漫才とコントの最大の違いは、「漫才は会話であり、コントは寸劇である」という点です。
この他にも、人数や服装、道具など様々な違いがあります。
お笑い番組などを見ていて、「これは漫才だろうか?コントだろうか?」と疑問に思うことはありませんか。
もちろん、定義を詳しく知らなくても、内容が面白ければ十分にお笑いを楽しむことができます。
しかし、両者の違いを知ると、ネタをより楽しむことができるかもしれません。
そこで、この記事では、漫才とコントの8つの違いについて詳しく解説します。
☆「漫才」「コント」の違いをざっくり言うと……
漫才 | コント | |
---|---|---|
形式 | 本人どうしの会話 | 架空の設定にもとづいた寸劇 |
人数 | 2人以上 | 1人以上 |
服装 | 自由 | 演じるキャラクターに合わせた服装 |
道具 | センターマイク | 世界観を演出する小道具・セット |
始め方 | 自己紹介やあいさつ | セリフ |
終わり方 | 決め台詞+あいさつ | 舞台の暗転 |
時間 | 比較的短い | 比較的長い |
語源 | 「萬歳」からの派生語 | フランス語の “conte” |
このページの目次
【結論】「漫才」と「コント」の8つの違い
漫才とコントには以下のような8つの違いがあります。
漫才 | コント | |
---|---|---|
形式 | 本人どうしの会話 | 架空の設定にもとづいた寸劇 |
人数 | 2人以上 | 1人以上 |
服装 | 自由 | 演じるキャラクターに合わせた服装 |
道具 | センターマイク | 世界観を演出する小道具・セット |
始め方 | 自己紹介やあいさつ | セリフ |
終わり方 | 決め台詞+あいさつ | 舞台の暗転 |
時間 | 比較的短い | 比較的長い |
語源 | 「萬歳」からの派生語 | フランス語の “conte” |
これから、それぞれの違いについて詳しく見ていきます。
【1】形式の違い
漫才とコントの1つ目の違いは、形式です。
- 漫才:
本人どうしの会話 - コント:
架空の設定にもとづいた寸劇
それぞれ詳しく見ていきましょう。
漫才の形式
漫才では、舞台上にいる人どうしが、あくまでも本人として会話をします。
ボケの役割がAさん、ツッコミの役割がBさんだとすると、2人は他の人格を演じるのではなく、あくまでも「AさんとBさんの会話のみ」で笑いをとるのです。
しかし、「“会話” という形式が成り立っているかどうか」という点は、お笑い芸人のスタイルによって少しずつ異なります。
たとえば「ナイツ」は、ボケの塙さんとツッコミの土屋さんから成る漫才コンビですが、塙さんは土屋さんではなく、お客さんに向けて話しかけていることが多いです。
コントの形式
コントでは、舞台に上がった人たちが、自分ではないキャラクターを演じ、架空のストーリーを演じます。
「本人ではなく、別の人格になりきって笑いをとる」という点が大きな特徴です。
たとえば、お笑いコンビ「中川家」のこちらのネタでは、2人が「おばちゃん」を演じています。
つまり、コントは、キャラクターどうしの会話内容だけでなく、物語そのものの奇抜さや、衣装の面白さなどでも笑いをとります。
【2】人数の違い
漫才とコントの2つ目の違いは、人数です。
- 漫才:
2人以上 - コント:
1人以上
それぞれ詳しく見ていきましょう。
漫才の人数
漫才は、2人以上で行います。
2人組(=コンビ)で行うことがほとんどです。
しかし、3人組(=トリオ)で漫才を行う人たちもいます。
3人組で漫才をする芸人の例として、「四千頭身」が挙げられます。
1人で話す芸は、会話や掛け合いができないため、漫才とはいいません。
ちなみに、1人でしゃべり、笑いをとる方法は「漫談」といいます。
コントの人数
コントは、1人以上で行います。
実際には、2人組(=コンビ)や3人組(=トリオ)で行うことが多いです。
しかし、1人であっても、架空のキャラクターと設定を演じさえすれば「コント」ということができます。
たとえば、ゆりやんレトリィバァさんは1人で活動する「ピン芸人」ですが、披露するネタは1つの設定で役を演じるものであるため、コントに分類されます。
大人数でコントをする場合は、「コント」よりも「喜劇」と呼ぶほうが自然です。
【3】服装の違い
