「脂質」と「糖質」の違いとは?カロリーから役割までわかりやすく解説

違いのギモン

「脂質」も「糖質」も人間にとって欠かせない栄養素です。では、具体的にはどのような違いがあるのでしょうか。この記事で詳しく解説していきます。

結論:「脂質」は高カロリーで、「糖質」はエネルギーになりやすい

「脂質」は高カロリーで効率が良い栄養素です。

「糖質」は他の栄養素よりエネルギーになりやすい栄養素です。

「脂質」についてもっと詳しく

脂質は、脂肪酸というものなどからできており、体内で作り出すことができない必須脂肪酸が含まれています。

脂質は 1 g 当たり 9 kcal のエネルギーを持っており体内に非常に多く貯蔵されています。三大栄養素の中で一番カロリーが高く、効率が良いエネルギーです。

しかし、エネルギーの生産スピードが糖質よりも遅いため、全力疾走、短距離走などの激しい活動になるとエネルギーとしての利用度は極端に下がります。長時間の運動で主に脂質が使われます。

「脂質」の役割

食事によって取り入れた脂質は主に小腸で消化・吸収されてエネルギー源として使われます。また、エネルギー源だけではなく、体温を保持することや身体を形つくる細胞の壁の材料、ホルモンの材料にも使われ、大切な働きを担っています。

さらに、脂質は油溶性ビタミンという、水に溶けにくく油に溶けやすいビタミンの吸収にも役立っています。油溶性ビタミンは、ビタミンA・D・E・K などです。

一日に必要な量

年齢によっても異なりますが、成人の場合、1日に必要なエネルギーの20~30%ほどを脂質からとるのがよいといわれています。例えば、1日 2,000kcal 必要な人の場合、適切な脂質の量はおよそ 55g になります。

脂質が不足すると、発育に障害をきたしたり、皮膚炎の原因となったりします。逆にとりすぎると中性脂肪として体内に蓄えられるため、肥満や生活習慣病の原因になってしまいます。

「脂質」の種類

脂質には、食用油に多く含まれるトリアシルグリセロールというものや、コレステロールなど様々な種類があります。

脂質は脂肪酸というものからできていますが、その脂肪酸の種類によって、脂質の性質が大きく変わります。脂肪酸は大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれ、不飽和脂肪酸の中に一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸というものがあります。

脂肪酸の種類

「飽和脂肪酸」は、動物性食品に多く含まれます。飽和脂肪酸からできている脂質は、主に常温で固体の脂質です。とりすぎると、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪を増やし、心疾患のリスクが高まります。肉類の脂肪、バター、ラード、生クリーム、ケーキ、チョコレート、などに多く含まれます。

「不飽和脂肪酸」は、植物油や魚油、大豆油などに多く含まれます。不飽和脂肪酸からできている脂質は、主に常温で液体です。一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸があります。

「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」は、血液中の余分な中性脂肪やコレステロールを減らし、血液をサラサラにします。特に青魚の油に多い多価不飽和脂肪酸は心疾患のリスクを下げるとされています。オリーブオイル、さんま、いわし、さば、大豆油、ごま油などに多く含まれています。

「トランス脂肪酸」は、植物油に水素を加え工業的に製造された脂質です。悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らします。また、動脈硬化による心疾患のリスクを高めます。マーガリン、ショートニング、パン、ケーキ、カップ麺、スナック菓子などに含まれます。

「糖質」についてもっと詳しく

糖質は、炭水化物から食物繊維を抜いたものです。

糖質は 1 g 当たり 4 kcal のエネルギーを持っており、他の栄養素よりもエネルギーになりやすいという特徴があります。

糖質は、体内では、グリコーゲンという形で肝臓や筋肉などに貯蔵され、必要な時にエネルギーに変換されます。

ですが、人間は寝ているだけでも糖質をエネルギーとして使用しています。それから、すぐ使う量以上に食べた糖質は、体の中で脂肪となって蓄積されます。そのため、糖質貯蔵量は脂質に比べて非常に少ないです。エネルギー切れで動けなくなるのは糖質がなくなってしまうことが原因です。

糖質の役割

糖質は、エネルギーになりやすいため、短距離走など短時間の運動に主に使われます。

また、脳では血液中の糖質が主なエネルギー源です。通常はそのようなことにはなりませんが、極端に糖質が不足すると意識障害などがおこることがあります。

一日に必要な量

年齢によっても変わりますが、1日 2,000kcal 必要な人の場合、およそ 60%程度の 1,200kcalを糖質からとるのがよい といわれます。例えば、ご飯にすると、お茶わんにおよそ5杯分です。

糖質はとりすぎると、肥満や生活習慣病の原因となるおそれがあります。一方、糖質が不足すると、体力が低下したり、疲れやすくなったりしてしまいます。

糖質の種類

糖質には様々な種類があり、特徴や主に含まれている食材が違います。

単糖類

単糖類は水を加えて分解しても、糖類としてこれ以上分けることができない1つの糖から出来ている物です。

ブトウ糖(グルコース)は活動するために欠かせないエネルギー源です。特に脳にとって重要なエネルギー源のため、必要不可欠です。砂糖や炭水化物などをはじめとする様々なものに含まれています。

果糖(フルクトース)は水に溶けやすく、最も甘味が強い糖です。血糖値が上がりにくく、代謝が速いため太りやすいといわれています。とりすぎると処理しきれず、中性脂肪やコレステロールになりやすいです。主に果物に含まれています。

ガラクトースは、細胞膜や神経細胞には必須の成分です。乳製品や甜菜(てんさい)などに多く含まれています。

小糖類(オリゴ糖)

小糖類は、単糖類が2個から10個結合した糖類で、オリゴ糖とも言われます。

乳糖(ラクトース)は善玉菌を増やし、おなかの調子を整えたり、カルシウムの吸収を良くしたりするなどの特徴があります。牛乳や母乳など哺乳類のミルクに含まれています。

ショ糖(スクロース)は、サトウキビや甜菜などから生成されます。砂糖の主成分でもあり、水に溶けやすいです。小腸で分解されて、血液から体内に吸収されます。

麦芽糖(マルトース)は、砂糖に比べてカロリーが少なく、体への吸収が遅いため血糖値の上昇が緩やかです。ダイエットの甘味料として使われることがあります。水飴や、ビールの主成分でもあるモルトに多く含まれています。

トレハロースは、動植物や微生物などいたるところに存在しています。さっぱりとした甘さで、砂糖よりは甘くありません。水との相性がよく保水性も高いため、化粧水などの基礎化粧品に使われています。

多糖類

多糖類は沢山の糖と食物繊維が連結してできた糖類です。

デンプンは、穀類やイモ類に多く含まれています。トウモロコシからできるコーンスターチ、馬鈴薯(ばれいしょ)からできる片栗粉などがデンプンの例です。

グリコーゲンは、動物の体内に存在する多糖類で、動物デンプンとも呼ばれています。肝臓には約1日分のグリコーゲンが蓄えられていて、必要なときにブドウ糖に分解されエネルギーとして使われる。

セルロースは、植物の繊維などの主成分で、植物の約3分の1を占めています。水との相性は良いですが、不溶性で水に溶けません。そのため体内で分解されることはありません。

まとめ

以上、この記事では、「脂質」と「糖質」の違いについて解説しました。

  • 脂質:高カロリーで効率が良い栄養素
  • 糖質:他の栄養素よりエネルギーになりやすい栄養素

脂質や糖質は生きていくうえで必須ですが、とりすぎはよくありません。様々な栄養素をバランスよくとって、健康な体を目指したいですね。