「割愛」の意味とは?読み方は?英語や類義語まで例文付きで解説

言葉

今回ご紹介する言葉は、熟語の「割愛(かつあい)」です。

言葉の意味・使い方・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。

☆「割愛」をざっくり言うと……

読み方割愛(かつあい)
意味本来必要な内容を仕方なく削ること
類義語省略、割譲
英語訳leave out(省略する)

「割愛」の意味をスッキリ理解!

割愛(かつあい):本来必要な内容を仕方なく削ること

「割愛」の意味を詳しく

「割愛」とは、本来必要な内容を仕方なく削ることです。

「割愛」はもともと、「愛着や煩悩を捨て去ること」という意味の仏教用語です。

日常用語としては特定の内容を削るときに使われますが、「本当は削りたくなかった」というニュアンスが含まれます。そのため、「不必要なものを切り捨てる」という真逆の意味として使うのは間違いになります。

「国語に関する世論調査」による「割愛」の定義

「国語に関する世論調査」とは、文化庁が日本人の持つ国語に関する意識や、理解の現状について調査をしたものです。国語に対する国民の意識を高める役割も果たしており、毎年さまざまな言葉の使用法が話題になっています。

平成23年度に行われた、「割愛」の意味についての調査の結果は以下の通りです。

意味割合
①不必要なものを切り捨てる65.1%
②惜しいと思うものを手放す17.6%
①と②の両方の意味がある1.7%
①と②のどちらでもない3.3%
わからない12.3%

本来は、②の「惜しいと思うものを手放す」が正しい意味となります。ところが、この意味が正しいと認識している人はわずか 17.6%しかおらず、誤用である①の「不必要なものを切り捨てる」が半数以上の 65.1%となっています。

このことから、「割愛」は、「不必要なものを切り捨てる」という意味の方が一般化しており、本来の意味に対して優勢となっていることがわかります。

正しい意味も誤用も「切り捨てる」という最終的な結果は変わらないため、互いに異なった意味で認識していてもなかなか違いが浮き彫りになりません。そのことから、誤用の意味のつもりで使っていても日常生活で致命的な誤解が生まれることは少なくなります。

しかし、根本的には真逆の意味になるため、できるだけ正しい意味で使えるようにしましょう。

「割愛」の他の意味

  • 割愛:公務員が他の自治体・民間企業に籍を動かすこと。大学職員が他の大学へ移ること

「割愛」は、上記のように、公務員や大学の職員が職場を移るときにも使われます。

移籍にあたり「割愛申請書」を提出することになりますが、これは手続において、移籍先の自治体などが「割愛してもらいたい」と申請する形式を取ることに由来します。

「割愛」の使い方

  1. 詳しい例については、今回は割愛いたします。
  2. 時間が限られていたため、具体的な活用方法ついての説明は割愛せざるを得なかった。
  3. 実は、そのエッセイにはページ数の都合で泣く泣く割愛したエピソードがある。

上記の例文のように、「割愛」は「割愛する」と動詞の形で使われます。口頭の発表や文書など、分量的な制限のある場面に適した言葉です。

①の例文では、「詳しい例」について説明をしたい気持ちはあるものの、仕方なく省略することを「割愛」と表現しています。

②の例文では、「具体的な活用方法」という、説明があった方が聴衆にとってわかりやすいと思われる事柄を省略することに対し、「割愛」という言葉を使っています。

「話の大筋を理解するのに必ずしも必要ではないが、あった方がよいものを仕方なく削る」というようなニュアンスになります。

 

③の例文では、「本当は盛り込みたかったができなかった」という気持ちが「割愛」という言葉に込められています。「割愛」だけでも仕方なく削った、という意味になりますが、「泣く泣く」という言葉を付け加えることで「割愛」のニュアンスをより強調しています。

これらの例文のように、発表する側にとっては本来は削りたくない内容を削る場合に「割愛」が使われます。

ただし、②の例文のように発表者が聴衆や読者の立場に立ち、「あった方が理解が進むだろう」と判断したことを削る場合も、「割愛」と表現されることがあります。

どちらの場合でも、「不必要だから削ったのではなく、時間など内容以外の理由によって削らざるを得なかった」というニュアンスが「割愛」には含まれています

「割愛」の類義語

割愛には以下のような類義語があります。

  • 省略:簡略化のために一部を省くこと
  • 割譲(かつじょう):所有しているものの一部を他に譲ること

「省略」とは、簡略化のため、一部を切り捨てることです。「省略」という言葉には、切り捨てられた情報が必要なものかどうかという判断のニュアンスはありません。

「割愛」は、「省略」の中でも特に、「本当は省きたくないもの」というニュアンスが加わったものになります。

「割譲」とは、所有しているものの一部を他に譲ることです。主に、国の領土を他国に受け渡すときに使われます。

「切り渡す」という意味で「割愛」と共通しますが、「割愛」のように「惜しみながら渡す」というニュアンスは含まれていません。

「割愛」の英語訳

割愛を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • leave out
    (省略する)
  • omit
    (省く)
“leave out” は、「省く」「抜く」といった意味を持つ英語表現です。「惜しみながら」というニュアンスは含まれないので、別の場所で感情を補う必要があります。

omitには、「あえて省く」という意味だけでなく「うっかり省く」という意味もあります。どちらかというと、過失として省いてしまったという印象を与える英単語であるため、こだわりがなければ “leave out” の方が使いやすいでしょう。

まとめ

以上、この記事では「割愛」について解説しました。

読み方割愛(かつあい)
意味本来必要な内容を仕方なく削ること
類義語省略、割譲
英語訳leave out(省略する)

「割愛」は間違った使い方が広まっている言葉ではあります。しかし、もともと他の言葉で代用しにくい意味であるため、本来の意味が消滅し誤用の意味に完全に置き換わることはないでしょう。正しい意味をしっかりと覚えて区別できるようにしましょう。