「経団連」と「同友会」と「商工会議所」4つの違いとは?わかりやすく

違いのギモン

皆さんは「経済三団体」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。日本の経済界の中心をなす三つの団体をまとめて「経済三団体」と呼びます。

三つの団体とは、「日本経済団体連合会(経団連)」「経済同友会(同友会)」「日本商工会議所(商工会議所または日商)」です。耳にしたことのあるものもあれば、聞きなれないものもあると思います。ましてや、それぞれの違いを正確に把握するのはかなり難しいと思います。

この記事では、日本経済の中心を担う「経団連」「経済同友会」「日本商工会議所」の違いについて解説します。

☆「経団連」「同友会」「商工会議所」の違いをざっくり言うと……

経団連同友会商工会議所
構成するメンバー大企業企業経営者個人各地域の中小企業(商工会議所)、各地の商工会議所(日商)
活動政府への提言、調査活動、倫理憲章の規定政府への提言、調査活動、企業白書の作成各地域に根差した活動、政府への提言(日商)、検定試験の実施(日商)
法的位置づけ一般社団法人公益社団法人特別認可法人(商工会議所)、特別民間法人(日商)
与える影響最大(自民党に献金)経団連には劣るが強い各地域では非常に強い(商工会議所)、中小企業の声を代表するためある程度の強さ(日商)

「経済三団体」をそれぞれ簡単に

「経団連」とは

「経団連」とは正式には、「日本経済団体連合会」といいます。新聞やニュースなどでも一般的には「経団連」と表記されることがほとんどです。

2002年に、「経済団体連合会」と「日本経営者団体連盟」が合併して現在の形になりました。現在、約1400社で構成されています。

総合経済団体として、企業と企業を支える個人や地域の活力を引き出し、我が国経済の自律的な発展と国民生活の向上に寄与する(経団連HP引用)」と掲げています。

 

経済団体とは、企業はもちろん業界の垣根(かきね)を超えて、経済界に共通する重要な問題などを話し合い、政策を提言する役割を担う団体です。業界の垣根を超えるというのは、つまり自動車業界、食品業界、IT業界などのくくりに関係なく、積極的にコミュニケーションを取るということです。

経済界に共通する問題としては、例えば企業に課される法人税です。法人税は基本的に、企業、業界に関係なく課されるので、共通する事項だと考えられます。どの企業も、法人税は減税してほしいと考えるので、法人税を下げてもらおうと政府、国会に提言を行います。

 

企業は「経団連」に加盟をすることで、「経団連」が定める倫理憲章(りんりけんしょう)、指針(ししん)に従うことが求められます。代表的なのは、採用選考活動に関する指針です。

その年に卒業をする学生(新卒の学生)を採用する際、「経団連」に加盟する企業はルールを順守する必要があるのです。しかし、社会的な人手不足、好景気の背景から、裏でそのルールを破る企業が数多くあり、ルールが形骸化(けいがいか)しているとの指摘もあります。

「同友会」とは

「同友会」とは正式には、「経済同友会」といいます。「同友会」と表記するのが一般的です。

終戦直後の1946年、経済の再建を目的に、当時の中堅企業経営者の数名で発足させた団体です。現在、約1400名のメンバーで構成されています。

より良い経済社会の実現や国民生活を充実させるための諸課題に率先して取り組」んでいます。(カギカッコ内同友会HP引用)

「商工会議所」とは

「商工会議所」は、「日本商工会議所」を指す場合と、「商工会議所」そのものを指す場合とに分かれます。

どういうことかと言うと、「日本商工会議所」は全国各地にある515もの「商工会議所」を会員とする団体を指すからです。その紛らわしさから、「日本商工会議所」は「日商」と略すことも多くあります。

 

全国各地にある「商工会議所」は、各地域ごとに置かれ、その地域内の企業によって組織されています。

「日本商工会議所」は、各地の商工会議所が「その地区内における商工業の総合的な発展を図り、兼ねて社会一般の福祉増進に資する(日商HP引用)」という目的を遂行できるように、商工会議所をまとめ、意見を代表する役割を担っています。

