地域や学校・会社など多数の人が属するコミュニティには、先代から受け継がれてきた習わしや、ずっと行われてきた行事がありますよね。
それらを表す言葉として「慣行」「慣習」「慣例」といったものがありますが、みなさんはこの3つの言葉を区別できますか?
どの言葉にも「慣(なれ)」という字が共通しており、一見同じ意味のようにも思えますが、実はそれぞれ独自の意味を持っています。
以下では、「慣行」「慣習」「慣例」の違いについて例文付きでくわしく解説していきます。
結論:「慣行」と「慣習」は拘束力の差、「慣例」は別物
一方、「慣例」は繰り返し行ううちに定着していった事柄を表します。
「慣行」をもっと詳しく
「慣行」とは、学校や会社などで古くから行われている行事や、昔からのしきたり・習わしを表します。広い意味で使われ、「普段の生活で常に行っていること」という意味もあります。
「慣習」に比べて拘束力は低く、強制的に守らされるものではありません。軽い決まりごとのようなものと考えるとよいでしょう。
「慣行」の文字にも「行」が含まれているように、実際に行われるものに対して使われることが多いです。
「慣行」の使い方の例
- うちの会社では、バレンタインに女性社員がチョコレートを配るのが慣行となっている。
- 慣行にならって、同じ部署の後輩を食事に連れていく。
- 日本的雇用慣行は崩壊しつつある。
①では、昔から根付いている会社内の文化という意味で「慣例」が使われています。
②も、ずっと受け継がれている習わしという意味を表しています。「慣行にならって」や「慣行に従って」という形で用いられることが多いです。
③では、雇用に関して習慣的に行われていることを「雇用慣行」という言葉で表しています。日本的雇用慣行には、終身雇用や年功序列などがありますが、例文にもあるように、近年ではこうした慣行は見直されつつあります。
「慣習」をもっと詳しく
「慣習」とは地域や社会で古くから代々受け継がれてきた事柄を表します。
伝統的なしきたりや習わしという意味合いが強く、昔から根付いてきた文化とも言えます。
拘束力があり、そのコミュニティに所属する者なら当然守るべきである、というやや強制的なニュアンスを含むのが特徴です。
また、よく似た言葉に「習慣」があります。
漢字がひっくり返っただけのように思えるかもしれませんが、「慣習」は社会全体のしきたりであるのに対して、「習慣」はもっと個人的なルーティンのことを指します。
混同しやすいのでぜひ覚えておきましょう。
「慣習」の使い方の例
- 冬至の日にはゆず風呂に入るという慣習がある。
- 正月が近づいてきたので、慣習に従って玄関にしめ縄を飾る。
- 慣習を守らない者は、村の人々から白い目で見られる。
①、②では日本の伝統文化として古くから行われてきた事柄を表しています。こうした「慣習」は、生活のなかでの経験を通じて知っていくことが多いですよね。
③は、強制力の強さがよく表された一文になっています。コミュニティにうまく馴染むためには、その場のルールに従うのが一番です。
「慣例」をもっと詳しく
「慣例」とは何度も同じことを繰り返すうちに、だんだんとそうすることが当たり前になっていった事柄を表します。
「慣行」や「慣習」のように古くから受け継がれてきたという歴史がない場合でも、何度か繰り返し行ってきたことが定着したものであれば「慣例」と言うことができます。
別の言い方をすると、日常生活のなかで習慣化されたこととも言えます。
「慣例」の使い方の例
- ハロウィンに仮装をして街を歩くことが慣例化してきている。
- 我が家では、最後に風呂に入った人が風呂掃除をするのが慣例になっている。
①では、繰り返すうちに定着してきたことを「慣例化」という熟語で表しています。
②では、日常生活のなかで当たり前なこととしてルールになっていったものを表しています。
まとめ
以上、この記事では、「慣行」「慣習」「慣例」の違いについて解説しました。
- 慣行:学校や会社などで古くから行われている行事、昔からのしきたり・習わし
- 慣習:地域や社会で古くから代々受け継がれてきた事柄、伝統的なしきたり・習わし
- 慣例:繰り返し行ううちに定着していった事柄
3つの言葉の違いを理解していただけましたか?
どれも字面が似ていて混同しやすいので、それぞれの特徴を覚えておくと良いですね。
間違った使い方をしないように気を付けましょう。