今回ご紹介する言葉は、故事成語の「苦肉の計」です。
この言葉は有名なので、聞いたことがある、という人も多いのではないでしょうか。
しかし、有名な故事成語でも、意味はよく知らないという場合も多いと思います。
そこで、「苦肉の計」の意味、由来、例文、類義語、英訳についてわかりやすく解説します。
☆「苦肉の計」をざっくり言うと……
読み方 | 苦肉の計(くにくのけい) |
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意味 | 人間は自らを傷つけることができない、という思い込みを利用して敵をだます計略のこと |
由来 | 黄蓋が曹操に偽装投降したことから |
類義語 | 反間の計 |
英語訳 | a plan to deceive the enemy by self-torture |
「苦肉の計」の意味をスッキリ理解!
「苦肉の計」の意味を詳しく
「苦肉の計」とは、人間は自らを傷つけることができない、という思い込みを利用して敵をだます計略のことです。
自分の身や仲間を苦しめてまで行います。
兵法三十六計のうちの第三十四計にあたる戦術です。
そして、「苦」という漢字の連想から、切羽詰まった状態から苦し紛れに考え出した手段のことを指すようにもなりました。
ちなみに、日本では「苦肉計」「苦肉の策」「苦肉の謀(はかりごと)」などと表記することもあります。
そして、「国苦の計」「苦に苦の計」などと表記するのは間違いなので注意が必要です。
兵法三十六計とは、兵法における戦術を三十六通りにわけてまとめたものです。
味方が有利な場合、不利な場合などにわけられてさまざまな戦術が紹介されています。
ちなみに、苦肉の計は自国がきわめて劣勢の場合に用いられる作戦です。
「苦肉の計」の由来
「苦肉の計」の出典は『三国志演義(さんごくしえんぎ)』です。
ちなみに、「苦肉の計」は日本でできた言葉だと言われていましたが、現在では『三国志演義』が由来だと考えられています。
詳しく見ていきましょう。
中国の三国時代には、魏(ぎ)、呉(ご)、蜀(しょく)という3つの国がありましたが、このうち魏が最も強大でした。
そのため、呉と蜀は同盟を結んで魏に対抗していました。
そんな中、蜀を呉をまとめて倒してやろうと、魏が攻めてきます。
それを呉蜀連合軍が迎え撃ったのが赤壁(せきへき)の戦いです。
この戦いは有名なので、名前くらい聞いたことがある、という人も多いのではないでしょうか。
そして、同盟しているとはいえ、魏はとても強大です。魏は連合軍の3倍の軍を率いてきました。
戦争では基本的に兵の数が多いほうが勝ちますから、連合軍は何か策を考えて、数の不利を覆す必要がありました。
そして、連合軍の総大将は周瑜(しゅうゆ)という人物だったのですが、彼の配下の黄蓋(こうがい)は周瑜がなかなか有効な対抗策を出せないことにイライラし、ついに罵倒してしまいます。
軍では規律が第一なので、当然、上官を罵倒した黄蓋は罰を受けます。
黄蓋は部下の前でむち打ち刑に処されてしまうのです。
むち打ちで重傷を負った黄蓋は敵である魏の軍の総大将、曹操(そうそう)に投降しました。
黄蓋がむち打ち刑にされていたことをスパイから聞いた曹操は、黄蓋の投降を受け入れます。
しかし、黄蓋は本当に投降したのではありませんでした。
彼はわざとむち打ち刑を受け、魏に投降したふりをしたのです。
そして、黄蓋は曹操軍に放火することに成功し、曹操軍は壊滅しました。
黄蓋のこの働きにより、連合軍は赤壁の戦いで勝利することができたのです。
「苦肉の計」の例文
- 彼が行った苦肉の計は見事なものだった。
- 社長は社員を懲戒解雇にしてライバル企業にもぐりこませた。これはまさに苦肉の計だ。
- 試験まで時間がないので、苦肉の計で睡眠時間を削ることにした。
このうち、➌の例文では「苦し紛れの手段」という意味を表していますよね。
「苦肉の計」の類義語
「苦肉の計」には以下のような類義語があります。
- 反間(はんかん)の計
「苦肉の計」の英語訳
「苦肉の計」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- a plan to deceive the enemy by self-torture
(自らを苦しめて敵をだます計画) - a scheme to create dissensions in the rival camp
(敵陣で紛争を起こす計略)
まとめ
以上、この記事では「苦肉の計」について解説しました。
読み方 | 苦肉の計(くにくのけい) |
---|---|
意味 | 人間は自らを傷つけることができない、という思い込みを利用して敵をだます計略のこと |
由来 | 黄蓋が曹操に偽装投降したことから |
類義語 | 反間の計 |
英語訳 | a plan to deceive the enemy by self-torture |
「苦肉の計」は日常生活でも役に立つことがあるかもしれませんね。
覚えておいて損はないと思います。