会席料理と懐石料理には、シーンなど5つの違いがあります。
同音異義語でややこしいと感じたことがある人もいるでしょう。
そこで今回は、会席料理と懐石料理の違いについて解説します。
☆「会席料理」「懐石料理」の違いをざっくり言うと……
会席料理 | 懐石料理 | |
---|---|---|
シーン | 宴会 | 茶会 |
歴史 | 江戸時代、酒宴のもてなし料理として | 戦国時代、千利休によって |
ルール | 季節感を大切にする 1つの献立で同じ食材を使わない メニュー数や盛付品数は奇数 | 旬の食材を使う 素材の持ち味を活かす 心配りを持っておもてなしをする |
内容 | ご飯は最後に出される | ご飯は最初に出される |
椀 | シンプル | 具だくさん |
このページの目次
【結論】「会席料理」と「懐石料理」の5つの違い
会席料理と懐石料理には以下のような5つの違いがあります。
会席料理 | 懐石料理 | |
---|---|---|
シーン | 宴会 | 茶会 |
歴史 | 江戸時代、酒宴のもてなし料理として | 戦国時代、千利休によって |
ルール | 季節感を大切にする 1つの献立で同じ食材を使わない メニュー数や盛付品数は奇数 | 旬の食材を使う 素材の持ち味を活かす 心配りを持っておもてなしをする |
内容 | ご飯は最後に出される | ご飯は最初に出される |
椀 | シンプル | 具だくさん |
これから、それぞれの違いについて詳しく見ていきましょう。
【1】シーンの違い
会席料理は宴会の料理のことです。
懐石料理は茶会の料理を指します。
会席料理のシーン
会席料理は宴会で振舞われる料理を指します。
本膳料理と懐石が変化・発達したもので、現在では日本料理の主流となっています。
コースの場合は品数が多く、豪華であるのが特徴です。
懐石料理のシーン
懐石料理は、茶の湯でお茶の前にすすめられるちょっとした食事です。
一時の空腹が満たせる程度の軽めの食事で、旬の食材のみを使った一汁三菜が基本スタイルです。
【2】歴史の違い
会席料理と懐石料理のルーツは、室町時代の本膳料理です。
会席料理は、江戸時代に酒宴のもてなし料理として生まれました。
懐石料理は、千利休が確立した茶の湯の文化の中で体系化されました。
本膳料理とは
本膳料理とは、食事の礼儀作法のルールが厳格化することにともなって生まれた料理のことです。
日本を代表する格式の高い料理として、お客様をもてなすために振舞われます。
この本膳料理をもっと身近にして生まれたのが、会席料理と懐石料理です。
会席料理の歴史
千利休が懐石料理料理を考案した後に生まれたのが、会席料理です。
戦国時代が終わって平和な江戸時代になると、会食の機会が増えました。
そこで堅苦しい作法抜きに酒と料理を楽しめる料理として、会席料理が広がりました。
懐石料理の歴史
茶道を確立した千利休が考案したのが、懐石料理です。
お茶が主役の茶道において食事はあくまでも脇役です。
そのため、料理は一汁三菜の質素なものにする、味付けは最小限におさえる、お茶を味わう味覚をそこなわないように旬の食材を使うなど、さまざまな工夫がなされています。
【3】ルールの違い
会席料理のルールは、「季節感を大切にする」「1つの献立で同じ食材を使わない」「メニュー数や盛り付ける品数は奇数」です。
懐石料理のルールは、「旬の食材を使う」「素材の持ち味を活かす」「心配りを持っておもてなしをする」です。
会席料理のルール
会席料理のルールは以下の通りです。
- 季節感を大切にする
- 1つの献立で同じ食材を使わない
- メニュー数や盛り付ける品数は奇数
海山里の幸を取り入れつつも、1つの献立の中で同じ食材を使わないという気が配りがなされています。
また奇数にこだわる一方で、「3切れ」は「身を切る」として避ける傾向があります。
懐石料理のルール
- 旬の食材を使う
- 素材の持ち味を活かす
- 心配りを持っておもてなしをする
懐石料理は、上記のルールにしたがって、茶道の心であるわび・さびを料理として表現しています。
食べる側のルールには、「器に食べ残しや汚れを残さないよういただく」というものがあります。
【4】内容の違い
会席料理では、ご飯は最後に出されます。
懐石料理では、ご飯は最初に出されます。
会席料理の内容
会席料理では、下記のような料理が順番にふるまわれます。
- 吸物・刺身・なます・煮物、焼物・焼魚
- お通し・揚げ物・酢の物・蒸し物・和え物などの肴(さかな)
- ご飯・みそ汁・香の物・水菓子
会席料理は酒宴のための食事であるため、懐石料理にはない揚げ物が献立に含まれます。
またお酒を愉しむための会席料理では、最初にご飯で満腹になるとお酒やご馳走が楽しめなくなるため、ご飯を最後に出します。
懐石料理の内容
懐石料理の主役はお茶であるため、お茶の味をそこなう油が多い料理や香辛料を多く使用したものは出されません。
また懐石料理では、「まずはご飯で空腹をしのいでください」という思いから、ご飯を最初に出します。
流派によって違いがあるものの、料理が出される順番は以下の通りです。
折敷膳(おしきぜん) | 脚のないお膳で向付(主に刺身)・ご飯・みそ汁 |
---|---|
煮物(にもの) | 季節食材を使ったもの |
焼物(やきもの) | 焼き魚 |
強肴(しいざかな) | 炊き合わせ・酢の物・和え物など |
箸洗(はしあらい) | 吸い物または白湯 |
八寸(はっすん) | 海鮮2種の肴 |
湯桶(ゆとう) | そば湯またはおこげなどに湯を注いだ塩味のお湯 |
香の物(こうのもの) | 漬物 |
菓子・抹茶 | 生菓子や干菓子。季節による |
【5】椀の違い
会席料理の椀はシンプルです。
懐石料理の椀は具だくさんです。
会席料理の椀
会席料理の椀は、具がひかえめで出汁(だし)の味を楽しむのが特徴です。
お酒を飲むときにお腹に負担をかけないようにするという目的があります。
小さめの吸物椀が使われます。
懐石料理の椀
懐石料理の椀は、具を味わう椀です。
お茶を飲む前に空腹を整えるために、具だくさんであるのが特徴です。
器の内側が広く、大きめの椀が使われます。
補足:現在の懐石料理
現在の懐石料理は、お茶の席で振る舞われる食事という役目は薄くなっています。
現代では、茶会で出される食事を「茶懐石」と呼んで懐石料理と区別しています。
会席料理と懐石料理の違いのまとめ
以上、この記事では、会席料理と懐石料理の5つの違いについて解説しました。
会席料理 | 懐石料理 | |
---|---|---|
シーン | 宴会 | 茶会 |
歴史 | 江戸時代、酒宴のもてなし料理として | 戦国時代、千利休によって |
ルール | 季節感を大切にする 1つの献立で同じ食材を使わない メニュー数や盛付品数は奇数 | 旬の食材を使う 素材の持ち味を活かす 心配りを持っておもてなしをする |
内容 | ご飯は最後に出される | ご飯は最初に出される |
椀 | シンプル | 具だくさん |
懐石料理について、盛りだくさんな料理をイメージする人もいたかもしれませんが、実は懐石料理は一汁三菜を基本としたシンプルなものでした。
会席料理と区別できるように、違いをよく理解しましょう。