【1】構成するメンバーの違い

「経団連」の構成メンバー

「経団連」を構成するのは、いわゆる大企業と呼ばれる企業です。東京証券取引所一部(東証一部)に上場するような、日本に大きな影響力を持つ企業、約1400社を会員としています。

東証一部上場について、ここでは詳しい解説は割愛しますが、厳しい条件をクリアしなければ東証一部には上場することはできません。つまり、東証一部に上場する企業は、規模も大きく、力のある企業であるということになります。

日本の中心を担うような企業の意見を取りまとめ、代表するのが担う役割です。

「同友会」の構成メンバー

「同友会」を構成するのは、企業経営者個人です。現在、約1400名もの企業経営者が会員となっています。

企業の経営者が、個人の自由な意思に基づいて加盟を決める点は、「同友会」の大きな特徴と言うことができます。

「商工会議所」の構成メンバー

全国各地にある「商工会議所」を構成するのは、各地域の中小企業です。中小企業を会員とした「商工会議所」をまとめあげる役割を担うのが、「日本商工会議所」です。

「商工会議所」「日本商工会議所」は、中小企業の利益を代表していると言われており、「経団連」は大企業、「商工会議所」は中小企業という構図でとらえられます。

現在、全国各地に515もの「商工会議所」が存在し、「日本商工会議所」がそれを束ねています。

【2】活動の違い

「経団連」の活動

「経団連」の活動は多岐に渡ります。中心となるのは、政府への提言や様々な調査です。具体的な活動の一部が以下になります。

  • 労使交渉(労働組合と使用者との交渉、賃金や労働時間などの労働条件に関する議題が主)についての政策提言
  • 対外関係(対米、対中など)に対する経済界からの意見
  • 消費喚起(かんき)に関する政策の提言
  • 国際競争力調査
  • 倫理憲章、指針の規定

日本を代表する大企業を会員とした団体だけあって、これでもごく一部です。特に、政府に対する提言については様々で、その時に話題となっている問題についてはほぼ必ず提言を行います。

「同友会」の活動

「同友会」の活動は、「経団連」の活動と同じく、政府への提言が中心となります。しかし、その他にもアンケート調査企業白書(報告書)の作成を行ったりもします。

「同友会」は、日本経済の発展につながるような活動や、企業経営の改革に関する幅広い活動を行います。

2016年、創立70周年のタイミングで、「みんなで描くみんなの未来プロジェクト」を始動させました。これからの未来を担う若者を含め、様々な立場や層に開かれた議論の場として、「テラス」を開設することを掲げています。

様々な立場、層の人たちが集い、自由に話し合う「テラス」を設け、自由な発想やアイデアでより良い未来を創造することを目指します。

「同友会」は、このような独自の活動も多く手掛け、日本経済に大きな影響力を持っています。

「商工会議所」の活動

全国各地にある「商工会議所」は、その地域に根ざした活動を行っているため、具体的な活動は様々です。その地域でイベントを開催したり、企業同士の交流を図ったり、会議室を貸し出したりするようなこともしています。

「商工会議所」を束ねる「日本商工会議所」の主な役割は、まさに「商工会議所」をまとめあげることにつきます。

しかし、その他に「日本商工会議所」が行う活動で有名なのが、検定試験です。簿記(ぼき)やそろばん、キーボードなどの検定を行っています。

大学生やビジネスマンが多く受験する簿記の検定も、実は「日本商工会議所」が行っているものだったのです。

【3】法的位置づけの違い

「経団連」の法的位置づけ

「経団連」は、法律上の位置づけとしては一般社団法人です。

社団法人とは、何かしらの目的を持った人たちの団体で、権利や義務の主体となること(法人格)を法律上認められています。つまり、一般企業と同じ法人として扱われます。

一般社団法人は、ある一定の要件を満たすることで認められる社団法人で、営利(利益を得ること)は目的としません。その他にも、公益社団法人(公の利益を目的)や営利社団法人(営利を目的)が社団法人にはあります。

