故事成語「河は委蛇を以ての故に能く遠し」の意味と使い方:例文付き

言葉

今回ご紹介する言葉は、故事成語の「河は委蛇を以ての故に能く遠し(かわはいいをもってのゆえによくとおし)」です。

言葉の意味・使い方・由来・類義語・対義語についてわかりやすく解説します。

☆「火を乞うは燧を取るに若かず」をざっくり言うと……

読み方河は委蛇を以ての故に能く遠し(かわはいいをもってのゆえによくとおし)
意味状況に柔軟に対応することで物事を成し遂げられるというたとえ
由来古代中国で書かれた『説苑』の一節から
類義語「千里の道も一歩から」「高き山も卑きよりす」

「河は委蛇を以ての故に能く遠し」の意味をスッキリ理解!

河は委蛇を以ての故に能く遠し(かわはいいをもってのゆえによくとおし):
川が地形に沿って遠くへ流れるように、状況に柔軟に対応すれば物事を成し遂げられるというたとえ

「河は委蛇を以ての故に能く遠し」の意味を詳しく

「河は委蛇を以ての故に能く遠し」は、川の流れにたとえて人生の教訓を教える故事成語です。

意味を説明する前に、読みと単語の意味から確認しましょう。

「委蛇」は、「いい」もしくは「いだ」と読みます。ここでは、川が曲がりくねりながら流れる様子を意味しています。「能く」は、「よく」と読みます。「~~ができる」という意味の、古い表現です。「可能」「能力」の「能」ですね。

 

ちなみに、「河」という文字は、中国では黄河を指します。中国の二大河川といえば黄河と長江ですが、長江は「江」と書きます。黄河は、「黄河九曲」という言葉があるほど曲がりくねった川です。平坦な砂漠の中を流れているため、砂交じりの黄色い水が、曲がりくねって流れます。

川が地形に沿って流れなければ、流れは止まってしまいます。水は高いところから低いところへと流れ、海まで到達します。

「物事を成し遂げるにも、自然の摂理に逆らうことはできない」というのが、「河は委蛇を以ての故に能く遠し」の意味です。無理をして不自然なことをしようとしても、先に進むことができないということです。

「河は委蛇を以ての故に能く遠し」の使い方

  1. 河は委蛇を以ての故に能く遠し。いきなり難問に手をつけず、基礎的な問題から始めよう。
  2. 河は委蛇を以ての故に能く遠しだと言うように、改革をするには入念な根回しが肝心だ。
  3. 河は委蛇を以ての故に能く遠しとは言うが、ひらめきによって革新が起こることもある。

「河は委蛇を以ての故に能く遠し」の由来

「河は委蛇を以ての故に能く遠し」は、古代中国の書物の一節に由来する言葉です。

今からおよそ2000年前の漢の時代に、時の皇帝を戒めるために、さまざまな話が集められました。それらは、儒教を研究していた劉向(りゅうこう)によって『説苑(ぜいえん)』としてまとめられました。

その一説に、次のような文があります。

河は委蛇を以ての故に能く遠く、山は陵遅(りょうち)を以ての故に能く高く、道は優游(ゆうゆう)を以ての故に能く化し*、徳は純厚(じゅんこう)を以ての故に能く豪(つよ)し。

*化す=~~になる。ここでは、道が道としてなりたつこと

4つのたとえがあげられていますね。どれも、自然にコツコツと積み重ねていくことで、大きな結果を残すことを意味しています。たとえば、2番目の山のたとえでは、ゆるやかな斜面が続いて高い山ができていると言っています。とがった岩山も、ふもとはなだらかですよね。

「河は委蛇を以ての故に能く遠し」の類義語

「河は委蛇を以ての故に能く遠し」には、以下のような類義語があります。

  • 千里の道も一歩から:長い道のりも、一歩を踏み出すことで踏破できるというたとえ
  • 高きに登るには卑(ひく)きよりす:高い山に登るにも低いところから登り始めるというたとえ

無理せずコツコツと積み重ねることが、大きな成功を勝ち取るために必要なことですよね。

ただし、ここで挙げた2つの例では、「状況に逆らわなずにコツコツと」というよりも、ただ「地道にコツコツと」という意味合いが強いといえます。「河は委蛇を以ての故に能く遠し」はあまり使われない故事成語ですが、独自のニュアンスを持っています。

まとめ

以上、この記事では「河は委蛇を以ての故に能く遠し」について解説しました。

読み方河は委蛇を以ての故に能く遠し(かわはいいをもってのゆえによくとおし)
意味状況に柔軟に対応することで物事を成し遂げられるというたとえ
由来古代中国で書かれた『説苑』の一節から
類義語「千里の道も一歩から」「高き山も卑きよりす」

大きな目標を達成するには、焦ってしまうこともあるかもしれません。しかし、曲がりくねって悠々と流れる黄河のように、一つ一つの状況に対応していくことで成功に至るのです。