「毀損(きそん)」とは?意味や使い方を解説|「名誉毀損」とは

言葉

今回ご紹介する言葉は、熟語の「毀損きそん」です。

「名誉毀損で訴える」というフレーズを目にしたことのある方は多いのではないでしょうか。今回の記事では、専門用語に加えて、「毀損」の意味・使い方・語源・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。

☆「毀損」をざっくり言うと……

読み方毀損(きそん)
意味物を壊したり、利益や体面を損なったりすること
語源壊す・損なうという意味を持つ「毀」と「損」の組み合わせ
類義語破壊、損傷、損壊
対義語回復、修復
英語訳damage, injure, defame

「毀損」の意味をスッキリ理解!

毀損きそん物を壊したり、利益や体面を損なったりすること

「毀損」の意味を詳しく

「毀損」とは、物を壊したり、利益や体面を損なったりすることを指します。物理的に何かを壊すことと精神的に痛手を負わせることの両方のケースで使用される言葉です。

また、「毀損」は単に何かを損なうことだけを指すのではありません。「毀損」と表現する際は、何かを損なうことによって対象物の価値や評価が低下することを暗に示しています。

法律用語!「名誉毀損」の意味とは?

「毀損」という言葉は、「名誉毀損」という形で見かけることが多いでしょう。ここでの「名誉」は、ある人に対する社会的な評価のことを表しています。

「名誉毀損」は、刑法と民法によって罰せられます。

「刑法」では、230条で「名誉毀損罪」が定められています。条文は以下の通りです。

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
[出典:『デイリー六法 2015 平成27年版』]

「名誉毀損」を訴える上では、条文にあるように、「公然と(多くの人がそれを認識しうる状況で)」事柄を示しているか、そしてそれが当人の社会的な信用を落としうるものであるかどうか、という点が争点として問われます。

ただ、当該行為が、公共性を備えており、かつ真実を伝えている場合は、「名誉毀損罪」には当たらないとされています。たとえば、ある人物についての犯罪報道の際、その遠因や背景を明らかにして、二度と同じことが起きないようにすることを目的にしていれば、「名誉毀損罪」には当たりません。

一方、民法では、709条において、損害賠償の責任を負う可能性ある旨が規定されています。条文は以下の通りです。

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
[出典:『デイリー六法 2015 平成27年版』]

民法においては、社会的信用としての「名誉」を、「法律上保護される利益」としています。

「毀損」の使い方

  1. 器物を毀損した。
  2. 景観を毀損することのないように土地開発をすべきだ。
  3. 当店についての根拠のない噂は、明らかに利益を毀損している。
  4. いわれのない風評被害を受けたため、名誉毀損で当事者を訴える。

①の例文は、物理的に物が壊れるという意味で「毀損」を用いています。この意味では、「毀損事故」などの表現もよく使われます。

②の例文では、景観のきれいさが損なわれることを「毀損」と表現しています。

③では、根も葉もない風説がお店の利益に悪影響を及ぼしている様を「利益を毀損している」と言っています。

④の例文では、体面を損なうという意味で「毀損」が使われています。

「毀損」の語源

「毀損」は、壊すことや損なうことを指す 2つの字が合わさってできた熟語です。

「毀」には壊す・悪口を言う、「損」には壊す・利益を失うという意味があります。

そのため、2つが合わさった「毀損」は、物を傷つけることや利益などの形のないものを損なうという意味を持つのです。

「棄損」という表記について

「毀損」は「棄損」と表記されるケースがあります。これは、以前は「毀」という字が常用漢字でなかったため、似たニュアンスを持っている「棄」という字を充てていたからです。「棄」には、打ち捨てるという意味があります。

ただ、平成22年に常用漢字表が改訂され、新たに「毀」が常用漢字として加えられました。そのため、現在では「毀損」という表記が一般的となっています。

「毀損」の類義語

毀損には以下のような類義語があります。

  • 破壊:器物や組織を打ち壊すこと
  • 損傷:人や器物を傷つけること
  • 損壊:(不測の事態で)器物が壊れること

3つとも、物理的に何かを傷つけることに意味の中心があります。一方、毀損の場合は、既述したように対象物の価値が低下することに意味の中心があるため、若干のニュアンスの違いがあります。

また、毀損は名誉や信用などの形のないものに対して用いることが出来るため、その点も上記の 3つとは異なります。

「毀損」の対義語

毀損には以下のような対義語があります。

  • 回復:悪い状態から元通りになること
  • 修復:損なわれた部分をつくろって元通りにすること

「毀損」の英語訳

毀損を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • damage
    ((人や物を)傷つける)
  • injure
    ((人の身体や名誉を)傷つける)
  • defame
    (中傷する、名誉を傷つける)

それぞれを用いた例文は以下の通りです。

例文
  • If the goods are damaged while sending, we will not bear the responsibility of that accident. Please understand this.
    (返送中に商品が毀損した場合、私たちは責任を負いません。ご了承ください。)
  • A groundless rumor you spread injured my reputation.How are you going to make up for this?
    (君が広めた根拠のない噂が、僕の信用を落とした。どう落とし前をつけてくれるんだい。)
  • He defamed her honor even though there was no fault on her part.
    (彼女には何の落ち度もなかったにもかかわらず、彼は彼女の名誉を傷つけた。)

まとめ

以上、この記事では「毀損」について解説しました。

読み方毀損(きそん)
意味物を壊したり、利益や体面を損なったりすること
語源壊す・損なうという意味を持つ「毀」と「損」の組み合わせ
類義語破壊、損傷、損壊
対義語回復、修復
英語訳damage, injure, defame

単に何かを壊すことだけが「毀損」ではありません。利益の損失や価値の低下をも指しているという点に注意して、意味や使い方を覚えてみてください。

⦿参考文献
・鎌田薫(編)『デイリー六法 2015 平成27年版』三省堂