今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「一宿一飯(いっしゅくいっぱん)」です。
言葉の意味、使い方、由来、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「一宿一飯」をざっくり言うと……
読み方 | 一宿一飯(いっしゅくいっぱん) |
---|---|
意味 | 他人の世話になること。ちょっとした恩義でも忘れてはならないということ |
由来 | 「博徒」の間で使われていた言葉 |
類義語 | 一飯之報、一飯之恩、一飯千金 |
対義語 | 得魚忘筌、忘恩負義、鳥尽弓蔵など |
英語訳 | a night’s lodging and a meal(一宿一飯) |
このページの目次
「一宿一飯」の意味をスッキリ理解!
「一宿一飯」の意味を詳しく
「一宿一飯」とは、他人の世話になること、ちょっとした恩義でも忘れてはならないということを表す四字熟語です。
「一宿」は、「旅先などで一晩泊めてもらうこと」をさします。「一飯」は「食事を一回ご馳走(ごちそう)になること」を表します。
これらは、長い旅の中の「他人からのちょっとした恩義」です。しかし、このような「ささいな恵み・助けも決して忘れてはならない」という教訓が込められています。
ここで気つけなければいけないのは、「家に泊めてもらったり、ご飯をごちそうになること」自体が「非常にありがたいことではない」とされていることです。
これらのことは、あくまで「ささいな恵み」「ちょっとしたこと」とされています。しかし、そのような「ちょっとした恩」を忘れてはいけないというのが「一宿一飯」の意味です。
「一宿一飯」の使い方
- 旅先で一宿一飯の恩義にあずかる。
- 一宿一飯を乞うと、その男性は快く、私を家の中へ入れてくれた。
- 一宿一飯の恩があるので、失礼な態度はとれない。
「一宿一飯の恩義」という形で使われることが多いです。
「一宿一飯」の由来
「一宿一飯」は、もともとは博徒(ばくと)たちの間で使われていた言葉です。
「博徒」とは、「ばくち打ち」のことです。金銭を賭けて勝負を争う「ばくち」をいつもやっている者、「ばくち」で生計を立てている者のことを指します。
「ばくち」はいわゆるギャンブルなので、彼らの生活は安定しません。「博徒」には、「無宿人」という「都市にいながらも、家を持たない者」が多かったと言います。
そのような彼らの立場だからこそ、「一日分の宿や、一食分の食事」が非常にありがたく、重要なものだったのです。
彼らは、ばくちをする会場である「賭場」を渡り歩きます。
その途中で、泊めてもらったり食事を振る舞われたりして世話になると、生涯の恩義とする風潮があったため、「一宿一飯」という言葉が生まれました。
「一宿一飯」の類義語
「一宿一飯」には以下のような類義語があります。
- 一飯之恩(いっぱんのおん):「一宿一飯」と同じ意味
- 一飯之報(いっぱんのむくい):「一宿一飯」と同じ意味
- 一飯千金(いっぱんせんきん):わずかな恵みに対しても、厚い恩返しをすることのたとえ。
- 飲水思源(いんすいしげん):他人から受けた恩を忘れてはいけないという意味
「一飯千金」は、「一回の食事にも、千金に値するほどの価値がある」という意味が由来になっています。
「飲水思源」の「思源」とは、「源に思いをはせること」という意味です。「水を飲むときに、その水源のことを考える」ようすから、「物事の基本を忘れない」「受けた恩を忘れない」という意味になりました。
「一宿一飯」の対義語
「一宿一飯」には以下のような対義語があります。
- 得魚忘筌(とくぎょぼうせん):目的を達成するとそれに役立ったものの功労を忘れてしまうということ。
- 忘恩負義(ぼうおんふぎ):恩義を忘れて義理に背くこと。
- 狡兎良狗(こうとりょうく):役に立つときはさんざん利用され、不要になると見捨てられること。
- 鳥尽弓蔵(ちょうじんきゅうぞう):目的が達せられた後には、それまで重用されていた者が捨てられるということ。
「得魚忘筌」は、「魚を取ると、取るために使った筌(うけ)などの道具のことを忘れてしまう」という意味です。ここから、「目的を達成してしまうと、それまでに役に立ったものの恩恵も忘れてしまう」という意味で使われる言葉になりました。
ちなみに、筌とは、「水中に沈めて魚を捕る竹かごのような道具」のことです。
「狡兎良狗」の「狡兎」はすばしっこいウサギという意味で、「良狗」は忠実で優秀な猟犬という意味です。
昔、ウサギ狩りには、猟犬が使われていました。しかし、どんなに優秀な猟犬でも、ウサギがいなくなってしまえば不要になり、食べられてしまいます。このことから、「不要になるとすぐに捨てられてしまう」という意味が生まれました。
「鳥尽弓蔵」の意味も「狡兎良狗」と似ています。「鳥を射つくしてしまうと不要になった弓がしまわれる」というようすからできた四字熟語です。
「一宿一飯」の英語訳
「一宿一飯」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- a night’s lodging and a meal
(一宿一飯) - the obligation incurred through accepting hospitality
(一宿一飯の恩義) - gratefulness for hospitality
(訪問先に対するお礼)
a night’s lodging and a meal は a meal and a night’s lodgingにしてもかまいません。
まとめ
以上、この記事では「一宿一飯」について解説しました。
読み方 | 一宿一飯(いっしゅくいっぱん) |
---|---|
意味 | 他人の世話になること。ちょっとした恩義でも忘れてはならないということ |
由来 | 「博徒」の間で使われていた言葉 |
類義語 | 一飯之報、一飯之恩、一飯千金 |
対義語 | 得魚忘筌、忘恩負義、鳥尽弓蔵など |
英語訳 | a night’s lodging and a meal(一宿一飯) |
「一宿一飯」はよく知られた四字熟語ですが、由来や成り立ちまでは知らない方も多かったのではないでしょうか。
類義語や対義語の四字熟語も合わせて覚えられると、知識の幅が広がります。
この機会に使いこなせるようになりましょう。