「関東」と「首都圏」。どちらも東京近郊を指す言葉で、天気予報やイベントの名称でたびたび目にします。社会人であれば、両者の違いは知っていて当然かもしれません。
しかし、両者の指す地域はほぼ同じであり、違いは微妙です。そのため、「関東と首都圏の違いは?」と唐突に質問され、すらすらと答えられる人はあまりいないのではないでしょうか。
今回は、日常生活・社会生活で頻繁に目にする「関東」と「首都圏」の違いを解説していきます。確認の意味も込めて、ぜひ読んでみてください。
結論:首都圏=関東+山梨県
「首都圏」は東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城・栃木・群馬・山梨です。
「首都圏」とは、「関東」に山梨県を加えた地域です。
「関東」をもっと詳しく
「関東」とは、関東地方の略語です。東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・茨城県・栃木県・群馬県の一都六県のことです。北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州と8つある日本の地方の1つです。
「関東」の中でも、「北関東」と「南関東」という区分に分けることができます。茨城県・群馬県・栃木県の3県のことを「北関東」、東京都・千葉県・神奈川県の1都2県のことを「南関東」といいます。埼玉県は「北関東」と「南関東」両方の区分に入ることがあるため、微妙な立ち位置になっています。
奈良時代・平安時代には「不破関(ふわのせき)」「鈴鹿関(すずかのせき)」「愛発関(あらちのせき)」の3つの関所が置かれていました。これらは平城京・平安京の防衛のためにつくられたもので、3つ合わせて「三関(さんかん)」と呼ばれます。
美濃の「不破関」は現在の岐阜県不破郡関ケ原町(ふわぐんせきがはらちょう)にあり、伊勢の「鈴鹿関」は現在の三重県亀山市にありました。越前の「愛発関」は現在の福井県敦賀市(つるがし)と滋賀県高島市(たかしまし)の境にありました。
当時、これら「三関」よりも東側の地域を、「関所の東」という意味で「関東」と呼んでいました。
その後の時代になると源頼朝は、京都、奈良といった天皇の支配が強い地域を「西方」とし、自らの鎌倉周辺地域を「関東方」と称しました。ここから派生して、鎌倉幕府自体のことも「関東」と呼びました。
また、鎌倉幕府が終わり、室町幕府が成立すると、鎌倉周辺地域の統治を目的とした機関である「鎌倉将軍府」が置かれました。以下の対象地域は、当時「関東」と括られました。
- 相模国(さがみのくに) 神奈川県
- 武蔵国(むさしのくに) 埼玉県・東京都・神奈川県
- 安房国(あわのくに) 千葉県
- 上総国(かづさのくに) 千葉県
- 下総国(しもうさのくに) 千葉県・茨城県
- 常陸国(ひたちのくに) 茨城県
- 下野国(しもつけのくに) 栃木県
- 上野国(こうづけのくに) 群馬県
- 伊豆国(いずのくに) 静岡県
- 甲斐国(かいのくに) 山梨県
江戸時代には、現在の「関東」は「関八州」と呼ばれました。含まれるのは相模(さがみ)・武蔵(むさし)・安房(あわ)・上総(かずさ)・下総(しもうさ)・常陸(ひたち)・上野(こうずけ)・下野(しもつけ)の8地域です。これは現在の関東地方の区分けとほぼ一致しています。
「甲信越」とは?
天気予報等では、「関東・甲信越(こうしんえつ)」というように「関東地方」と「甲信越地方」が一括りにされることが頻繁にあります。甲信越地方とは、山梨県、長野県、新潟県の3県のことです。つまり、「関東・甲信越」とは、「関東」地方と「甲信越」地方を合わせた一都九県のことです。
「甲信越」という名前は、3県の昔の地名である甲斐(かい)、信濃(しなの)、越後(えちご)の頭文字をとったものです。
「首都圏」をもっと詳しく
「首都圏」とは東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・茨城県・栃木県・群馬県・山梨県の一都七県のことです。つまり「関東」に山梨県を加えた地域が「首都圏」です。山梨県は、日本の地方の分類でいうと、中部地方になります。
「首都圏」の定義については、1956年に公布された首都圏整備法により定められています。首都圏整備法は、首都圏の整備の計画・実行についてまとめたものです。
具体的には第2条第1項で【この法律で「首都圏」とは、東京都の区域及び政令で定めるその周辺の地域を一体とした広域をいう。】としています。
1957年の首都圏整備法施行令1条では、上記内容について「周辺の地域は、埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県、栃木県、群馬県及び山梨県の区域とする。」としています。これにより、公的な「首都圏」の定義が確定しました。
さらに、首都圏の中でも特に人口の多い、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県を、「東京圏」や「東京都市圏」ということがあります。
まとめ
以上、この記事では、「関東」と「首都圏」の違いについて解説しました。
- 関東:東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城・栃木・群馬
- 首都圏:東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城・栃木・群馬・山梨
山梨県は、東京近郊のイメージが強い人もいるかもしれませんが、「首都圏」であっても「関東」ではありません。長野県や新潟県、静岡県と同じ中部地方です。
地域の区分は時代と共に変化するものですが、現在の「関東」は一都六県です。しっかり覚えておきましょう。