今回ご紹介する言葉は、心理学用語の「帰属理論(きぞくりろん)」です。
言葉の意味・種類・提唱者・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「帰属理論」をざっくり言うと……
読み方 | 帰属理論(きぞくりろん) |
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意味 | ある事柄の原因を特定の原因に帰属させる帰属過程がどのように行われるのか理論化したもの。 |
提唱者 | フリッツ・ハイダー |
英語訳 | attribution theory, imputation theory, theory of imputation |
「帰属理論」の意味をスッキリ理解!
「帰属理論」の意味を詳しく
「帰属理論」は、ある物事の結果の原因を何に帰属させるか、出来事や人の行動の原因を推論する理論のことです。
心理学における「帰属」は、ある事柄が起きた時に、その原因を何かに求めるプロセスのことを言います。つまり、結果が帰る場所・属する場所はどこかを探すことです。
帰属理論とは、どのように情報を処理するかの研究である社会的認知に関する理論です。
対象の物事の内面に原因があると推論する「内的帰属」と、対象の物事の外面に原因があると推論する「外的帰属」があります。
「帰属理論」の具体例
帰属理論には、内的帰属と外的帰属の2種類があります。内的帰属とは、起こった事象について、当事者本人にその原因を求めることを言います。一方、外的帰属とは、起こったことの原因を、自分以外の誰かや外的な状況に求めることです。
内的帰属の例と、外的帰属の例を以下で説明します。
内的帰属の例として、近所の人に挨拶したという場面を想像してみて下さい。挨拶をしても返してもらえなかった場合、自分の声が小さくて聞こえなかったのだろう、と自分のせいにすることを指します。
反対に、外的帰属は、挨拶をしたにも関わらず返してもらえなかった場合に、相手の気分が悪かったのだろうと自分以外のせいにすることです。
「帰属理論」の種類
「帰属理論」には、フリッツ・ハイダーの帰属理論の他に以下の4つがあります。
- ジョーンズ,E.E.&デービス,K.E.の対応推測理論
- ケリー,H.HのANOVAモデル、因果スキーマモデル
- ワイナー,B.の成功と失敗の帰属モデル
- シャクター,S.の情動理論
①ジョーンズ,E.E.&デービス,K.E.の対応推測理論
他者の行動を観察して、その行動から他者の資質を推測することを理論化したものです。行動(結果)から、その行動を起こさせた資質(原因)を探します。
②ケリー,H.HのANOVAモデル、因果スキーマモデル
ANOVAモデルは、一貫性、弁別性、合意性の3つを基準に帰属先を探すことを理論化したものです。
一貫性とは、当人の原因帰属の仕方が、別の状況でも反応は変わらないことです。弁別性とは、対象となる事柄が変わっても、同じ原因帰属をすることを言います。そして、合意性とは、他の人もその行為者と同じ原因帰属をすることを指します。
因果スキーマモデルは、過去の経験や知識を用いて、少ない情報量で帰属することを指します。
③ワイナー,B.の成功と失敗の帰属モデル
課題達成における成功と失敗の原因を、何に帰属させるのかということを理論として体系化したものです。
④シャクター,S.の情動理論
怒り、恐れ、喜びなどの一時的で急激な感情の動きについて、その感情がどのように生起するかを研究した理論です。
感情と行動の関係については、2つの考え方がありました。
1つ目は、感情が起こって、その後に体に反応が出るというものです。たとえば、「悲しいから、泣く」という原因帰属です。
2つ目は、行動が先にあって、その後に感情が生じているというものです。たとえば、「泣くから、悲しくなる」という原因帰属です。
それらに対して、シャクターは、震えや涙など、体に起こった反応について、「なぜこのような反応が出るのだろう」と原因を推察しようとする過程で感情の種類が決まるという考えを提唱しました。
つまり、2要因とは、体に生じた生理的な反応と、その原因をどこかに探しにいこうとする解釈過程のことを言っています。
「帰属理論」の提唱者
「帰属理論」は、オーストラリア出身であり、アメリカで心理学者として活躍したフリッツ・ハイダーによって提唱されました。
「帰属理論」の英語訳
「帰属理論」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- Attribution theory(帰属理論)
- Imputation theory(帰属理論)
- Theory of imputation(帰属理論)
“attribution”は「帰属」「属性」、”imputation”は「帰すること」という意味です。
まとめ
以上、この記事では「帰属理論」について解説しました。
読み方 | 帰属理論(きぞくりろん) |
---|---|
意味 | ある事柄の原因を特定の原因に帰属させる帰属過程がどのように行われるのか理論化したもの。 |
提唱者 | フリッツ・ハイダー |
英語訳 | attribution theory, imputation theory, theory of imputation |
「帰属理論」は、日常生活のなかにおいて、数多く見出だせる考え方です。「何でこうなったのか」を私たちはよく考えますよね。ぜひ、意味を正しく理解しておきましょう。