今回ご紹介する言葉は、熟語の「及第点(きゅうだいてん)」です。
言葉の意味・使い方・語源・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「及第点」をざっくり言うと……
読み方 | 及第点(きゅうだいてん) |
---|---|
意味 | 試験の合格に必要な最低限の点数。悪くはない出来栄え。 |
語源 | 中国の官僚登用試験(第)に合格する(及ぶ)という意味から) |
類義語 | 合格点、合格水準、御の字など |
対義語 | 落第点、不合格など |
英語訳 | passing mark |
「及第点」の意味をスッキリ理解!
「及第点」の意味を詳しく
「及第点」の意味は、以下の2つです。
- 試験の合格に必要な最低限の点数
- 一定の基準に達していて、悪くない出来栄えであること
それぞれの意味について詳しく見ていきましょう。
意味①:試験の合格に必要な最低限の点数
「及第点」の元からある意味は「試験の合格に必要な最低限の点数」です。
100点満点の試験で、合格点が60点なら、60点が及第点です。
ただ、人によって満足のいく点数にはばらつきがあることから、「及第点」に絶対の基準はありません。
90点を目指している人なら、80点が及第点になることもありえます。
意味②:一定の基準に達していて、悪くない出来栄えであること
「及第点」の①の意味から派生したのが「一定の基準に達していて、悪くない出来栄えであること」という意味です。
この場合は、評価する人によってニュアンスが変わります。
たとえば、スポーツ選手を評価する際に、「及第点の出来だ」などと表現することがあります。
他人からの評価の場合は、「最低限の仕事はしたが、期待を超える成果は出ていなかった」というやや辛口なニュアンスが含まれます。
もし、自分で評価を下していた場合は、謙虚なニュアンスが出ます。
「及第点」には人を評価する意味合いがあるため、目上の人には使わないように注意しましょう。
「及第点」と同じ意味で「次第点」という言葉が使われることがあります。
しかし、「次第点」は「及第点」の読み間違いから広まった表現です。
「次第点」という言葉は実際には存在しないので注意しましょう。
「及第点」の使い方
- この1週間遊びを我慢したこともあって、何とか及第点を取った。
- 出来としては及第点レベルだね。もう少し工夫できたところがあると思う。
- 唐突の依頼だったが、及第点に達する出来だったよ。
上記の例文のように、「及第点」は以下のような表現で用いられることが多いです。
- 及第点を取る
- 及第点に達する
- 及第点をもらう
- 及第点レベル
- 及第点をつけられる
❶の例文は、1週間遊びを我慢したことが実を結び、何とか合格最低ラインを超えられたという意味です。
❷と❸の例文は、他人から、自分の仕事ぶりを評価されているさまが描かれています。
❷の例文の場合は、最低限の仕事はしてくれているものの、もう少しできると思っていた、というニュアンスです。期待に届かなかったというネガティブな響きがあります。
❸の例文の場合は、唐突な依頼にもかかわらず、許せる出来栄えだったと評価しています。あまり良い結果にはならないだろうと想定していたため、最低限の仕事をしてくれたことをポジティブにとらえています。
「及第点」の語源
「及第点」の語源は、中国の官僚登用試験である「科挙(かきょ)」にあります。
昔の中国では、科挙という難関試験に合格したら高級官僚になることができ、大きな屋敷(政府の施設のこと)で働くことができました。
「及第点」の「第」の字は科挙、もしくは大きな屋敷のことを指しています。
そして、科挙に合格することを、「第に及ぶ(達する)」として「及第」と表現しました。
つまり、「及第点」とは、科挙に合格して大きな屋敷で働ける点数という意味なのです。
ちなみに、「及第点」は当時は「文句なしの合格」という意味で使われていました。
中国では、科挙の合格点に達しないことは「落第」と言いました。
これが「落第点」などの表現に使われる「落第」の語源です。
「及第点」の類義語
「及第点」には以下のような類義語があります。
- 合格点(ごうかくてん):合格とみなせる点数
- 御の字(おんのじ):大いにありがたい
- 妥協点(だきょうてん):互いに歩み寄って合意できる場所
- 合格水準(ごうかくすいじゅん):それ以上の成果を出せば合格となる基準
- 好結果(こうけっか):良い結果のこと
「及第点」と「合格点」の違い
「合格点」とは、合格とみなせる点数のことです。
「及第点」と「合格点」には以下のような違いがあります。
- 及第点:「合格できる点数ギリギリ」というややネガティブなニュアンス
- 合格点:「合格できる点数を超えている」というポジティブなニュアンス
「合格点」は、「及第点」よりもポジティブな意味合いで使われることが多いのです。
「及第点」と「御の字」の違い
「御の字」とは「大いにありがたい」という意味です。
「一夜漬けでこの点数なら御の字だ」などと使います。
「及第点」と「御の字」には以下のような違いがあります。
- 及第点:「まあまあ悪くない」というニュアンス
- 合格点:「とても良い」というニュアンス
「御の字」のほうが「及第点」よりもずっと「良い」というニュアンスなのです。
ちなみに、「御の字」を「及第点」と同じように「まあまあ悪くない」というニュアンスで用いている人もいますが、これは誤用です。
「及第点」と「妥協点」の違い
「妥協点」とは、互いに歩み寄って合意できる場所のことです。
「及第点」と「妥協点」には以下のような違いがあります。
- 及第点:試験などの合格点になんとか届くこと
- 妥協点:双方が歩み寄って一致できる場所
「及第点」と「妥協点」では意味が大きく異なることがわかります。
「及第点」の対義語
「及第点」には以下のような対義語があります。
- 落第点(らくだいてん):合格水準に達しない点数
- 不合格(ふごうかく):試験などに受からないこと
- 赤点(あかてん):補習などの対象になってしまう点数
「及第点」の英語訳
「及第点」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- a passing mark
- a passing grade
“pass” が試験に合格すること、”mark” “grade” が点を意味します。
例文は以下の通りです。
- The passing mark on the test is 60.
(そのテストの及第点は 60点だ。) - After the game, our new coach thought that I got a passing grade as a forward.
(試合後、新監督は、FWとしては及第点だったと評価した。)
まとめ
以上、この記事では「及第点」について解説しました。
読み方 | 及第点(きゅうだいてん) |
---|---|
意味 | 試験の合格に必要な最低限の点数。悪くはない出来栄え。 |
語源 | 中国の官僚登用試験(第)に合格する(及ぶ)という意味から) |
類義語 | 合格点、合格水準、御の字など |
対義語 | 落第点、不合格など |
英語訳 | passing mark |
「及第点」は、試験に合格するという意味から派生し、広く出来栄えについて表現する際にも用いられます。
評価する言葉であるため、他人に言う際には自分の立場をわきまえながら使いましょう。