「王様」と「皇帝」の違いとは?どっちが偉いのか、天皇はどちらか解説

違いのギモン

みなさんは「王様」と「皇帝」の違い、ご存知でしょうか?

中学校や高校の歴史の授業で習った気もするかもしれませんが、正確に理解している人は少ないのではないでしょうか。

この記事では、そんな「王様」と「皇帝」の違いについてわかりやすく解説していきます。

結論:「王様」はある単一民族国家の長、「皇帝」は複数の国の支配者

「王様」とは、ある1つの民族によって作られた国家の長です。

一方で、「皇帝」とは、複数の国家を同時に支配する支配者です。

つまり、「王様」によって治められているいくつかの国々をさらに支配しているのが「皇帝」というわけです。

「王様」と「皇帝」の違いの由来は?

「王様」と「皇帝」の由来は古代ローマの時代まで遡ります。

 

「王様」と「皇帝」は、それぞれ「キング(=”king”)」「エンペラー(=”emperor”)」と英訳されます。実はこの「エンペラー」という単語はラテン語の「インペラトル(=命令権を持つもの)」という言葉からきています。

紀元前189年、ローマ帝国のカエサルという人物が、この「インペラトル」という称号をあたえられます。当時、この称号は「凱旋将軍」にあたえられる称号でした。ちなみに、凱旋将軍とは、戦いに勝利して帰還する軍隊を指揮する将軍のことです。

しかし、カエサルが権力を握るにつれて、「インペラトル」は強い権力を示す称号へと変化します。その後、彼の養子のオクタビアヌスがローマ帝国の支配者となり、ローマの支配者の正式名称を「インペラトル」としました。これが最初のローマ皇帝です。

 

そして、「インペラトル」、すなわち「エンペラー」とは、日本語で「帝国」や「勢力圏」を意味する「エンパイア(=”empire”)」の長という意味となりました。要するに、1つの国にとどまらず、複数の国、民族を従える支配者を「エンペラー」と呼びました。

また、「エンペラー」は、「元老院」と呼ばれる現在の国会のようなものの首席議員でもありました。議員ということは選挙で選ばれます。つまり、「エンペラー」は選挙で選ばれていたのです。

 

一方で、「王様」は、エンパイアの一部である、単一民族による「国」の長にすぎません。また、”king”の語源が”kin(=血族、血縁)”であることからもわかる通り、「王様」の地位は、ある一族によって世襲されることがほとんどです。

こうして、ヨーロッパでは「皇帝」がいくつもの「王」を従える、という構図ができあがったのです。

中国の「王様」と「皇帝」

ローマで「皇帝」が生まれた少しあと、中国でも「皇帝」が誕生しました。

中国には大昔、王朝同士が争い合う「戦国時代」と呼ばれる時代がありました。王朝は「王」と呼ばれる人物が治めていた小さな国のようなものです。また、「王」は「正統なる支配者」という意味を持っていました。

そんな中、紀元前221年、ついに「秦」という王朝が中国を統一しました。秦の王は、中国の神話に出てくる「三皇五帝」という王の話を踏まえ、「王の中の王」という意味を込めて、自らを「皇帝」と称しました。これが、かの有名な「始皇帝」であり、世界で最初に現れた「皇帝」です。

皇帝は自らの有力な家臣や息子たちを「王」として地方に派遣し、その地を支配させました。こうして、「王」は「皇帝」に認められた地方の支配者、となりました。こういったことから、ヨーロッパの「皇帝」と「王様」とは少し違うのです。

「天皇」は「王様」? それとも「皇帝」?

では、日本の「天皇」はどちらなのでしょうか。

今までの説明からすると、「天皇」は1つの国の長ですので、「王様」になります。しかし、「天皇」は「王様」でありながら、その英訳は”emperor”とされているのです。

 

これはなぜかというと、旧くは飛鳥時代に遡ります。

この頃、日本のお隣の中国は「隋」と呼ばれ、他国を支配する「帝国」となっていました。もちろん、治めていたのは「皇帝」です。

当時、隋に対して対等な国交を樹立しようと考えていた日本は、隋に送った国書に「東天皇、敬みて西皇帝に白す」というフレーズを残しています。諸説ありますが、これが歴史上初めて「天皇」という称号を公式に用いた場面とされています。

これは「東の天皇が、謹んで西の皇帝に申し上げます」という意味ですが、ここでもし「天皇」を「東の王」などと表現してしまうと、日本は隋の臣下だと勘違いされかねません。というのも、中国において「王」は「皇帝」に認められた地方支配者にすぎないからです。つまり、「天皇」は「王様」というより、「皇帝」と対等な存在としているのです。

 

また、19世紀に入ってくると、ヨーロッパを中心にいくつもの「帝国」、「皇帝」が生まれます。こうした中で、「天皇」を”king”としてしまうと「皇帝」より格下になってしまうため、”king”と訳すことは避けたといいます。

こうした外交上の歴史背景もあって、「天皇」は「王様」だけれど英訳は”emperor”となっているのです。

 

まとめ

以上、この記事では、「王様」と「皇帝」の違いについて解説しました。

  • 王様:ある1つの民族による国家を治める統治者
  • 皇帝:複数の民族、複数の国を治める支配者
現在では「皇帝」は存在しませんが、「王様」と間違えないよう、しっかりと理解しておいてくださいね。