従事とは「何かの業務に取り組むこと」という意味です。
「なんとなく使ってしまっているけれど、実際の意味はよくわからない」「正しい使い方がわからない」という人が多いのではないでしょうか。
この記事では、従事の意味や使い方の注意点などについて、詳しく解説します。
☆「従事」をざっくり言うと……
読み方 | 従事(じゅうじ) |
---|---|
意味 | 何かの業務に取り組むこと |
成り立ち | 従(物事に取り組む)と事(仕事) |
類義語 | 「業務にあたる」「携わる」など |
対義語 | 放棄、怠慢 |
英語訳 | engage in〜(〜に従事する)、work(働く) |
このページの目次
「従事」の意味
何かの業務に取り組むこと
従事は、仕事において、何かの業務に取り組むことを表します。
また、「他のことには取り組まずに、その仕事だけに専念する」というニュアンスがあります。
このため、従事という言葉は、「仕事や研究で、成果を出すために誠実に取り組む様子」を指すことができます。
「従事」の使い方・例文
従事は、おもに以下のようなかたちで使います。
- 〇〇に従事する
(〇〇の仕事に取り組む) - 〇〇従事者
(〇〇の仕事に取り組む人)
〇〇には、仕事の業務内容が入ります。
具体的な例文を見てみましょう。
- 私は長いあいだ、農業に従事してきた。
- この仕事に就く前は、教育関係の仕事に従事していた。
- 息子は、教育に従事しています。
- 医療従事者の皆さんには、感謝の気持ちでいっぱいです。
- 航空従事者は、定期的に非常事態の訓練をしている。
「〇〇従事者」というかたちは、「医療従事者(医療に携わる人)」という表現で使われることが多いです。
証明書の名称に使われることも
従事は、公的な証明書の名称のなかで使われることもあります。
具体的な例を見てみましょう。
- 実務従事証明書
(じつむじゅうじしょうめいしょ)
薬剤師として2年以上働いたことを証明する書類 - 販売従事登録
(はんばいじゅうじとうろく)
一般医薬品販売を2年以上行なったことを証明する書類
「従事」を使うときの注意点
従事を使うときには、以下の点に気をつけましょう。
- 趣味に対しては使えない
- 会社に対しては使えない
- 仕事の役割に対しては使えない
- さらに補足説明を加えると丁寧
以下、それぞれの注意点について詳しく解説します。
注意点①趣味に対しては使えない
まず、従事は業務内容に対して使います。
このため、趣味や家事に対しては使えません。
× 私は、家の断捨離に従事しています。
× 昔は散歩に従事していた。
注意点②会社に対しては使えない
「組織に従事する」という表現は誤用です。
× 私は株式会社△△に従事しています。
(※)ただし、「株式会社△△で、〜という業務に従事しています」という表現であれば問題ありません。
注意点③仕事の役職に対しては使えない
従事は、仕事の役職に対しては使えません。
あくまでも仕事の「内容」に対して使うのです。
× 私は課長に従事しています。
(※)ただし、「株式会社△△で、課長として〜という業務に従事しています」という表現であれば、問題ありません。
注意点④さらに補足説明を加えると丁寧
「〇〇に従事しています」などと言ったあとには、〇〇に入る業務内容を、さらに具体的に説明すると、相手に伝わりやすくなります。
「〇〇に従事する」という表現は、抽象的になってしまいがちだからです。
たとえば次のような場合があります。
また、具体的に、どのような医療に携わっているのかも判断できませんね。
このため、「私は医療に従事しています。小児科医として、町の子どもたちを診療しています。」などと補足すると、業務内容がより明確に伝わります。
会話のなかで、相手が「〇〇に従事しています」などと言ったときには、さらに踏み込んで、具体的な内容を聞いてあげることも大切です。
「〇〇に従事する」の敬語表現
「〇〇に従事する」は、敬語にして使う場合が多いです。
謙譲表現・尊敬表現にする場合について、主な言い回しを知っておきましょう。
「〇〇に従事する」の謙譲表現
「〇〇に従事する」を、へりくだって使う場合は、以下のように変えましょう。
- 〜に従事しております
- 〜に従事いたしております
- 〜に従事させていただきます
- 〜に従事させていただきました
- 〜に従事しておりました
「〇〇に従事する」の尊敬表現
「〇〇に従事する」は自分に対して使うことが多いものの、まれに相手に対して使うことがあります。
目上の人に対して「〇〇に従事する」を使う場合、以下のような尊敬語の表現を使いましょう。
- 〜に従事なさっています
- 〜に従事されています
- 〜従事していらっしゃいます
「従事」を就職活動で使う場合
「〇〇に従事する」という表現は、就職活動や転職活動でよく用いられます。
