「的を得る」とは「物事の本質を的確に捉える」という意味です。
「的を得る」の正しい読み方に迷ってしまうことはありませんか。
また、「的を得る」は「的を射る」の誤用と考えられることもあるため、「普段の生活で使ってしまっていいのだろうか」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「的を得る」の意味や注意点、使い方、類義語、英語訳について詳しく解説します。
☆「的を得る」をざっくり言うと……
読み方 | 的を得る(まとをえる) |
---|---|
意味 | 物事の本質を的確に捉える |
誤用かどうか | 誤用とされていたが、現在は正しい言葉として定着しつつある |
類義語 | 的を射る 正鵠を射る 核心をつく など |
英語訳 | hit the nail on the head (物事の真理を正確に指摘する) have a point (核心をついている) make sense (道理にかなう) など |
「的を得る」の意味
物事の本質を的確に捉える
例:彼はいつも的を得た発言をする。
「的を得る」とは、物事の本質を正確に捉えることです。
標的となる “的” を、正確に捉えるようなイメージです。
何かを的確に指摘できる人に対して、褒め言葉として使うことが多いです。
「的を得る」は誤用?
「的を得る」はかつて誤用とされていましたが、現在は正しい言葉として定着しつつあります。
「的を得る」をめぐる認識に変化について、詳しく見ていきましょう。
昔:誤用とされていた
もともと、「的を得る」は、以下の理由から誤用と考えられていました。
- 同じ意味で似ている言葉との混同から生まれたと考えられるため
似ている言葉:「的を射る」「正鵠(せいこく)を射る」「当を得る」など - 「的を “得る” 」となると、単に「標的となるものを “手に入れる”」という意味合いになり、「的確に理解する」という意味にならないため
現在:正しい言葉として定着しつつある
「的を得る」は現在、誤用ではなく、一般的な言葉として定着しつつあります。
その理由は以下の通りです。
- 「的を得る」の「得る」を、「手に入れる」ではなく「うまく捉える」という意味として理解すると、不自然な意味にはならないため
※「得る」を「うまく捉える」という意味で使う言葉の例:
当を得る・要領を得る・時宜を得る - 「的を得る」を使う人が増えてきており、意味が問題なく伝わるため
たとえば、三省堂国語辞典は1982年から、「的を得る」を「的を射る」の誤用として紹介していました。
しかし、2013年の第七版では、誤用であるという記載をなくし、「的を得る」を独立した慣用句として掲載しています。
また、文化庁が2012年に実施した調査では、「的を得る」と「的を射る」のどちらを使うかという質問について、下記のような結果が出ました。
2003年 | 2012年 | |
---|---|---|
的を射るを使う人 | 38.8% | 52.4% |
的を得るを使う人 | 54.3% | 40.8% |
このように、「的を射る」と「的を得る」を使う人の割合は近く、どちらを使っても意味が伝わるようになっています。
現在では、「的を得る」は誤用ではなく、一般的な慣用句と定着しつつあります。
しかし、ビジネスシーンなどあらまった場では、「的を射る」のほうを使うのが無難です。
もともと「的を射る」のほうが正しいと考えられていたためです。
また、テレビ局などでは、現在でも「的を射る」を採用しているところが多いためです。
「的を得る」の使い方
「的を得る」は、下記のような言い回しで使います。
- 的を得た〇〇
- 的を得ている
例文を見てみましょう。
- 彼はいつも的を得た発言をする。
- この小説に対して的を得た批評をしたのは、Aさんだけだった。
- ジャーナリストの的を得た質問に、政治家たちはとまどっていた。
- 彼女の企画書は、的を得た内容だと思う。
- 生徒会から的を得た意見が寄せられ、校則が見直されることになった。
- B氏の的を得た考えを聞いて、私は自分の意見の至らなさに気づいた。
- 彼の考えはいつも的を得ているので、尊敬する。
- この記事の内容は的を得ている。
- そして私は、私のこの推察が推察ではあるが充分に的を得ていると確信しておりますのです。
[出典:橘外男「陰獣トリステサ」]
「的を得る」の類義語
「的を得る」には以下のような類義語があります。
- 的を射る
物事の本質を的確に捉える - 正鵠(せいこく)を射る(いる)
物事の弱点や要点を指摘する - 核心をつく
物事の重要なところを指摘する - 看破(かんぱ)する
物事の真相を見破ること - 見抜く
物事の真相を見出す - 当を得る
道理にかなっている
「的を得る」の英語訳
「的を得る」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- hit the nail on the head
(物事の真理を正確に指摘する)
例:His questions hit the nail on the head.
(彼の質問は的を得ている。) - have a point
(核心をついている)
例:She has a point.
(彼女は核心をついている。) - make sense
(道理にかなう)
例:What mother says makes sense.
(母の言っていることは道理にかなっている。) - That’s right.
(そのとおりだ。) - That’s it.
(そのとおりだ。) - Exactly!
(そのとおりだ。)
「的を得る」のまとめ
以上、この記事では「的を得る」について解説しました。
読み方 | 的を得る(まとをえる) |
---|---|
意味 | 物事の本質を的確に捉える |
誤用かどうか | 誤用とされていたが、現在は正しい言葉として定着しつつある |
類義語 | 的を射る 正鵠を射る 核心をつく など |
英語訳 | hit the nail on the head (物事の真理を正確に指摘する) have a point (核心をついている) make sense (道理にかなう) など |
話し合いなどの場において、的確な意見を発することは大切です。
普段の生活のなかで、的を得た見方ができるように心がけましょう。