険に向かって進むこと
  • 愚人(ぐにん)は夏の虫:自分で自分を危険におとしいれることのたとえ
  • 手を出して火傷する:余計な手出しをして酷い目にあうこと

「愚人は夏の虫」の「夏の虫」は、「飛んで火に入る夏の虫」のそれと同じです。危険に飛び込んでしまう人を愚かしいとして、主語に持ってきた形のことわざです。

「飛んで火に入る夏の虫」の英語訳

「飛んで火に入る夏の虫」を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • Who perishes in needless danger is the devil’s martyr.
    (不必要な危険で死ぬ者は、悪魔の信仰によって命を落としたも同然である)
  • Fools rush in where angels fear to tread.
    (天使が恐れて飛び込まないようなところへ愚か者は飛び込む)
  • rushing to one’s doom
    (飛んで火に入る夏の虫)
  • (like a)moth flying into the flame
    (火の中に飛んでいく蛾のようだ)

“Who perishes in needless danger is the devil’s martyr.” は、きわめて形式的な訳であり、あまり使われることはありません。

また、“rushing to one’s doom” の doom は「悲運、破滅」という意味の英単語です。

まとめ

以上、この記事では「飛んで火に入る夏の虫」について解説しました。

読み方飛んで火に入る夏の虫(とんでひにいるなつのむし)
意味それと気づかずに、自ら進んで危険や災難に飛び込んでいくこと
由来灯火に向かって飛んでくる夏の虫が、そのまま焼かれて死んでしまうこと
類義語「蛾の火に赴くが如し」「愚人は夏の虫」「手を出して火傷する」など
英語訳Who perishes in needless danger is the devil’s martyr.(不必要な危険で死ぬ者は悪魔の信仰によって命を落としたも同然である。

「飛んで火に入る夏の虫」については、由来を知っているとより理解が深まります。危険そのものより、危険を危険と知らずに飛び込むことが最も危険かもしれません。「飛んで火に入る夏の虫」とは、言われたくないものです。