みなさんは、「勲章(くんしょう)」や「褒章(ほうしょう)」と聞いて、これらが何であるかを説明できますか?
「俳優の○○さんが紫綬(しじゅ)褒章を受章した」などというニュースを聞くことはあるかもしれません。
そこで今回は、「勲章」と「褒章」の違いについて解説します。
結論:表彰対象の分野
「勲章」は、広く社会や国家に長年にわたる貢献をした人に贈られます。
「褒章」は特定分野の発展に多大な貢献をした人に授与されます。
日本の栄典制度
日本を含め、多くの国では、その国に貢献した人などに対する表彰制度が存在しています。
日本の表彰制度である「栄典制度」は、基本的に「勲章」と「褒章」から構成されています。
ちなみに、これらは「賞」ではなく「章」の漢字を用いるのが正しいです。
「賞」が、何かの功績への褒美を意味するのに対し、「章」はしるしを意味します。「章」で与えられるのは、褒美ではなく名誉なのです。
そのため、「勲章」「褒章」共に賞金は一切出ません。
「勲章」をもっと詳しく
「勲章」とは、社会や国に対して優れた業績を上げた人に授与される記章です。よく聞く「叙勲(じょくん)」というのは、この勲章を与えることを意味します。
「勲章」は、原則的に70歳以上である人に贈られます。この年齢制限からも分かる通り、「長年にわたる」貢献というのが、「勲章」の特徴です。
勲章は授与の時期によって、5種類に分けることができます。
- 春秋(しゅんじゅう)勲章:毎年、昭和の日(4月29日)と文化の日(11月3日)に授与。
- 文化勲章:対象は、文化の発展に顕著な功績を残した人。文化の日(11月3日)に授与。
- 外国人叙勲:対象は、来日した国賓や離任する駐日外交官など儀礼的な場合と、日本と他国の友好に貢献した外国人の場合がある。授与は該当者の来日・離日の機会。
- 高齢者叙勲:対象は、88歳となった功労者。毎月1日に授与。
- 死亡叙勲:勲章受章の対象であった人の死亡時に随時授与される。
中でも、春秋勲章には等級があり、功績に応じて上位3段階、その下に6段階あります。
「旭日章(きょくじつしょう)」は民間分野で、社長業などを通してある業界の発展に尽くした人などに贈られます。対して「瑞宝章(ずいほうしょう)」は公務分野で、国会議員や裁判官としての責務を果たした人に授与されます。
- 大勲位菊花章頸飾(だいくんいきっかしょうけいしょく)
- 大勲位菊花大綬章(だいくんいきっかだいじゅしょう)
- 桐花大綬章(とうかだいじゅしょう)
- 旭日大綬章・瑞宝大綬章
- 旭日重光章・瑞宝重光章(じゅうこうしょう)
- 旭日中綬章・瑞宝中綬章
- 旭日小綬章・瑞宝小綬章
- 旭日双光章・瑞宝双光章(そうこうしょう)
- 旭日単光章・瑞宝単光章(たんこうしょう)
上位3章は、旭日大綬章・瑞宝大綬章よりも優れた功労のある人が対象で、日本の栄典制度における最高位のものです。これまでに、皇族や総理大臣などに授与されています。
2018年春の叙勲では、4151人が勲章受章者となりました。
「褒章」をもっと詳しく
「褒章」とは、特定の分野で優れた功績を収めた民間人に授与される記章です。団体に贈られる場合、「褒状(ほうじょう)」と呼ばれます。
冒頭でもふれた「紫綬褒章」は、この「褒章」に含まれています。
「勲章」と同じように年齢制限があり、55歳以上が対象とされています。しかし、特に近年は若い人の受章もあり、中には20代の受章者もいます。
「褒章」には、それぞれの分野毎に色の名前の付いた記章があり、「勲章」のようなランク付けはありません。
- 紅綬(こうじゅ)褒章:火事での救出や、溺れている人の救出などの、人命救助分野。
- 緑綬(りょくじゅ)褒章:ボランティアなどの、社会奉仕活動分野。
- 黄綬(おうじゅ)褒章:農業や商業、工業分野。
- 紫綬(しじゅ)褒章:学術や芸術、スポーツの分野。
- 藍綬(らんじゅ)褒章:消防団長や、犯罪者の社会復帰を支援する保護司などの、社会福祉・公益分野。
- 紺綬(こんじゅ)褒章:公益のため、私財を寄付した人対象。
褒章を二度目以降に授与される場合、「飾版(しょくはん)」と呼ばれる銀製の細長い板が与えられます。
2018年春には、計715の人や団体が「褒章」を受章しました。
まとめ
以上、この記事では、「勲章」と「褒章」の違いについて解説しました。
- 勲章:国家・社会に長年、多大なる貢献をしてきた人に授与される
- 褒章:特定分野における優れた功績が認められた人に授与される
これで、ニュースに「勲章」や「褒章」という単語が出てきた時、その人が「どのような理由で、どのような表彰がなされているのか」が理解できると思います。