日本での外国人労働者が2016年に100万人を突破しました。
外国人労働者の数は年々増加傾向にあり、昔と比べて、町で外国人の方を見る機会も多くなったのではないでしょうか。
ところで、あなたは町で目にする外国人労働者が「移民」か「難民」か説明できますか。
グローバリゼーションが進む中で、「移民」と「難民」の違いを知っていることは重要な意味を持ちます。
今回の記事ではそんな「移民」と「難民」の違いについて、補足として「亡命」(ぼうめい)の意味についても詳しく解説します。
結論:「迫害の恐れ」があるかないか
それに対し、「難民」とは、人種、国籍、宗教、セクシュアリティ、政治的な信条などが原因での迫害や、戦争・紛争から逃れるために、仕方なく自国を離れた人々のことを指します。
そして、この「人種、国籍、宗教、セクシュアリティ、政治的な信条などが原因での迫害や、戦争・紛争から逃れるために、仕方なく自国を離れる」行為のことを「亡命」といいます。
「移民」についてもっと詳しく
「移民」とは、比較的長い間、自国以外の国に定住する人全般のことを指します。
「移民」の明確な国際的な定義はありませんが、「通常の居住地以外の国に移動し、少なくとも12か月間当該国に居住する人のこと」という文言がよく用いられます。
しかし、この定義は国や地域によって異なるので「比較的長い間、自国以外の国に定住する人々」という認識が一般的でちょうどいいと言えます。
つまり、旅行や留学、出張などで一時的であったり、短期間に異国の地で生活しても、それは「移民」という扱いにはならないのです。
冒頭で述べたような、町で目にする外国人労働者のほとんどは、長期的に日本に滞在しているため、「移民」と呼んでも差し支えはありません。
日本の「移民」事情
先ほど、町で目にする外国人労働者のほとんどは、長期的に日本に滞在しているため、「移民」と呼んでも差し支えは無いと説明しました。
しかし、現在の政府は「いわゆる移民政策」は採らないということを表明しています。
ここでいう「いわゆる移民政策」というもののは、単純労働者の人口不足を補うために、国家を挙げて移民を受け入れていくという政策のことを指します。
現在の政権は、こういった政策を採らないということを宣言しており、そのことと照らし合わせると、町で単純労働をしている外国人労働者を「移民」と称するのは間違っていると捉えることもできます。
では、彼らのことを、何と呼べばいいのでしょうか。
彼らの多くは「留学生」や「技能実習生」という名目で日本にやってきています。
しかし、その多くは「名目」だけであり、実態としては「出稼ぎ」に来ている人々がほとんどです。
彼らの多くは自国で「日本に行けばお金を稼げる」という話を聞き、多額の借金をし、日本にやってきます。
彼らを日本に送った現地の業者は日本の日本語学校から紹介料がもらえ、そして日本語学校は彼らから授業料を取ることができます。
日本語学校といっても名ばかりののも多く、授業がもはや成り立っていない学校も少なくありません。
彼らは「留学生」「技能実習生」としてでしか、日本にやってこられないため学校に通っているだけで、その目的は「出稼ぎ」であることが多いからです。
しかし、名目上は「留学生」「技能実習生」であるため、働ける時間に上限があります。
ただ、その「上限」を守っていては、母国で背負った借金、授業料、生活費をとても、まかなうことはできません。
日本の産業は、全般的に労働力不足になっているため、外国人労働者によって私たちの生活が支えられていると言っても過言ではありません。
しかし、現在の政府の支持基盤には「反移民」を掲げている人々がいるため、政府は移民政策を全面的に推し進め、彼らを日本の産業を支える「移民」として捉え、サポートすることができないのです。
そう遠くない未来に日本は今以上に深刻な労働力不足の危機に直面すると言われています。
今の政権のように、「移民政策」に対しどっち付かずの立場を取り続け、彼らを劣悪な労働条件・生活条件の中に閉じ込めていては、日本はいずれ「移民が来てくれない国」になってしまいかねません。
