事故が起きた時、報道や新聞で耳にする「重傷」「重体」「軽傷」ですが、誰がどのような基準で判断しているのかを知っていますか。
この記事では、これらの基準や違いについて解説します。
結論:重体は命に関わる
「重傷」は、全治30日以上の怪我を指します。
「重体」は、重傷の中でも生死に関わる状態のことです。
「軽傷」は、全治30日未満の怪我のことを言います。
「重傷」をもっと詳しく
重傷とは、命に別状はないが全治30日以上の重い怪我のことを指します。
例えば交通事故による脊椎損傷や、重機に巻き込まれて脚を切断した場合などです。
つまり、命に別状はないと言っても遺症が残る可能性のある大きな怪我を含んでいるということです。
「重傷」は「軽傷」の対義語で、主に報道などで「事故で重傷を負う」と言うように使用します。
ただし、報道では単純な骨折などの場合にも重傷を使う場合もあるので、知り合いなどが事故にあった際は報道を鵜呑みにせずに、直接病院などに確認するのが確実です。
また、同じ読み方をする言葉で「重症」がありますが、「重傷」とは意味が異なります。重症の詳しい説明は以下の通りです。
重症とは
「重症」とは「軽症」の対義語で、主に3週間以上の入院を必要とする内科的疾患の程度のことを指します。例えば脳梗塞・肺結核などの、放置した場合は命に支障をきたすような病気です。
重傷が警察庁の管轄であるのに対して重症は消防庁の管轄のため、主に医療関係者が使用します。
重症より症状が重く、命を失う可能性がある状態を「重篤(じゅうとく)」、さらに死の瀬戸際をさまよう状態のことを「危篤(きとく)」と言います。もちろん、そのような状態から回復する人もいます。
「重体」をもっと詳しく
重体とは、怪我や病気にかかわらず重傷の中でも生死に関わる状態のことを指します。主に報道機関や医療機関で使用する用語です。
事故が起きた際、報道番組で「意識不明の重体」という表現を聞いたことがあるのではないでしょうか。
そのほとんどの場合は脳や内臓に大きな損傷があり、完治する可能性があるのかは不明です。そのため、重傷など場合のように「全治〜ヶ月の重体」とは言いません。
また医療機関では、入院している患者や搬送されてきた患者などの状態を簡潔に伝える目的で使用します。
重体となってしまった場合、個人差があるため回復率は一概には言えません。
しかし、意識不明になった際に「応急手当が行われたかどうか」で生存率は大きく変わることがわかっています。
平成27年の消防庁データによると、救急隊員到着前に応急手当を行なった場合の生存率は10.9%で、応急手当が行われなかった場合の6.7%と比較して約1.6倍となっています。
また、社会復帰まで至ったケースも4.9%で、応急手当が行われなかった場合の約2.5倍にもなっています。
したがって、応急措置は命を救うことに繋がっていることがわかります。
突然、意識を失っている人に対して蘇生を行うのには勇気が必要です。日頃から応急処置の講習を受けるなどの心構えをしておくと、落ち着いて対処できるかもしれません。
「軽傷」をもっと詳しく
軽傷は、入院を必要としない全治30日未満の怪我のことです。打撲や捻挫、単純な骨折などの身体を動かすのに困らない程度の軽微な場合です。
軽傷は重傷と同じく警察庁が定めています。
そして軽傷より重く、重傷より軽い「中傷」という言葉があります。
警察発表にはありませんが、消防設備士が交通事故における人身傷害や広域災害などで使います。
一方で消防庁が定める「軽症」は、うつ病や高血圧などの軽い内科的疾患を指します。
軽症患者による社会問題
平成27年度の消防庁の発表によると、救急車の出動回数は過去最大で、搬送患者の約50%を搬送を必要としない軽症者が占めていました。
そのことによって、救急車が要請を受けてから現場に到着するまでの時間が長くなり、重症者の搬送が遅れる事態を招いているのです。
したがって、救急車を呼ぶ前に「本当にその必要があるのか」を考える必要があるということです。
まとめ
以上、この記事では、「重傷」「重体」「軽傷」の違いについて解説しました。
- 重傷:全治30日以上の大きな怪我
- 重体:重症の中でも生死に関わる状態のこと
- 軽傷:全治30日未満の軽い怪我
このように、これらには様々な違いがあります。「軽傷」「重傷」「重体」の順に状態が重くなるということです。事故に遭遇してしまった時などで慌てずに対処できるよう、知識を身につけておくことが大切です。