「改善の余地がある」などのように、ビジネスの場などさまざまな場面で「改善」という言葉が使われます。
また、「品種改良を重ねて病気への耐性を高める」などのように、似たような意味の語句として「改良」があります。
ところで、「改善」と「改良」は同じような使い方で使われることが多いですが、全く同じ意味で使われる言葉なのでしょうか。
今回はこの2つの単語の意味の違いについて解説していきます。
結論:使う対象が違う
その一方、「改良」は物体などの具体的な対象の性質を良くすることを指します。
「改善」をもっと詳しく
「改善」は抽象的なものに対し、物事の全体を良い方向に向かって改める際に使用します。
たとえば、「社会」「習慣」「システム」といったように、概念や制度に対して主に使われます。ビジネスの場では無駄を無くしたり作業の速度を上げる際などに使用されます。
そして、「改善」は主に目的に対して使用されます。この使われ方の例として「勝率を改善するために作戦を見直す」などがあります。
さらに、トヨタの生産方式の強みの1つとして「カイゼン」という言葉が使われていますが、これも作業時間の短縮や効率性の向上など形のないものを良くしていくという意味で使われています。
「改善」の使い方の例
- 自分の生活習慣を改善する。
- 物の配置を変えることでこの空間の快適性を改善する。
「改良」をもっと詳しく
「改良」は「改善」の類義語の1つです。しかし、「改良」は具体的なものに対し、物事の一部分をよりよい方向に向かわせていく際に使用します。
たとえば、「装置」「機械」「道具」といったような、目に見え、触れることができる対象に使用します。ビジネスの場では製品の質を上げる際などによく使われます。
また、「改良」は目的に対しての手段となる場合にも使用されます。たとえば、「テストの点数を上げるために、勉強方法を改良する。」といった文があります。
この場合、「改良」が「勉強方法」という抽象的なものに対して使用されていますが、「テストの点数を上げる」という目的に対しての手段として使用されているため、「改良」を使用しています。
「改良」の使い方の例
- 道具を改良して作業効率を上げる。
- 装置を改良して電気代を安くする。
「改善」と「改良」が混ざった例文
ここで、「改善」と「改良」の2つが同時に使用されている文の例を紹介します。使い分けの参考にしてみてください。
- 機械の部品を改良することで売り上げを改善する。
- 作業効率の改善のためにチームのあり方を改良する。
①の例では、「機械の部品」は具体的な物体であるため「改良」が使われています。また、「売り上げ」は形のない概念であるため「改善」が使われています。
②の例では、「作業効率」は目的であるため「改善」が使われています。そして、「チームのあり方」は抽象的なものですが、作業効率に対する手段であるため、「改良」が使われています。
「改善」と「改良」の間違った認識
「改善」は悪い状態を適切な状態に直すものであり、「改良」は適切な状態から良い状態にするものである、という意見があります。しかし、これは間違った認識です。
辞書でこの2つの言葉の定義を調べると、次のようになっています。
「改善」・・・悪いところを改めてよくすること。
「改良」・・・不備な点や悪い点を改めて、よくすること。
[出典:デジタル大辞泉|大辞泉|小学館]
したがって、悪い状態を正常にするのか、正常な状態からさらに良い状態にするのかといった違いで両者を使い分けることは出来ません。
この2つの語句は、悪い部分や欠落している部分を良い方向へ正そうとする問題意識があって使用されるのです。。
英語による違い
「改善」と「改良」には共通の訳として “improvement”・“refinement”・“reform”が与えられています。
特に、“refine” は、欠陥を直すというよりは、今あるものをさらに良くしようとする意味合いでも使われます。
まとめ
以上、この記事では「改善」と「改良」の違いについて解説しました。
- 「改善」:状況などの抽象的なものを良くすること
- 「改良」:物体などの具体的な対象の性質を良くすること
このように、「改善」と「改良」で使用できる対象が違います。実際にこの2つの語句を使用するとき、間違えずに使っていきましょう。