漢字には似たような単語でも意味が微妙に異なるものが多くあります。
「棲む」と「住む」も同じ読み方でどちらも生活することを意味しますが、どう使い分ければよいのでしょうか。この記事では、「棲む」と「住む」の違いについて解説します。
結論:主語が違う
「棲む」が使われるときには、動物が主語になりますが、「住む」の場合は、人が主語になります。
「棲む」をもっと詳しく
「棲む」は、生き物(鳥・獣(けもの)・虫)が巣を作って、生活していることを表します。
「棲む」の使い方
「棲む」の意味を説明したので、次は例文をご紹介します。
- この森にはクマが棲んでいるので、気を付けた方がいい。
- 水辺には色々な種類の鳥や魚が棲んでいる。
どちらも「クマ」や「魚」といった動物が主語であるため、「棲む」を使います。
「棲む」を使ったことわざ
「棲む」を使ったことわざもご紹介します。
- 大魚は小池に棲まず(たいぎょはしょうちにすまず):能力を持っている人は、退屈な仕事や小さな環境には満足しないこと。大きな魚は小さな池には棲まないことから。
- 清水に魚棲まず(せいすいにうおすまず):欠点が見当たらず、欲が全くない人は逆に人に親しまれないこと。水が綺麗すぎると隠れる場所がないため、逆に魚が棲まないことから。
「住む」をもっと詳しく
「住む」とは、人が特定の場所で生活することを表します。「棲む」と違い主語は「人」です。
「住む」の使い方
「住む」を使った例文を見ていきましょう。
- 彼女は、海の見える家に住んでいる。
- 私は、10年以上ここに住んでいる。
このように「住む」を使う場合は、人が主語になります。
「住む」を使ったことわざ
- 住めば都(みやこ):どんな場所でも住み慣れると、住みやすく思えてくることのたとえ。
- 住むばかりの名所:観光名所などの景色のいい場所に住むことは、一見良さそうに見えるが、実際は必ずしも住みやすいとはいえないこと
補足:古文で使われる「すむ」
古文でも、「すむ」という言葉が出てきます。現在と同じ「居住する」という意味の他に、「男が女のところに通う」という意味があります。
『伊勢物語』では2番目の意味で「すむ」が使われている部分があります。
(昔、男がいた。どうしたものか、その男は以前より通っていた女のもとへ通わなくなった。)
『伊勢物語』が書かれた平安初期は、結婚しても同居せず、男が女の下に通うという妻問婚(つまどいこん)が世の常識でした。
英語での使い分け
「住む」と「棲む」は、それぞれ英語で次のように表現します。
- 住む:live
- 棲む:inhabit
“live” はどちらの意味でも用いますが、基本的に「人」が主語です。また、inhabitは集団に用いることが通例です。それぞれを用いた例文は以下の通りです。
- This is a house my friend Ken lives in.
(これが、友達のケンが住んでいる家だ。) - What kind of animals inhabit that region?
(その地域にはどんな動物が棲んでいるのですか。)
“live” が自動詞であるのに対して、“inhabit” は他動詞である点にも注意しましょう。
まとめ
以上、この記事では、「棲む」と「住む」の違いについて解説しました。
簡単にまとめを作ったので、確認してみましょう。
- 棲む:動物が巣を作って生活していること
- 住む:人が場所を決めて生活していること