具体的には、自分の経歴をアピールをする際や、志望動機を伝える際に、面接や履歴書のなかで使うのです。
例文を見てみましょう。
- 前職では、アパレル業務に従事しておりました。
- 私は、運送業に従事したいと思い、貴社の新卒採用にエントリーいたしました。
「従事」の成り立ち
従事は、「従」と「事」の2文字から成り立っています。
「従」と「事」には、以下のような意味があります。
- 従:物事に取り組む
- 事:仕事
2つの漢字が合わさって、「仕事に取り組む」という意味になっています。
以下、「従」と「事」の意味を詳しく解説します。
「従」の意味
- 後について行く
例:追従(ついじゅう)、従軍(じゅうぐん)など - したがう
例:主従(しゅじゅう)など - 相手の言いなりになる
例:従順(じゅうじゅん)、従属(じゅうぞく)など - 物事に取り組む
例:従事、従業(じゅうぎょう)など - 親等(しんとう)が遠いこと
例:従弟(いとこ)、従祖父(おおおじ)など - 起点(きてん)
例:従来(じゅうらい)など
上記のうち、④の「物事に取り組む」という意味が、従事の「従」に含まれています。
「事」の意味
- 物事
例:事件・事情・火事・記事など - 仕事
例:事業・事務など - つかえる
例:師事など
上記のうち、②の「仕事」という意味が、従事の「事」に含まれています。
「従事」の類義語
従事には以下のような類義語があります。
- 業務にあたる
業務を引き受ける - 携わる(たずさわる)
物事に関わる - つかさどる
職務に取り組む - 遂行(すいこう)する
仕事をやり遂げること - 服務(ふくむ)する
仕事に携わること - 就業(しゅうぎょう)する
仕事に就く - 勤務(きんむ)する
働く - 勤める(つとめる)
会社などで働く - 労働(ろうどう)する
働く - 出仕(しゅっし)する
働きに出る - 在勤(ざいきん)する
ある仕事に就いている - 在職(ざいしょく)する
ある職業に就いている - 在任(ざいにん)する
ある役職に就いている - 就職(しゅうしょく)する
仕事に就く - 事(こと)に当たる
担当する - 関与(かんよ)する
物事に関わる - 事業(じぎょう)をする
仕事を営む - 仕える(つかえる)
目上の人のために働く。
または、公的機関に務める - 侍する(じする)
目上の人のそばで働く - 奉仕(ほうし)する
国家や社会、主人のために働く - 献身(けんしん)
わが身を犠牲にして、懸命に働く - 尽くす(つくす)
他の人のために懸命に働く - 身を奉じる(ほうじる)
相手のために働く - 身を捧げる(ささげる)
自分のすべてを相手に捧げる - 身を尽くす(つくす)
自分のすべてを何かに捧げる
「従事」と「携わる」の違い
「従事」と「携わる」は、どちらも「仕事に取り組む」という意味をもつ点が共通しています。
ただし、「携わる」には、「手と手を取り合う」という別の意味もあります。
「従事」と「つかさどる」の違い
「従事」と「つかさどる」には、以下のような違いがあります。
- 従事
業務の内容に取り組むことを表す - つかさどる
業務の役目を担うことを表す
「つかさどる」は、業務の内容ではなく、役目に対して使うのです。
「従事」と「遂行」の違い
従事と遂行には、以下のような違いがあります。
- 従事
仕事に取り組むこと - 遂行
仕事をやりとげること
従事は、単に仕事に取り組むことを表します。
一方で遂行には、「仕事を完了させる」という意味合いがあります。
「従事」と「服務」の違い
従事と服務には、どちらも仕事に取り組むことを表します。
厳密には、以下のような違いがあります。
- 従事
業務内容に対して使う - 服務
公的な機関で役割を担うときに使う
「従事」の対義語
従事には以下のような対義語があります。
- 放棄(ほうき)
責任や権利、モノを捨てること - 怠慢(たいまん)
仕事や義務をさぼること
「従事」の英語訳
従事を英語に訳すと、次のような表現になります。
- engage in〜
(〜に従事する) - work
(働く)
それぞれの英語訳を用いた例文を見てみましょう。
- I will engage myself in study.
(私は研究に従事する予定だ。) - She works in education.
(彼女は教育業に従事している。)
「従事」のまとめ
以上、この記事では「従事」について解説しました。
読み方 | 従事(じゅうじ) |
---|---|
意味 | 何かの業務に取り組むこと |
成り立ち | 従(物事に取り組む)と事(仕事) |
類義語 | 「業務にあたる」「携わる」など |
対義語 | 放棄、怠慢 |
英語訳 | engage in〜(〜に従事する)、work(働く) |
就職活動などを成功させるためにも、従事を正しく使いこなせるようになりましょう。