イスラーム教は仏教、キリスト教とともに「世界三大宗教」に数えられ、世界中に16億人もの信者がいると言われています。
日本ではあまり身近ではありませんが、7万人の信者がいるというデータがあります。
しかし、この数値には諸説があり、5万人とするデータもあれば、20万人と発表している機関も存在します。
ところでみなさんはイスラーム教の宗派である「スンナ派」と「シーア派」の違いについてご存知でしょうか。
近年ではグローバル化が進み、それに伴いイスラーム教徒の方を接する機会も増えていくでしょう。
そういったながれのなかで、「スンナ派」と「シーア派」の違いについて知っておいて損はないでしょう。
今回はそんな「スンナ派」と「シーア派」の違いについて詳しく解説していきます。
結論:元々は後継者の決め方の違い
「スンナ派」は「後継者は話し合いによって決定するべきだ」と考えた人々のことを指します。
それに対し、「シーア派」は「後継者はムハンマドと血の繋がりのあるアリーの子孫から選ぶべきだ」と考えた人々のことを指します。
「スンナ派」についてもっと詳しく
「スンナ派」は「後継者は話し合いによって決定するべきだ」と考えた人々のことを指します。
「スンニ派」とも表記します。
この「スンナ」には「慣行・規範・先例」という意味があります。
つまり、ムハンマドが生きていたころの「慣行・規範・先例」を大事するべきだと考えていたということです。
「スンナ派」にとっては「ムハンマドの血」よりもムハンマドが生きていたころの「慣行・規範・先例」、つまりムハンマドが遺したものの方が「ムハンマドとの血の繋がり」よりも重要だったということです。
そういった「慣行・規範・洗礼」を重視しようという考えからスタートしたので、「スンナ派」は「シーア派」に比べて戒律(宗教上のルール)を重んじます。
また、「スンナ派」はイスラーム教徒全体の85%を占める最大宗派です。
イスラーム教徒が国の大半を占める国として西アジア、中央アジア、東南アジア、北アフリカなどが挙げられますが、そのほとんどがスンナ派です。
事実上、イスラーム教の正統派となっています。
代表的なスンナ派の国としては、サウジアラビアが挙げられます。
「シーア派」についてもっと詳しく
「シーア派」は「後継者はムハンマドと血の繋がりのあるアリーの子孫から選ぶべきだ」と考えた人々のことを指します。
この「シーア」という言葉には「党派」という意味があります。
初期のシーア派の人々が「シーア・アリー」(アリー派)と呼ばれていたものが縮まり、「シーア派」と呼ばれるようになりました。
「スンナ派」が「慣行・規範・洗礼」を重視しようという考えからスタートしたのに対し、「シーア派」はこのように「特定の人物」とその繋がりを重視する考えからスタートしました。
そのため、「シーア派」は「スンナ派」に比べ、戒律が緩く、「スンナ派」が1日5回するお祈りも、「シーア派」では1日3回となっています。
また、「スンナ派」では厳密に禁じられている「偶像崇拝(ぐうぞうすうはい)」も「シーア派」ではある程度は許容されています。
「偶像崇拝」とは、神様などの聖なる存在を像や絵といった目に見えるものに形どり、信仰の対象とすることを指し、イスラーム教では「偶像崇拝」を「聖なるものの権威を貶める(おとしめる)行為」として禁止しています。
しかし、先ほど説明したように「シーア派」は「特定の人物」とその繋がりを重視する考えからスタートしたため、そのあたりの戒律が「スンナ派」に比べて、緩めになっているということです。
また、「シーア派」はイスラーム教全体の10%ほどを占める、イスラーム教の宗派の中で2番目の勢力です。
代表的な「シーア派」の国としては、イラン、イラク、レバノン、アゼルバイジャンなどが挙げられます。
まとめ
以上、この記事では「スンナ派」と「シーア派」の違いについて解説しました。
- スンナ派:最大多数。「後継者は話し合いによって決定するべきだ」と考えた人々
- シーア派:2番目の勢力。「後継者はアリーの子孫から選ぶべきだ」と考えた人々
この記事の中では、便宜上「イスラーム教」という表現を用いましたが、これは近年、不適切な表現ではないかという声が高まっている表現です。
なぜなら、「イスラーム」という言葉には「神様の教えに従う」という意味があり、「イスラーム教」という表現だと「頭痛が痛い」のような二重表現になってしまうからです。
そのため、近年では「イスラーム教」の代わりに「イスラーム」という表現を使うことが増えてきています。
近年の日本では外国人労働者が増加傾向にあります。
「隣人がイスラーム教徒」ということが珍しくない未来も、そう遠くはないでしょう。
その時のためにも、しっかりと「スンナ派」と「シーア派」の違いについて理解しておきましょう。