「木を見て森を見ず」の意味とは?英語や対義語や類義語まで例文付きで

言葉

今回ご紹介するのは、ことわざ「木を見て森を見ず」です。

言葉の意味や使い方、由来、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。

☆「木を見て森を見ず」をざっくり言うと……

読み方木を見て森を見ず(きをみてもりをみず)
意味一点に集中し、全体が見えていないこと
由来西洋にあるとされている
類義語木を数えて林を忘れる、金を攫む者は人を見ず
対義語鹿を遂う者は兎を顧みず
英語訳Not seeing the wood for the trees.
(木を見て森を見ず)

「気を見て森を見ず」の意味をスッキリ!

木を見て森を見ず物事の一部や細部しか見えておらず、全体が把握できていないこと

「木を見て森を見ず」をもっと詳しく


「木を見て森を見ず」とは、物事の一部や細部しか見えておらず、全体が把握できていないことを表します。

小さな事柄にとらわれすぎて全体に気が向かず、周囲の人や物事をおろそかにしてしまっている状態です。

ビジネスや政治のシーンで使われることの多いことわざです。

 

また、ビジネスシーンでは、「木を見て森を見ず」ではなく、『大切な3つの目』と言い換えられることがあります。

3つの目とは、『虫の目』『鳥の目』『コウモリの目』を表します。

 

まず、『虫の目』は『木を見て』の部分に対応しています。

木しか見えていない状態を、視野が非常に狭く、目の前のものしか見えない虫の目に例えた表現です。

 

一方、『鳥の目』は『森を見ず』の部分に対応しています。

鳥は大空を飛び、空から森全体を眺めることができることから、『鳥の目』に例えられます。

 

『コウモリの目』はことわざにはなく、ビジネスで重要な『逆転の発想』を表しています。

細部を見るだけでも、全体を把握するだけでも、ビジネスでは成功しません。

誰も想像できないような奇抜なアイデアや、従来の考え方を覆すような視点が求められます。

 

そこで、ビジネスシーンでは、ことわざに『コウモリの目』を加えて、より多様な視点で物事を捉えることを説いているのです。

また、ことわざがそのまま使われる場合には、組織全体の利益よりも、自分個人の利益を追求して、周囲に不利益や迷惑を被ることを意味します。

「木を見て森を見ず」の使い方

  1. 学生時代、野球部にキャプテンとして所属していた。野球はチームプレーが大切なのだが、キャプテンである責任感から、僕は自分が結果を出すことばかり考えていた。あの頃の自分は、まさに木を見て森を見ずだった。
  2. 彼女のミスは、大抵が木を見て森を見ずな取り組み方をしていることが原因だ。もっと広い視野で仕事をすれば、きっとミスは減るはずだ。
  3. 僕は、つい目の前のことに集中しすぎてしまう癖がある。親友には長所だと言われたが、自分としては木を見て森を見ずなところを直したいと考えている。何かに夢中になれることは確かに良いことだが、完璧を求めすぎて他の仕事が遅れてしまうからだ。

①では、周りへの配慮を欠いて、自分の役割についてばかり考えていた、自分の学生時代を振り返り反省しています。

②では、彼女のミスの原因を分析し、一点に集中しすぎて全体の流れを把握していないことを意味します。

③では、自分のつい目先の物事に気を配りすぎて周りが見えなくなる性格を反省しています。

 

このように、「木を見て森を見ず」は、良い意味で使われるというよりは、むしろマイナスな意味で使われることが多いです。

反省や後悔、欠点について述べる際に使われます。

 

しかし、このことわざは、物事の一部分を注意深く観察したり、細部にこだわることを否定しているのではありません。

あくまでも、『森(全体)を見ることも忘れてはいけない』という意味なので、物事に対するバランスが大切だという教訓として捉えると良いでしょう。

「木を見て森を見ず」の由来

「木を見て森を見ず」の由来は、定かではありません。

しかし、その語源は西洋にあり、『木を見る者は森が見えない』という類似する格言が存在します。

「木を見て森を見ず」の類義語

「木を見て森を見ず」には、以下のような類義語があります。

  • 木を数えて林を忘れる:「木を見て森を見ず」に同じ
  • 金を攫(つか)む者は人を見ず:目先の利益を追う者は、それ以外のものが見えなくなる
  • 鹿を追う者は山を見ず:「金を攫む者は人を見ず」に同じ
  • 獣を追う者は目に太山(たいざん)を見ず:「金を攫む者は人を見ず」に同じ
木を数えて林を忘れる』と、その他の類似表現との違いは、他の3つのことわざのほうが、よりマイナスな意味合いで使われることです。

