「自立」と「自律」の違いとは?意味から使い方や英語まで解説

違いのギモン

「自立」と「自律」は、同音異義語として習ったことがある方も多いでしょう。ただ、「自分で立つのが自立」「自分を律するのが自律」と言われても、あまりピンとこないのではないでしょうか。

以下では、対義語等を交えながら、「自立」と「自律」の違いについて解説します。

結論:あり方としての「自立」、行動としての「自律」

「自立」とは、ある方面において、他からの力を借りずに、自らの力だけでやっていくことを意味します。

一方、「自律」とは、他人の考えに支配されることなく、自分のものさしで自分の行動を決定することを指します。

「自立」をもっと詳しく


「自立」とは、ある方面において、他からの支援を受けずに独り立ちしていることを言います。「自立」は、過程ではなく結果としての概念であり、「自立した」または「自立している」といった形で用いることが多いです。

「自立」を定義する際に、「他からの援助を受けずに独り立ちすること」とされがちです。ただ、どんなに自分の力だけで生きていると思っていても、現実として、人は必ず誰かに支えられています。

たとえば、自分が住む家は誰かが建ててくれたものであり、食物は作り手と流通を担った人たちの力なくしては摂取できません。

そのため、冒頭に記したように、「ある方面において、他からの援助を受けずに独り立ちすること」というのが現実に即した定義と言えます。つまり、「自立している」とは、ある面で誰かに保護されていたものの、自分の力でやりくりできるようになった状態を意味します。

「自立」と「独立」

「自立」と字面が似ている言葉に「独立」がありますが、両者のニュアンスは異なります。

「独立」は、他の支配下から離れることを言います。たとえば、「親元から独立して一人暮らしをする。」といったように、組織などに属していた状態から、自分の意思で行動することを指します。

自分の力でやりくりできる状態である「自立」と一見似ていますが、「独立」はあくまで行動であり結果ではありません。たとえば、親元から離れて一人暮らしをしても、十分な稼ぎがなく、親から仕送りをもらっているとしたら、完全な独り立ちではありません。

このように、「独立」しても、「自立」しているとは限らないのです。

「自立」の対義語

「自立」の対義語は「依存」です。「依存」とは、何かをするにあたって、誰かの力に頼ることを意味します。

「自立」の対義語ではありますが、どんな人でも、ある側面では誰かに「依存」しています。いくら経済力があろうと、衣食住を享受する際には、他人の努力もおおいに関与していますよね。

つまり、すべてにおいて「自立」している人は存在しないということです。

「自立」の使い方の例

  1. 彼は、経済的にきちんと自立している。
  2. 自立式ハンモックを購入する。

①では、生活するにおいて、金銭面で誰からの援助も受けていない状態を「経済的に自立している」と述べています。何においても「自立」している人はいないため、例文の「経済的に」のように、ある方面においてというニュアンスを示す言葉が付近に置かれます。

②の「自立式」とは、他からの支えを受けず、自身のみで立っているという物理的な意味を表します。自立式ハンモックは、木に結びつけることなく、スタンドにハンモックを引っ掛ければ使用することができます。

「自立」の英語訳

「自立」の英語訳は、independence です。「自立している」と形容詞的に言う場合は independent となります。例文は以下の通りです。

例文
  • My biggest role as a parent is to support my children’s independence.
    (親としての最大の役目は、子供の自立をサポートすることである。)
  • Though he has some great skills, he hasn’t become mentally independent.
    (彼の技術は優れているが、精神面でまだ自立していない。)

「自律」をもっと詳しく


「自律」とは、他からのルールに縛られず、自分の立てた決まりの中で行動することを言います。「自立」が、ある方面において自分の力のみでやっていけるようになった「結果」の状態を指すのに対して、「自律」は自分のルールの中で取る「行動」を意味します。

たとえば、テスト勉強を、誰からも指示されることなく自分のルールの下で行うとします。この時、勉強の仕方を自分で決定している点で「自律」と言えます。

そして、こうした「自律」を繰り返した結果、安定的にテストで高得点を取れるようになったとした場合、それは勉強面において「自立」した状態であると言えます。

「自律」は行動であり、「自立」はあり方なのです。

「自律」の対義語

「自律」の対義語は「他律」です。「他律」とは、自分のルールではなく、他人から強制されたり、命令されたもとで行動を取ることを指します。

たとえば、「誰かに指示されたから」などの理由で行動することは「他律」に当たります。

「自律」の使い方の例

  1. ベテラン選手から、自律の精神を学ぶ。
  2. 自律神経に異常を来す。

①の「自律の精神」とは、自分で自分の行動をコントロールする精神という意味です。

②の「自律神経」は、健康状態を保つことを目的に、心身を良好な状態にすべく体内で稼働している神経です。体温を保ったり、血液を循環させたりなど、身体の機能の根幹を担っています。自動的に動くという点で「自律」と言えます。

「自律」の英語訳

「自律」の英語訳は autonomy です。「自律的な」という形容詞になると autonomic・autonomous となります。例文は以下の通りです。

例文
  1. This robot has high autonomy.
    (このロボットは自律性が高い。)
  2. It is very important to regulate the autonomic nerves.
    (自律神経を整えることはとても重要です。)
  3. My son seemed interested in the autonomous travel vehicle.
    (息子は、自律走行車に興味を持ったようだった。)
①の自律性は、自動で動くというレベルではなく、自分でさまざまなことを学習し、そこから得た知見を活かしてさらに効率的に動けるようになるという能力を意味します。

③の自律走行車とは、カメラやさまざまなセンサーを駆使しながら、障害物を避けて進むことのできる乗り物のことです。

まとめ

以上、この記事では、「自立」と「自律」の違いについて解説しました。

  • 自立:ある方面において、他からの力を借りずに、自らの力だけでやっていくこと
  • 自律:他人の考えに支配されることなく、自分のものさしで自分の行動を決定すること
「自立」は結果としての概念であり、「自律」は行動としての概念であるという点を押さえましょう。「自律」ができるようになると、「自立」が待っているはずです。