「傷害」と「障害」の違いとは?わかりやすく解説

違いのギモン

日本語には、同じ読み方でも違う意味の言葉があります。「傷害」と「障害」もその1つです。どちらも体が不完全であるイメ―ジがあると思います。

「傷害」と「障害」は、日常生活でも身近な言葉であり、今後使用することも多いでしょう。その時のために、両者の意味・違いをしっかりと押さえておきましょう。

今回は、「傷害」と「障害」の違いを解説します。

結論:「傷害」は傷つける、「障害」は不自由であること

「傷害」とは、相手を傷つけ、怪我をさせることです。

「障害」とは、身体や精神の機能が不完全なために、活動に制限があることです。

「傷害」をもっと詳しく


「傷害」とは、相手を傷つけ、身体を害することです。「傷害」の結果として相手に生じるのが、怪我です。この怪我の中には、すぐに治るような軽度のものも、一生治らない大けがも含まれます。

相手に怪我をさせたときに、重要となるのが「傷害保険」です。「傷害保険」とは、毎月一定金額を支払い、「傷害」が絡む偶発的な事故の際にお金を受け取る仕組みのことです。

メインの補償は、自分が負傷した場合の通院・入院・手術の保険金と、死亡保険金です。しかし、多くの「傷害保険」には、自分が誰かに怪我を負わせた場合も補償しています。

 

つまり、両方を補償する保険に入れば、自分が被害者の時も加害者の時もお金を受け取ることができます。

例えば、アメリカンフットボールで相手選手からタックルを受け、骨が折れた場合も、急に飛び出してきた自転車を車ではねてしまった場合もお金を受け取ることができます。しかし、保険によって補償範囲や支払限度額が決まっているので、注意が必要です。

 

刑法204条では、傷害罪が規定されています。条文は「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」というものです。

一方、刑法208条には暴行罪が規定されており、条文には「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」とあります。

 

「人を傷つける」という点では、「傷害」と「暴行」は似ているように思われますが、前者は懲役15年以下、後者は懲役2年以下、と刑罰に大きな開きがあります。その違いは、「暴行したときに、相手に怪我を負わせたかどうか」です。

例えば、鉄パイプで相手を殴っても相手が無傷であれば、傷害罪にはならず、暴行罪になります。一方、浮気をした夫に平手打ちをして、頬が腫れあがった時には傷害罪になります。

また、傷害罪には、相手の健康状態を悪い状態に変えることや人の身体の完全性を侵害することも含まれます。具体的には、次のような事例で傷害罪を成立したことがあります。

  • いやがらせ電話により精神的ストレスを与える
  • 性病を隠し、相手に感染させる
  • キスマークをつける

さらに、傷害の結果として被害者が死亡した場合には、刑法205条の傷害致死罪となり、さらに重い罪になります。

「傷害」の使い方の例

  • 傷害事件をおこした30代の男は、どこかに行方をくらました。
  • アメリカンフットボールでタックルを受けた私は、全治1カ月の傷害を負った。

「障害」をもっと詳しく


「障害」とは、何らかの原因により、身体・精神の機能が十分に働かず、社会的な活動につき不自由がある状態のことです。長期間、あるいは一生治らない病気やケガを指します。

また、「障害」を負い、日常生活に支障がある人のことを「障害者」といいます。

障害者基本法では、障害者を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と定義しています。

 

また、スポーツにおいて継続的に何度も同じ動作を繰り返すことにより、おこる障害のことを「スポーツ障害」といいます。これは、一度のきっかけで急速に進行するものではなく、長年少しずつ進行するものです。有名なものとしては、テニス肘や 野球肩、ランナー膝(ひざ)があります。

「スポーツ障害」は、練習をやればやるほど発症のリスクが高まります。対策としては、正しいフォームを覚える、適度な休息を挟む、頻繁に病院で診察を受けるなどがあります。

 

また、うまく言葉を発することができない障害のことを「言語障害」といいます。これは、発音器官が原因となる障害と脳の言語中枢が原因となる障害の2つに大別することができます。

一方、「記憶障害」というものもあります。「記憶障害」とは、自分が経験した記憶を一定期間保持する能力が著しく低下した状態のことです。代表的な例としては、認知症があります。また外傷により、自分の名前や出自を思い出せない状態も記憶障害にあたります。

「障害」の使い方の例

  • 健常者と障害者が共に働ける会社を目指す。
  • 運動会の障害物競争で1位をとる。

まとめ

以上、この記事では、「傷害」と「障害」の違いについて解説しました。

  • 傷害:怪我を負わせること
  • 障害:何らかの不自由があること

「障害」と「障害」は、少し紛らわしいところもありますが、まったく異なる意味を持っています。前者は法律で罰せられる行為であるのに対し、後者は社会的に守られ、配慮されるべき状態です。

読み方は同じですが、しっかりと使い分けていきましょう。