「歌謡曲」と「演歌」という言葉は、最近ではあまりなじみがなくなってきたように思えます。どちらも日本の音楽のことを指しますが、どう違うのでしょうか?
今回は、その違いについて解説していきます。
結論:「演歌」は「歌謡曲」のジャンルの中の一つ
「演歌」は歌謡曲のジャンルの一つで、日本独自の要素を多く含む歌のことです。
「歌謡曲」をもっと詳しく
「歌謡曲」は、広い意味では現代日本の代表的なポピュラー音楽、つまり大衆の音楽全般のことをいいます。
現在では「J-POP」と呼ばれている、歌手が歌う、歌詞のついた日本の大衆音楽全般のことを指します。
したがって、「演歌」や「ロック」も「歌謡曲」の中に入ります。
歌謡曲は、演歌としばしば混同され、日本の昔ながらの歌、というイメージで見られがちです。
しかし、本来「歌謡曲」の原点は、明治以降にアメリカやヨーロッパから入ってきた欧米の新しい音楽を日本で「歌謡曲」と呼んだことにあります。
その後、昭和時代に入り、それまで「流行歌」として放送されていた大衆歌曲を、NHKラジオが「はやるかわからないのに、はやり歌とするのは適当でない」として「歌謡曲」として放送するようになったのです。
これにより、「歌謡曲」は西欧の歌曲という意味だけでなく、日本のポピュラー音楽全般で歌詞のあるものの総称として用いられるようになりました。
現在も、欧米のクラシックの歌曲や、欧米のポピュラー音楽のカバー曲、シャンソンなどを指す和名として幅広く使用します。
「演歌」をもっと詳しく
「演歌」とは、歌謡曲のうち小唄や民謡など日本独自の伝統音楽の要素を多く含んだ歌のことをいいます。
日本人独特の感覚や情念を表現しており、義理、人情、男女の情愛、日本の地域性などをテーマにした歌詞が多く見られます。
また、「演歌」は「艶歌」や「怨歌」とも言われ、独特な「暗さ」や「感傷性」を持っています。
歌唱方法も特徴的で、「ヨナ抜き音階」や小節のあるもの、コブシを使う歌唱法などがあります。
「ヨナ抜き音階」とは、「4」と「7」の音、つまり「ファ」と「シ」を抜いたものです。
その音階をメロディーにすることで、独特の演歌の雰囲気が出てくるのです。
演歌は、昭和時代の歌というイメージがあるかもしれませんが、その発祥は、明治時代にまでさかのぼります。
当時、盛んになっていた自由民権運動に対し、政府が取り締まりを行いました。
それにより、公然と演説をすることができなくなりました。
そのことにより、自由民権運動家は演説の代わりに歌を歌うことで政治を風刺するようになったのです。
この歌を「演説歌」といい、これが演歌の始まりとなりました。
その後、昭和時代に入りレコード歌謡の時代になると、「演説歌」は徐々になくなっていきますが、1960年代に「演歌」という形に生まれ変わり再び脚光を浴びます。
それまで「流行歌」としていたジャンルの中から新たに「演歌」というジャンルが生まれたのです。
これが、現在耳にする「演歌」の形です。
まとめ
以上、この記事では、「歌謡曲」と「演歌」の違いについて解説しました。
- 歌謡曲:日本のポピュラー音楽全体のこと
- 演歌:歌謡曲のジャンルの一つで日本独自の歌のこと
「演歌」は「歌謡曲」の中のジャンルの一つということですね。最近ではあまり馴染みがないかもしれませんが、聴いてみることで、日本の独自の感性に触れることができるかもしれません。