今回ご紹介する言葉は、ことわざの「汝の敵を愛せよ(なんじのてきをあいせよ)」です。
言葉の意味・使い方・由来・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「汝の敵を愛せよ」をざっくり言うと……
読み方 | 汝の敵を愛せよ(なんじのてきをあいせよ) |
---|---|
意味 | 自分の敵である存在にこそ愛を注ぐべきであるということ |
由来 | 『マタイによる福音書』5章・『ルカによる福音書』6章 |
英語訳 | Love your enemies.(あなたの敵を愛しなさい) |
「汝の敵を愛せよ」の意味をスッキリ理解!
「汝の敵を愛せよ」の意味を詳しく
「汝の敵を愛せよ」とは、「敵」であり自分自身を迫害してくるような存在に対しても、愛する人に持つのと同じように慈しみの心を持つべきであるという意味のことわざです。キリスト教にて生まれた言葉です。
ここでの「敵」はもちろん、軍事的理由や宗教的対立などにより敵対する相手のことも指します。しかし、一般的にはもっと小規模な、個人的な考えの相違によって対立しているような相手も含みます。
好きな相手に対して愛を注ぐことは誰にでもできる行為です。この言葉を生んだキリスト教では、むしろ、対立する相手を愛するという困難なことにこそ価値があるのだという考え方をするのです。
「汝の敵を愛せよ」の使い方
- いがみあっていては何も始まらないから、汝の敵を愛せよ。
- 「汝の敵を愛せよ」というが、私は彼を許せない。
①の例文では、対立する相手を受け入れるようにという教訓が表現されています。
②の例文では、「汝の敵を愛せよ」という教え自体に不満が表されています。この教えには、 キリスト教で特に強調される「赦し(ゆるし)」という相手の罪を免除する行為も含まれます。しかし、この文の「私」は、それを理解したうえでできないのだと主張しています。
「汝の敵を愛せよ」の由来
キリスト教は、恋愛的な「愛」ではなく、どのような人にも平等に注がれる「隣人愛」の重要性を説いた宗教です。
神が人間に注ぐ「アガペー」は、神が自らを犠牲にして罪をゆるす「無償の愛」とされています。キリスト教では、その愛と同じ見返りを求めない愛を至高のものとし、その実践を求めています。
もともと、イエス・キリストは、世の罪人の罪をあがなわせるべく、神が遣わせた最愛の子供とされています。
それほど罪人が神から愛されているならば、敵となる人にも愛を注ぐようにしましょうという教えがあるのです。
そのような思想から生まれた「汝の敵を愛せよ」という言葉は、新約聖書の『マタイによる福音書』の5章と『ルカによる福音書』の6章に登場します。
もともと好きである相手を愛することは難しくありません。「敵」という互いに憎み合っている相手や、自分に害を与える存在を愛する行為にこそ、「愛」の本質があります。
このように、人間には、神が人間に注ぐ無償の愛と同じ、無条件の愛を持つことが求められているのです。
「汝の敵を愛せよ」の英語訳
汝の敵を愛せよを英語に訳すと、次のような表現になります。
- Love your enemies.
(あなたの敵を愛しなさい)
英語版の聖書においても、「汝の敵を愛せよ」という言葉はそのままの意味で使用されます。
「敵」は特定の個人ではなく、その人と対立する存在全般を指します。そのため、”Love your enemy.”と”enemy”を単数にするのではなく、”Love your enemies”と「敵」を複数形にするのがふさわしいです。
まとめ
以上、この記事では「汝の敵を愛せよ」について解説しました。
読み方 | 汝の敵を愛せよ(なんじのてきをあいせよ) |
---|---|
意味 | 自分の敵である存在にこそ愛を注ぐべきであるということ |
由来 | 『マタイによる福音書』5章・『ルカによる福音書』6章 |
英語訳 | Love your enemies.(あなたの敵を愛しなさい) |
「敵を愛する」行為は、一見不可能なように思えます。しかし、キリスト教の世界では、罪人とされる私たちが神から受けた愛を引き合いにして、敵対する人へも愛を注ぎましょうという教えがあります。
生きていくうえでは、許しがたい事柄や相手に対して憎しみを抱いたままでいるのではなく、慈愛を持って接することが大切な要素になるのかもしれません。