漫才とコントの3つ目の違いは、服装です。
- 漫才:
自由 - コント:
演じるキャラクターに合わせた服装
それぞれ詳しく見ていきましょう。
漫才の服装
漫才の服装は自由です。
傾向として、スーツで漫才をする芸人が多いです。
しかし、お笑いコンビ「EXIT」など、カジュアルな服装で漫才をする芸人もいます。
コントの服装
コントは架空の物語を演じる形式であるため、演じるキャラクターに合わせた服装で行います。
したがって、コントを専門とする芸人は、ネタの内容や設定によって服装が変わります。
【4】道具の違い
漫才とコントの4つ目の違いは、道具です。
- 漫才:
センターマイクを使う - コント:
世界観を演出する小道具・セットを使う
それぞれ詳しく見ていきましょう。
漫才の道具
漫才で使う道具は、基本的にセンターマイクのみです。
センターマイクとは、ボケの人と、ツッコミの人の間に立っている長いマイクのことです。
3人組で漫才を行う場合は、3人のちょうど中央に置かれます。
漫才は、芸人どうしの会話を披露するシンプルなものであるため、小道具などは使わないのが一般的です。
コントの道具
コントでは、世界観を演出する小道具やセットを使います。
また、役柄によっては、化粧をしたり、かつらをかぶったりすることもあります。
コントは物語の雰囲気を伝えるため、道具だけではなく、照明や音楽を工夫する場合もあります。
- 照明
場面の移り変わりに合わせて、色や明るさを変える - 音楽
場面を面白くしたり、状況が伝わりやすくするためにBGMをかける
【5】始め方の違い
漫才とコントの5つ目の違いは、始め方です。
- 漫才:
自己紹介やあいさつ - コント:
セリフ
それぞれ詳しく見ていきましょう。
漫才の始め方
漫才は、自己紹介やあいさつから始まります。
「どうも、〇〇(名前)です。よろしくお願いします。」などと始めるのが一般的です。
なお、このときに、あえて違う名前を名乗るなど、最初のあいさつから早速笑えるポイントを入れる漫才もあります。
コントの始め方
コントは架空の劇を展開するため、あいさつはなく、セリフからスタートします。
ただし、最初のセリフの前に「コント、〇〇!」とタイトル名を叫ぶスタイルもあります。
なお、最初のセリフは、「どのような設定なのか」がわかるように工夫されていることが多いです。
たとえば、お笑いトリオ「ロバート」のコントの多くでは、ツッコミを担当する山本さんが、冒頭に「この場所にくれば、〇〇ができると聞いたけれど…」などと、状況がわかるセリフを言っています。
【6】終わり方の違い
漫才とコントの6つ目の違いは、終わり方です。
- 漫才:
決め台詞+あいさつ - コント:
舞台の暗転
それぞれ詳しく見ていきましょう。
漫才の終わり方
漫才では、ツッコミの人がボケの人に最後のツッコミをしたあと、観客にあいさつをして終了することが多いです。
具体的には、以下のような終わり方が一般的です。
- もうええわ!ありがとうございました。
- やめさせてもらうわ!(お辞儀)
- もういいよ!ありがとうございました。
最後のツッコミとなる決め台詞は、お笑い芸人のスタイルによって少しずつ異なります。
関西のお笑い芸人は「もうええわ!」を使うことが多いです。
ちなみに、宮城県出身のコンビ「サンドイッチマン」は、ツッコミの伊達さんが「もういいぜ!」と言い、2人であいさつをして漫才を終了しています。
コントの終わり方
コントは、舞台が暗転して終了することが多いです。
暗転とは、舞台の照明が落ちて暗くなることです。
コントは漫才とは異なり、最後に観客にあいさつをすることはありません。
【7】時間の違い
漫才とコントの7つ目の違いは、時間です。
- 漫才:
比較的短い - コント:
比較的長い
それぞれ詳しく見ていきましょう。
漫才の違い
漫才の時間は比較的短いです。
4〜5分前後が一般的な長さです。
たとえば、「M-1グランプリ」という漫才の大会では、4分が制限時間となっています。
しかし、番組やイベントの趣旨によっては、15〜20分ほどの長い漫才もあるため、漫才の時間が必ず短いとは限りません。
コントの時間
コントの時間は比較的長いです。
目安として、10分前後が一般的な長さといえます。