『金を攫む者は人を見ず』ということわざは、お金を盗むのに夢中になりすぎて、周囲の人間が見えなかったという故事が由来です。

一方、『鹿を追う者は山を見ず』と『獣を追う者は目に太山を見ず』も、目の前にある利益に気を取られて、周囲の状況に気付けないという意味のことわざです。

 

いずれも似た意味を持つことわざですが、『金』『鹿』『獣』という、明らかな利益や獲物を表す言葉を使っている点に、「木を見て森を見ず」「木を数えて林を忘れる」との違いがあります。

つまり、これら3つのことわざは、注意や警告、教訓的な意味よりも、批判的・否定的な意味をより強く持っているということになります。

「木を見て森を見ず」の対義語

鹿を逐(お)う者は兎を顧(かえり)みず:大きな利益を追求する者は、小さな利益は顧みない

「木を見て森を見ず」の英語訳

「木を見て森を見ず」を英語に訳すと、次のようになります。

  • not seeing the wood for the trees
    (木を見て森を見ず)
  • Failing to see the big picture.
    (全体を見失っている。)
  • Penny wise, pound foolish.
    (小銭に賢く、大金に愚かである。)
Not seeing the wood for the trees は、「木を見て森を見ず」の英訳として、もっとも日本語に近いものです。

“the wood” (森) や “the trees”(木々) といったように、使われている英単語も日本語と対応しているので、わかりやすいですね。

 

Failing to see the big picture は、『全体を見失っている=一点しか見えていない』ことを表す英語のことわざです。

“Failing to~” は『~することに失敗する』を、 “see” は『〇〇を見る』という意味があります。

また、 “picture” には『写真』以外にも、『像』や『事態/状況』『考え』という意味があります。

 

つまり、 Failing to see the big picture. は、『大きな像を見ることに失敗すること=全体像を見失っている』となります。

“picture” という単語の意味から、『1つの考えに固執している』と捉えることもできますね。

 

3つ目の英訳は、他の英訳に比べると、少しひねりのあることわざです。

Penny wise, pound foolish. つまり、『小銭に賢く、大金に愚か』という意味です。

『小さい金額の物事にはお金を使わず、大金を考えなしに使ってしまうこと』を表すこの表現は、『小さな事柄に気を配り、より大きな事柄には気を配らない』ことを表現するときにも使われます。

 

また、以下のような場面でも使うことができます。

A:I’m thinking about getting this shampoo.
(このシャンプーを買おうかな。)

B:I think that is a penny wise and pound foolish decision.
You can be able to get 2 shampoos for 1 if you would buy this one.

(それは賢い判断じゃないと思うな。こっちのシャンプーなら、1つの値段で2つ買えるよ)

A:Oh, really? I didn’t notice it.
(え、本当?気付かなかった。)

この場合、『賢明な判断ではない』という、相手の判断に対して使われています。

“penny” や “pound” というお金を表す単語が使われてはいますが、使用できる場面は金銭に関する話題だけではありません。

使い方を覚えると、非常に便利なことわざです。

まとめ

以上、今回は「木を見て森を見ず」の意味と使い方について解説しました。

読み方木を見て森を見ず(きをみてもりをみず)
意味一点に集中し、全体が見えていないこと
由来西洋にあるとされている
類義語木を数えて林を忘れる、金を攫む者は人を見ず
対義語鹿を遂う者は兎を顧みず
英語訳Not seeing the wood for the trees.
(木を見て森を見ず)

何かに集中すると、つい気付かないうちに『木』ばかりに気を取られてしまいます。

しかし、夢中になっている瞬間こそ、このことわざを思い出して、『森』を見る余裕と冷静さを保ちたいものですね。