一族郎党とは「血のつながりがある家族」「血のつながりがない家臣や関係者」「組織や団体」という意味です。
3つも意味があって、驚いた人も多いのではないでしょうか。
文章中に一族郎党が出てきた時に、正しい意味で読みたいですよね。
この記事では、一族郎党の意味や使い方を詳しく解説します。
☆「一族郎党」をざっくり言うと……
読み方 | 一族郎党(いちぞくろうとう) |
---|---|
意味 | 血のつながりがある家族 血のつながりがない家臣や関係者 組織や団体 |
類義語 | 一家眷属 眷属 妻子眷属 など |
対義語 | 赤の他人 全く知らない人 |
英語訳 | all one’s family and retainers(身内や家来の皆) one’s family and followers(自分の家族や部下) one’s whole clan(一族全体) |
「一族郎党」の意味
- 血のつながりがある家族
- 血のつながりがない家臣や関係者
- 組織や団体
一族郎党は、以下の2語から成り立っています。
- 一族
血のつながりがある人々 - 郎党
①主君に従う人
②主君と血のつながりがない家臣
一族郎党は、「いちぞくろうどう」と読むこともあります。
一族郎党の3つの意味を、それぞれ詳しく解説します。
意味①血のつながりがある家族
一族郎党の1つ目の意味は、血のつながりがある家族や親戚です。
血のつながりの濃さには関係がなく、同じ祖先をもつ人々の総称です。
意味②血のつながりがない家臣や関係者
一族郎党の2つ目の意味は、血のつながりがない家臣や関係者です。
血のつながりがなくても、家族のように利益を分け与える人々を指します。
意味③組織や団体
一族郎党の3つ目の意味は、組織や団体の総称です。
血のつながりがあるかどうかは関係なく、宗教団体や、その中の宗派を指します。
「一族郎党」の表記
一族郎党は、一族郎 “等” と表記することもあります。
この表記でも、「いちぞくろうとう」と「いちぞくろうどう」のどちらで読んでも問題はありません。
「一族郎党」の使い方
一族郎党は、以下のような言い回しでよく使います。
- 一族郎党を引き連れる
家族や関係者を一緒に連れて行く - 一族郎党を率(ひき)いる
家族や関係者を一緒に連れて行く - 一族郎党力を合わせる
家族や関係者が同じ目的のために協力する - 一族郎党から追われる
家族や関係者から捕まえようとされる - 一族郎党を手中に収める
家族や関係者を全て自分のものにする - 一族郎党皆殺し
家族や関係者をひとり残らず殺す
3つの意味ごとに、例文を見ていきましょう。
使い方①「血のつながりがある家族」の意味
一族郎党は「血のつながりがある家族」という意味で使う場合は、以下のような例文があります。
- 正月には一族郎党が祖父の家に集まり宴会をする。
- 彼は一族郎党を率いて戦に挑んだ。
- 彼は裏切り者として、一族郎党から追われる身となった。
- 遠い昔、西を追われたらしい高麗(こま)の豪族の一族郎党大人数が、舟で逃げてきて、ここに上陸した。
[出典:坂口安吾『曾我の暴れん坊』]
使い方②「血のつながりがない家臣や関係者」の意味
一族郎党は「血のつながりがない家臣や関係者」という意味で使う場合は、以下のような例文があります。
- 一族郎党で力を合わせて戦いに勝利した。
- 一族郎党を手中に収めれば、天下統一も夢ではないだろう。
- 謀反(むほん)が起きないように、一族郎党皆殺しが行われた。
- 屋敷の周りは一族郎党でかためられ、逃げ場がない。
使い方③「組織や団体」の意味
一族郎党は「組織や団体」という意味で使う場合は、以下のような例文があります。
- 彼は一族郎党を引き連れて訴訟(そしょう)を起こした。
- 団体の存続ができないと、一族郎党の生活が危うい。
- 歌舞伎役者は一族郎党で、各地を転々としている。
「一族郎党」の類義語
一族郎党には以下のような類義語があります。
- 一家眷属/一家眷族(いっかけんぞく)
