「無知の知」の意味とは?読み方は?使い方から英語や対義語まで解説

言葉

今回ご紹介する言葉は、「無知の知(むちのち)」です。

言葉の意味・使い方・由来・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。

☆「無知の知」をざっくり言うと……

読み方無知の知(むちのち)
意味自らの無知を自覚すること
由来デルフォイの神託での啓示より
類義語不知の自覚
英語訳I know that I know nothing.(私は、私が何も知らないということを知っている)、Ignorance of knowledge(無知の知)

「無知の知」の意味をスッキリ理解!

無知の知(むちのち):自らの無知を自覚すること

「無知の知」の意味を詳しく

「無知の知」は、「自らの無知を自覚すること」という意味です。古代ギリシアの哲学者・ソクラテスが説いた真理探究の基本になる考え方で、ソクラテス哲学を特徴づける有名な言葉です。

「無知」とは、「知らないこと、知識がないこと」を意味します。よって「無知の知」は、優れた賢者だったとしても、自分がまだまだ知らない、無知であるということを知っている(自覚している)」ということです。

分かりやすく言うと、「自分が無知であることを自覚できていない人よりも、自分が知らないということを自覚している人の方が優れている」ということです。

 

無知である自分に気づくと、自己満足をすることがなくなります。結果的に常に探究心や向上心を持つことにつながるという意味で、「無知の知」が説かれたのです。

「無知の知」の使い方

  1. 知ったかぶりをしないで、無知の知を念頭に置いて知らないことを素直に認めよう。
  2. 自分が知っていると勘違いすることは、無知の知と対極にある。
  3. 無知の知は、真の知へと近づく第一歩である。
「知らないことを知らない」ときだけでなく、「知っていると勘違いしているけれど、本当は知らない」というときにも使います。

「無知の知」の由来

デルフォイの神託

ソクラテス以前、世の中の根源を知っている人は「知者」(ソフィスト)と呼ばれていました。タレス(「万物の根源は水である」と説いた人物)やヘラクレイトス(「万物の根源は火である」と説いた人物)などが著名なソフィストです。

ソクラテスは自らが知識人階級であるにも関わらず、「自分はソフィストではなく、何も知らない」と言い、無知の知を説いた点で画期的でした。

 

ソクラテスが「無知の知」を提唱するに至ったきっかけは、「デルフォイの神託」です。「デルフォイの神託」とは、ギリシアの中央部に位置するデルポイのアポロン神殿において、女性司祭が告げた神の言葉を指します。

ある時、ソクラテスの弟子が「ソクラテスよりも賢い者はいるか」とデルフォイで尋ねたところ、「一番の知者はソクラテスである」と告げられます。しかし、ソクラテスは自分自身をそのように思ったことがありませんでした。

そこで、ソクラテスは神託の真意を確かめようと、政治家や詩人などの賢者を問答をしながら訪ねて回ります。

その結果ソクラテスは、「知識人は実際に知恵を持っているわけではなく、知っていると思い込んでいること」「自分が知らないことを知っていることは、知らないのに知っていると思い込んでいる人よりも勝っていること」に気づきました。

 

ソクラテスは著書を残していませんが、ソクラテスの弟子であるプラトンが著した『ソクラテスの弁明』という本には「無知の知」について詳しく記載があります。

 ソクラテスの問答

ソクラテスは、知識人たちを「問答しながら」訪ねました。その真意は、知識人が知らない事柄を実際に知らないと自覚させることでした。

しかし、実際に問答を行った知識人たちはプライドを傷つけられ、恥をかく結果となりました。そのせいでソクラテスは有識者から恨まれることとなり、無実の罪で告訴されて死刑判決が下されます。そして刑が執行される前に、ソクラテスは毒を飲んで自害しました。

「無知の知」の類義語

「無知の知」には以下のような類義語があります。

  • 不知の自覚:「知らない」ということを自覚すること
  • 汝自身を知れ:自分自身を知るべきだということ

「汝自身を知れ」の意味

「汝自身を知れ」は、デルフォイの神殿の額に刻まれていた言葉です。「無知の知」とは、「他者を知ることや事物を知ることよりも、自分自身を知るべきだ」という点で共通しています。ソクラテスの言葉とされる場合がありますが、定かではありません。

「無知の知」の英語訳

「無知の知」を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • I know that I know nothing.
    (私は、私が何も知らないということを知っている)
  • Ignorance of knowledge
    (無知の知)

“Ignorance of knowledge” の “Ignorance” は、「無知、無学」という意味です。

まとめ

以上、この記事では「無知の知」について解説しました。

読み方無知の知(むちのち)
意味自らの無知を自覚すること
由来デルフォイの神託での啓示より
類義語不知の自覚
英語訳I know that I know nothing.(私は、私が何も知らないということを知っている)、Ignorance of knowledge(無知の知)

「無知の知」は、日常会話やビジネスシーンなどさまざまなシーンで使われる言葉です。ぜひ使い方をマスターしましょう。

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mikan
愛読書は広辞苑。 日本語の持つゆかしさや含み、趣深さが大好きです。大学では音声学・日本語学を専攻しました。 慣用句や四字熟語が得意分野です。