今回ご紹介する言葉は、故事成語の「孟母三遷(もうぼさんせん)」です。
「孟母三遷の教え」というように使われる言葉です。
意味、由来、類義語、対義語についてわかりやすく解説します。
☆「孟母三遷」をざっくり言うと……
読み方 | 孟母三遷(もうぼさんせん) |
---|---|
意味 | 子どもの教育には環境が大切だということ |
由来 | 孟子が幼いとき、より良い教育環境を求める母親は三回引っ越した |
類義語 | 「孟母断機」など |
対義語 | 「慈母敗子」など |
「孟母三遷」の意味をスッキリ理解!
「孟母三遷」の意味を詳しく
「孟母三遷」には、子育てには環境が大事、という意味があります。子どもは周囲の影響を受けやすいので、良い子に育つためには環境にも気を遣う必要があるということです。
また、この言葉は、「教育熱心な母親」という意味でも使われます。子どもの教育のことを考えて、環境にも気を遣う母親の姿が由来となっているからです。
「孟母三遷」の使い方
- 子どもが生まれたから、孟母三遷の教えに従って、静かな住宅街へ引っ越した。
- 小学校受験をさせるため、親子で引っ越す家族も多いそうだ。まさに孟母三遷だ。
- 子どものためにも、孟母三遷の教えに従って、転勤先での家探しは慎重に行おう。
「孟母三遷」の由来
「孟母」とは、古代中国の思想家・孟子の母親のことです。教育熱心な母のもとで育った孟子は、現在でも有名な思想家になったのです。子どものためを思う母親のエピソードが、孟母三遷の由来となりました。
中国の古典『列女伝』には、様々な女性の話が載っています。「孟母」の話も、その一つです。
孟子の家族は、はじめ墓の近くに住んでいました。しかし、子どもの孟子が葬式ごっこをして遊んでいるのを見かねた母親は、引っ越しをします。
次に引っ越したのは、市場の近くでした。孟子は商売ごっこをして遊ぶようになりました。母親は、これを良くないことだと思い、さらに引っ越します。当時の中国では、商業はよくないことだとされていたのです。
最後に、孟子たちは学校の近くに住み始めました。孟子は、学校に通う人たちが儀式をしている様子を見て、「礼」のまねごとをし始めます。
礼とは、当時の中国で重んじられていた礼儀作法のことです。当時のエリートたちは、儒教の教えに沿った礼儀作法を習得する必要があったのです。
孟子は、学校の近くに移ったことで、知らず知らずに儒教の教えを身に着けるようになります。そして、成長すると儒教の教えを体系的に学び、立派な学者となりました。
現在でも、子どもの教育のために、環境に気を遣うことはよく見られますよね。引っ越しまですることはなくても、見てはいけないテレビ番組や、読んではいけない本などが決められている家も多いでしょう。
また、「○○君とは遊んじゃいけないよ」と子どもに注意するように、つきあう友達の影響を考える母親も少なくないでしょう。
「孟母三遷」の類義語
「孟母三遷」には、別のエピソードもあります。
孟子が、ある日学業を中途半端にして家に帰ってきました。それを見た母親が、織りかけていた織物を途中で切ってしまいます。「学業を中途半端にすると意味がない」と教えるためのことでした。
この話からできた故事成語が、「孟母断機」です。孟母三遷と同じく、「教育熱心な母親」という意味があります。また、学問は中途半端にしてはいけない、という意味ももっています。
「孟母三遷」の対義語
「孟母三遷」には、「慈母敗子(じぼはいし)」という対義語があります。「子どもを甘やかしすぎてはいけない」という意味があります。
慈母敗子は、孟子と並ぶ中国の思想家・韓非子(かんぴし)の文章の中に出てくる言葉です。
夫嚴家無悍虜、而慈母有敗子
[出典:『韓非子』勧学]
子どもに厳しくしすぎると子どもはわがままになり、子どもを甘やかしすぎても親不孝になると言われています。つまり、「優しさも厳しさも、ほどほどにしないといけない」ということです。
母親の教育熱心があだとなって、子どもがグレてしまうかもしれません。
まとめ
以上、この記事では「孟母三遷」について解説しました。
読み方 | 孟母三遷(もうぼさんせん) |
---|---|
意味 | 子どもの教育には環境が大切だということ |
由来 | 孟子が幼いとき、より良い教育環境を求める母親は三回引っ越した |
類義語 | 「孟母断機」など |
対義語 | 「慈母敗子」など |
環境が子どもに与える影響は、確かに大きいでしょう。しかし、恵まれない環境でも、子どもが立派に育つこともあります。子育ての環境は、ほどほどに考えるのがよさそうです。