しかし、「キングオブコント」というコントの大会では、ネタの制限時間が5分(予選では2分)となっているため、コントの時間は必ずしも長いわけではありません。
また、数十秒で終わるような「ショートコント」もあります。
【8】語源の違い
漫才とコントの8つ目の違いは、語源です。
- 漫才:
「萬歳」からの派生語 - コント:
フランス語の “conte”
それぞれ詳しく見ていきましょう。
漫才の語源
漫才は、1933年ごろ、「萬歳」という言葉から派生して生まれました
平安時代から、2人の掛け合いで楽しませる「萬歳」という芸がありました。
その後、昭和になり、「エンタツ・アチャコ」というコンビが、「萬歳」を新しくアレンジした形式を確立します。
そして、エンタツ・アチャコの所属事務所の吉本興業が、「漫才」と名付けたのです。より詳細な流れをまとめると、以下のようになります。
- 平安時代
「2人組が、面白い掛け合いで観客を楽しませる」という文化がすでに存在 - 江戸時代
尾張萬歳(おわり まんざい)という人物が、扇子を持ち、2人組の掛け合いで笑いをとる芸を確立
※「才蔵」という役割の人の鼓に合わせて、「太夫」という役割の人が新春の祝いや滑稽な言葉を言うというスタイル
→芸そのものが「萬歳」と呼ばれるように - 昭和
明治時代、「萬歳」の内容をアレンジ・簡略化した芸が「万才」「音曲万才」などと呼ばれるようになる
→1905年〜、吉本興業の「エンタツ・アチャコ」というコンビが現在の漫才と同じスタイル(※)を確立し、大人気に
※スーツ姿、現代的な言葉づかいなど
→1933年ごろ、吉本興業の社長・橋本鐵彦氏が、エンタツアチャコの新しい芸を「漫才」と名付けた
コントの語源
コントは、戦後、フランス語の “conte” から生まれた言葉です。
“conte” には、以下のような意味があります。
- 短い物語
- 短編小説
- 寸劇
- 童話
戦後、ショーなどの幕間に、役者が短い芝居を演じる文化がうまれました。
次第に「寸劇」という意味で「コント」というカタカナ語が定着していきました。
補足:コント漫才とは
コント漫才とは、「漫才の途中に、コントの場面をはさむ」というスタイルの芸です。
コント漫才では、会話の途中で「自分が〇〇の役をするから、君は〇〇の役をやって」などと言うものが多いです。
・
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コント漫才では、「リアルな会話の内容で笑わせる」という漫才のメリットと、「架空の設定やキャラクターで笑わせる」というコントのメリットの両方があるため、楽しさがより大きくなります。
そのため、コント漫才を披露する芸人は多いです。
しかし、芸人や観客によっては、「漫才とコントのどちらかに潔く取り組んだほうがいい」と考え、コント漫才を嫌う人もいます。
コント漫才の歴史
コント漫才は、2009年の「M-1グランプリ」を機に多くなっていったといわれています。
この年の「M-1グランプリ」では、お笑いコンビのサンドイッチマンが、会話のなかで、ピザ屋でのやり取りを挟んだコント漫才を披露し、優勝したからです。
しかし、昭和のころから、「横山やすし・西川きよし」などがコント漫才のネタをもっていました。
そのため、コント漫才は最近生まれたものではなく、昔から存在するスタイルなのです。
コント漫才は漫才?コント?
コント漫才は、漫才の一種として分類されるのが一般的です。
芸の始まりと終わりの挨拶は漫才のスタイルであり、あくまでも漫才という枠組みの一部にコントがあるからです。
「漫才」と「コント」の違いのまとめ
以上、この記事では、漫才とコントの8つの違いについて解説しました。
漫才 | コント | |
---|---|---|
形式 | 本人どうしの会話 | 架空の設定にもとづいた寸劇 |
人数 | 2人以上 | 1人以上 |
服装 | 自由 | 演じるキャラクターに合わせた服装 |
道具 | センターマイク | 世界観を演出する小道具・セット |
始め方 | 自己紹介やあいさつ | セリフ |
終わり方 | 決め台詞+あいさつ | 舞台の暗転 |
時間 | 比較的短い | 比較的長い |
語源 | 「萬歳」からの派生語 | フランス語の “conte” |
漫才とコントの違いをふまえて、お笑い番組などを楽しみましょう。