日本語の中には、同じ読み方をする言葉がたくさんありますよね。
「帰る」と「返る」と「還る」はどれも「かえる」と読みます。
さらに意味も似ているため、使い分けに悩む人も多いのではないでしょうか。
今回はこれら3つの違いを解説していきます。
結論:どこにかえる?どうやってかえる?
「返る」は元の状態に戻ることです。
「還る」は様々な過程を経て、元の状態に戻ることです。
「帰る」についてもっと詳しく!
これは一番単純でよく使う「かえる」の漢字ですね。
意味は、人が自分の家やふるさとなどの元いた場所、自分の居場所に戻ることです。
「自宅に帰る」とは言いますが、「会社へ帰る」とはあまり言いませんね。会社には「戻る」と言うのが一般的です。
つまり、ただ「もと居た場所に戻る」ではなく、「自分の所属意識が強い場所に戻る」という要素が必要になるわけです。
もっと簡単に説明すると、自分の愛着のある場所に戻るときに使うということです。
「会社が自分の居場所だ!」と強く感じている人は「会社に帰る」という言い方をしてもいかもしれませんね。
「帰る」の使い方の例
- 家へ帰る
- 故郷に帰る
「返る」についてもっと詳しく!
簡潔に説明すると、ものがもとに戻るということです。単純で分かりやすいですよね。
大きく分けて3つの使い方に分けられるので、例文と一緒に見ていきましょう。
一つ目は物がもとの所有主のもとへ戻るときの使い方です。
使い方の例
- 貸したものが返る
- 落し物が返る
2つ目は一度変わってしまったものが、元の状態へと戻ることです。
使い方の例
- 我に返る
- 童心に返る
3つ目は向きや位置が反対になるという意味です。
使い方の例
- 手のひらを反す
- 軍配が返る
「還る」についてもっと詳しく!
最後の「還る」という漢字は日常生活ではあまり使わないので、使い方がわからない人も多いと思います。
「還る」は、慣用句のように決まった使い方をされるので、使い方が限定的です。種類もそれほど多くありません。
「還る」の使い方の例
- 走者がホームへ還る
- 土に還る
- 祖国に還る
- 自然に還る
「帰る」と同じで、もともといた場所に戻るという意味ですが、「原点に立ち帰る」「根源的な状態に戻る」などの、より抽象的な意味合いが強いのです。
上に挙げた「土に還る」という使い方も、もともと土に住んでいる生き物が、実際に土の中に帰っていくわけではありませんよね。
有名な「自然に還れ」という言葉もほんとに自然の中に向かえという意味ではありません。
この言葉は、「人間社会から抜け出して、自然状態・無垢な状態に戻りなさい」という意味なのです。
また、この「還る」の中には「かえる」動作の途中に一定のサイクルがあることが多いです。
ホームへ還るにはベースを踏んでグルっとグラウンドを回ります。祖国に還る時はいろいろな土地を経由します。ゴミや死骸は様々な過程を経て土に分解されて戻っていきます。
もともとあった状態に、グルっと回る円状の動きを経てから戻っているイメージが掴めましたか?
間違えやすい使い方!
「初心に帰る」「原点に返る」という言葉はは、初心や原点という土地が実際にあるわけではないので「返る」の方が適切なようにも見えますよね。変わってしまった後の状態から、元の状態に戻るという意味で使われているからです。
しかし「原点回帰」という言葉もあるように「初めの出発点に戻る」という意味で「帰る」を使う場合もあるのです。
どちらでも間違っているわけではありません。さらに、ひらがなで表記する場合もあるので注意しましょう。
とんぼ返りは「とんぼ帰り」と言う人もいます。とんぼが元居た場所に飛んで戻っていく」という印象が強いからでしょう。
しかし、この言葉はもともととんぼが急に体の向きを翻すという意味の言葉なので、向きを反対にするという意味の「とんぼ返り」の方が適切です。
このように、意味の語源を知らないと判断できないような使い方もあるので気を付けていきたいですね!
まとめ
以上、この記事では「帰る」と「返る」と「還る」の違いについて解説しました。
日常生活でよく使う「かえる」という言葉にも微妙なニュアンスの違いによる使い分けがあることがわかりましたね。
- 帰る:自分の愛着のある場所へ戻ること
- 返る:もともとの状態に戻っていくこと
- 還る:様々な過程を経てもとの状態に戻ること
しっかりと使い分けていきましょう!