①血のつながりがある家族
②血のつながりがない家臣や関係者
③組織や団体 - 眷属/眷族(けんぞく)
①血のつながりがある家族
②家臣 - 妻子眷属/妻子眷族(さいしけんぞく)
①血のつながりがある家族
②家臣 - 親戚眷属/親戚眷族(しんせきけんぞく)
①血のつながりがある家族
②家臣 - 親類縁者(しんるいえんじゃ)
①血のつながりがある家族
②婚姻などにより関係のある親戚 - 一門(いちもん)
①家族や同じ家系の人々
②仏教で、同じ宗派の人々
③学問・武道・芸能などで、同じ人物を師匠とする人々
④大相撲で、力士がつくる集団 - 一味徒党(いちみととう)
同じ目的をもつ仲間
※主に悪いことが目的
「一族郎党」と「眷属」の違い
一族郎党と眷属は、ほとんど同じ意味です。
しかし、一族郎党よりも眷属のほうが、規模が大きい言葉が前につきやすいです。
そのため、一族郎党よりも眷属のほうが、より強い力をもつイメージがあります。
- 山田家の一族郎党は戦で敗れた。
「大きな権力を持たない人とつながりがある人々」を表す - この神社では狛犬(こまいぬ)を神の御眷属様として祀(まつ)っている。
「大きな権力を持つ人とつながりがある人々」を表す
眷属は敬う対象であるため、「御眷属様」と敬称で使われることも多いです。
「一族郎党」と「一門」の違い
一族郎党と一門は以下のような違いがあります。
一族郎党 | 一門 | |
---|---|---|
意味 | ①血のつながりがある家族 ②血のつながりがない家臣や関係者 ③組織や団体 | ①家族や同じ家系の人々 ②仏教で、同じ宗派の人々 ③学問・武道・芸能などで、同じ人物を師匠とする人々 ④大相撲で、力士がつくる集団 |
一族郎党と一門は、表す分野の範囲が異なります。
一族郎党は、家族や家臣など家について表します。
一方、一門は、学問・武道・芸能や大相撲など、文化的なことを表します。
以下の語は、一族郎党の類義語に間違えられやすいですが、正確には類義語ではありません。
- 家族/親族
家臣や部下が含まれないため - 一族族誅(いちぞくぞくちゅう)
「一族族誅」という言葉はない
※「族誅」は古代中国の刑罰で、罪人を一族ごと処刑すること。
「一族郎党」の対義語
一族郎党には以下のような対義語があります。
- 赤の他人
全く知らない人 - 一個人(いちこじん/いっこじん)
①ひとりの人間
②公の立場を離れたひとりの人間
「一族郎党」の英語訳
一族郎党を英語に訳すと、次のような表現になります。
- all one’s family and retainers
(身内や家来の皆) - one’s family and followers
(自分の家族や部下) - one’s whole clan
(一族全体)
“all one’s family and retainers” の “retainer” は、「家来」という意味です。
“one’s family and followers” の “followers” は、「部下」という意味の “follower” の複数系です。
“one’s whole clan” の “clan” は、「一族」という意味です。
「一族郎党」のまとめ
以上、この記事では一族郎党について解説しました。
読み方 | 一族郎党(いちぞくろうとう) |
---|---|
意味 | 血のつながりがある家族 血のつながりがない家臣や関係者 組織や団体 |
類義語 | 一家眷属 眷属 妻子眷属 など |
対義語 | 赤の他人 全く知らない人 |
英語訳 | all one’s family and retainers(身内や家来の皆) one’s family and followers(自分の家族や部下) one’s whole clan(一族全体) |
一族郎党は、血のつながりがあってもなくても、家族のような存在の人々を表す言葉です。
人はひとりでは生きていけませんので、周りの人を大切にしたいですね。