今回ご紹介する言葉は、「ましてや」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「ましてや」をざっくり言うと……
読み方 | ましてや |
---|---|
意味 | 言うまでもなく |
由来 | 動詞「増す」 |
類義語 | なおさら、当然、言うまでもなくなど |
英語訳 | much more(さらにプラスだ)など |
「ましてや」の意味をスッキリ理解!
「ましてや」の意味を詳しく
「ましてや」には、以下の2つの意味があります。
- 言うまでもなく
- いっそう、さらに、もっと
意味①:言うまでもなく
「ましてや」の1つめの意味は、「言うまでもなく」です。
「Aが〜なら、ましてやBは〜だ」という形で使われ、「ある事柄の状態がそうだったのだから、その後に続く事柄は、言うまでもなくその状態になる」ということを意味します。2つのものを比較するための言葉です。
このときのAとBは同じ系統の事柄でも、全く異なる事柄でも使えます。また、言わなくても当たり前にわかることに対しても使われます。話し言葉でも書き言葉でも用いる言葉です。
意味②:いっそう、さらに、もっと
「ましてや」の2つめの意味は、「いっそう、さらに、もっと」です。
ほとんど意味①と意味は変わりませんが、やや比較のニュアンスが薄れています。厳密には比較できないような主観的な事柄に対して使う場合は、こちらの意味合いが強まります。
なお、陳述の副詞とは、特定の述語とセットになって使われる副詞のことです。例えば「決して〜ない」なども陳述の副詞です。ただし、「ましてや」には現在は厳密に対応する述語はなく、比較的自由に使えます。
「ましてや」の使い方
「ましてや」の使い方のポイントをまとめると、以下のようになります。
- 否定的な文脈でも、肯定的な文脈でも使える
- 口語だと文末を省略することもある
- 敬語表現でも使えるが注意が必要
ポイント①:否定的な文脈でも、肯定的な文脈でも使える
「ましてや」は、否定的な文脈でも肯定的な文脈でも使えます。
なお、否定的な文脈で使う方が多いです。
ポイント②:口語だと文末を省略することもある
「ましてや」を口頭で使う場合、後ろの文の文末を省略することがあります。
これは、「ましてや」を使うときは「Aで〜なのだから、Bでは言うまでもなく〜だ」と、述部が同じになることが多いためです。前後の流れから言わずとも述部が伝わるため、省略する方が簡潔になることがあります。
ポイント③:敬語表現でも使えるが注意が必要
「ましてや」は敬語表現と一緒に使えます。
しかし、物事を強調する表現のため、押しつけがましいニュアンスや上から目線のニュアンスもあります。そのため、使い方には注意が必要です。
語尾を「なおさら」や「なおのこと」に変えたり、文全体で丁寧にへりくだった上で使いましょう。「ましてや」の代わりに、強調のニュアンスの弱い「まして」を使うこともあります。
注意:「ましてや」のよくある誤用
「ましてや」は、誤用の起こりやすい単語です。紹介します。
- 比較の文脈でないときに使ってしまう
- 「ましてや〜や」としてしまう
- 「ましては」としてしまう
誤用①:比較の文脈でないときに使ってしまう
「ましてや」は前後の文章を比較するための副詞ですが、比較する事柄がないのに使ってしまうことがあります。よく見られる使い方ですが、これは厳密に言えば誤用です。
誤用②:「ましてや〜や」としてしまう
「ましてや」は漢字で書くと「増してや」もしくは「況してや」となります。
この「況してや」ですが、同じ漢字を使う陳述の副詞「況(いわん)や〜や」があります。そのため、「ましてや〜や」と使われることもありますが、こちらも自然な使い方ではありません。
誤用③:「ましては」としてしまう
「ましてや」を「ましては」としてしまうことがあります。敬語表現を使おうとしたときに多い誤用です。
この誤用が多いのは「〜におかれましては」などの単語が敬語表現にあるためだと考えられていますが、この「ましては」は「ましてや」とは全く違う意味です。
「ましてや」の由来
「ましてや」を分解すると、以下の単語で構成されています。
- 増す:程度が大きくなること
- て:連用形に接続する助詞
- や:強調の意味を持つ間投助動詞
なお、間投助動詞には他に「ぞ」「なむ」「か」「こそ」があります。
また、ましてやに「増してや」の他に「況してや」という漢字があてられたのは、「況(いわん)や」という言葉が由来だと言われています。
「況や」は、漢文の「況」を訓読みするために生まれた単語です。以下の単語で構成されています。
- 言う:考えや気持ちなどを声に出すこと
- む:推量の助動詞
- や:疑問・反語の助詞
「ましてや」の類義語
「ましてや」には以下のような類義語があります。
- なおさら:さらに
- なおのこと:さらに
- いわんや:言わなくてもわかるほど
- 言うまでもなく:言わなくてもわかるほど
- おろか:言わなくてもわかるほど
- もちろん:無論
- 当然:当たり前に
- 余計:さらに
- 一段と:さらに
- より一層:さらに
- もってのほか:思いもよらないほど
「ましてや」と「当然」の違い
「ましてや」と「当然」には、以下の違いがあります。
ましてや | 当然 | |
品詞 | 副詞 | 副詞、名詞、形容動詞 |
意味合い | 当たり前に〜なる、という意味合いがない | 当たり前に〜なる、という意味合いがある |
ニュアンス | やや上から目線 | かなり上から目線 |
「当然」の方が幅広い場所で使えますが、ただ2つを比較するだけではなく「〜となるのは当たり前だ」というニュアンスも含むため、上から目線に聞こえやすいです。
「ましてや」の英語訳
「ましてや」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- much more
(さらにプラスだ) - much less
(さらにマイナスだ) - even
(〜さえ) - not to mention
(言うまでもない) - to say nothing of
(言えることもないほど) - let alone
(触れなくていいほど)
肯定的な文脈では “much more” 、否定的な文脈では “much less” を使います。
また、 “even” は言及したい対象ではなく比較対象の方に使われ、他のものと組み合わせて使うことが多いです。
まとめ
以上、この記事では「ましてや」について解説しました。
読み方 | ましてや |
---|---|
意味 | 言うまでもなく |
由来 | 動詞「増す」 |
類義語 | なおさら、当然、言うまでもなくなど |
英語訳 | much more(さらにプラスだ)など |
何と何を比較しているのかを念頭に置きながら使いましょう。