「同友会」の法的位置づけ

「同友会」の法律上の位置づけは公益社団法人です。

先ほど述べたように、公益社団法人は、公の利益を目的として設立される社団法人です。

「商工会議所」の法的位置づけ

全国各地にある「商工会議所」は、「商工会議所法」という法律で認められた特別認可法人です。

特別認可法人とは、特別な法律によって数を限定して設立された法人です。つまり、特別扱いをされたと考えることができます。

 

「商工会議所」を束ねる「日本商工会議所」の法律上の位置づけは、特別民間法人です。

特別民間法人とは、特別な法律によって設立された民間法人です。つまり、特別扱いされた民間法人ということになります。民間法人は、その名の通り、民間が設立し、活動する法人のことです。

特別認可法人と特別民間法人の違いについては、特にここでは重要性はありません。他の「経団連」や「同友会」とは法的位置づけが異なるという部分がポイントです。

【4】与える影響の違い

「経団連」の影響

「経団連」は、日本を代表する大企業が会員となった団体ということもあり、影響力の強さは経済三団体の中でも最大と言われています。

特に、経済政策については、「経団連」の意向を無視して政策を行うことは非常に困難と言えます。


さらに、「経団連」は自民党に対して献金(けんきん、資金を提供すること)を行っています。自民党に献金を行うことで、経済界にとって有利な法案や政策が行うことができるのです。

もちろん、自民党と経済界の癒着(ゆちゃく)に関しては批判もされていますが、その関係性が経済発展に貢献している側面が強いのは確かです。

「同友会」の影響

「同友会」は、「経団連」には劣るものの、政策や法案への影響力は非常に強いものがあります。

政府にとっても、日本の経営者が会員である「同友会」は無視することはできません。

また、過去の民主党政権時代には、自民党と関係が強い「経団連」の影響力が弱まり、「同友会」の影響力が強くなりました。

「商工会議所」の影響

全国各地にある「商工会議所」は、他の「経団連」や「同友会」とは異なり、その地域に根差した経済団体です。

そのため、自治体や一般市民含め、それぞれの地域における影響力の強さは非常に強いものがあります。

「商工会議所」をまとめる「日本商工会議所」も、「経団連」「同友会」と同じように政策に対する提言を行います。「日本商工会議所」は中小企業の声を代表する側面があり、政府も「経団連」や「同友会」とは異なる角度からの意見として受け入れています。

まとめ

以上、この記事では、「経団連」「同友会」「商工会議所」の4つの違いについて解説しました。

経団連同友会商工会議所
構成するメンバー大企業企業経営者個人各地域の中小企業(商工会議所)、各地の商工会議所(日商)
活動政府への提言、調査活動、倫理憲章の規定政府への提言、調査活動、企業白書の作成各地域に根差した活動、政府への提言(日商)、検定試験の実施(日商)
法的位置づけ一般社団法人公益社団法人特別認可法人(商工会議所)、特別民間法人(日商)
与える影響最大(自民党に献金)経団連には劣るが強い各地域では非常に強い(商工会議所)、中小企業の声を代表するためある程度の強さ(日商)

※表の日商は各地にある「商工会議所」を束ねる「日本商工会議所」を指します。

日本の経済の中心を担う「経済三団体」は、それぞれ異なる特徴を持っています。また、それぞれ異なる特徴を生かし、日本の政策や経済に非常に強い影響力を持っています。

 

また、政策や法案だけでなく、「経団連」は就職活動におけるルールを定めていたり、「日本商工会議所」は検定試験を行っていたりと、私たちにも直接関わってもいます。

この記事を読んだことをいい機会に、「経団連」「同友会」「商工会議所」それぞれの違いをしっかりと認識しておきたいところです。