そうなってしまう前に、しっかりと議論を展開し、目下の問題に対応していく必要があります。
世界の「移民」事情
「アメリカ」の場合
アメリカでは現大統領であるドナルド・トランプは就任前に「アメリカとメキシコの国境に壁を築く」と盛んに表明していました。
さすがに、壁を築くことは今のところはありませんが、依然として移民に対して厳しい政策を取り続けています。
また、近年のイスラム過激派のテロの影響で、イスラム教をアイデンティティに持つ移民に対しても、入国を拒否するなどの政策を取り、国際的な波紋を呼びました。
「ドイツ」の場合
ドイツ第二次世界大戦後、移民を多く受け入れることで復興してきた一面があります。
しかし、移民受け入れによる文化摩擦・治安悪化などの影響が誇大され、反移民的なムードが広がりつつあります。
また、近年のイスラム過激派のテロがこのムードに拍車をかけています。
「イギリス」の場合
イギリスが2016年にEU離脱を決定したことはまだ記憶に新しいです。
このEU離脱の契機となって事柄の1つとして挙げられるのが「イギリス国内の社会保障費の圧迫」です。
EU各国から集まった移民に対しての社会保障費がイギリスの財政を圧迫し、それがイギリス人低所得者層のEUへの強い不満を煽りました。
イギリスでも「移民」は制限される流れにあるということです。
「難民」についてもっと詳しく
「難民」とは、人種、国籍、宗教、セクシュアリティ、政治的な信条などが原因での迫害や、戦争・紛争から逃れるために、仕方なく自国を離れた人々のことを指します。
「移民」がただ「比較的長い間、自国以外の国に定住する人全般のこと」と広範囲だったのに対し、「難民」が指す範囲は「迫害される恐れがあり、自国を離れた人」であり、言葉が示す範囲は限定的です。
つまり、ただ他国に生き、長期的に滞在するだけでは「難民」にはならないということです。
アメリカに移住し、出稼ぎをする人々のことを「メキシコ移民」とは言いますが、「メキシコ難民」とは言いませんよね。
それは、メキシコ人がアメリカに行くのは「メキシコにいると迫害されるから」ではなく、「働く」ためだからです。
また、「パレスチナ難民」とは言いますが、「パレスチナ移民」とは言いませんよね。
それはもともとパレスチナの地に住んでいた人々がイスラエル建国によって起こった戦争によってパレスチナの地を離れざるを得なかったからです。
本人の意思とは異なり、故郷を離れざるを得なかった場合には「移民」よりも「難民」と表現したほうが適切です。
「日本」の難民事情
日本は比較的に難民受け入れに対して、消極的な国です。
2017年は19,623人が難民申請を行いましたが、認定されたのはたったの20人でした。
日本では難民問題に対しての関心が薄く、難民に対しての偏見や差別が根強いため、難民受け入れの制度が国際的な基準と比較すると整っているとは言い難い状況です。
また、難民申請の結果が出るまで平均で3年、長いと10年かかることもあります。
難民申請の結果待ちの間に国から支援を受けることもできますが、その額は生活保護の3分の2と少なく、生活していくのに十分な額とは言えません。
「世界」の難民事情
主な「難民」発生国
- シリア(約550万人)
- アフガニスタン(約250万人)
- ソマリア(約140万人)
主な「難民」受け入れ国
- トルコ(約290万人)
- パキスタン(約140万人)
- レバノン(約100万人)
- イラン(約98万人)
- ウガンダ(約94万人)
「亡命」についてもっと詳しく
「亡命」とは「人種、国籍、宗教、セクシュアリティ、政治的な信条などが原因での迫害や、戦争・紛争から逃れるために、仕方なく自国を離れる」行為のことを指します。
「亡命」は「命」を「亡くす」と書きます。
「命」には一般的に知られている「生命」という意味のほかに「名を記した戸籍」という意味があります。
つまり、その「名を記した戸籍」を「亡くす」と書く「亡命」は、「自分の戸籍がある自国を離れ、他国へと移る」という意味になります。
まとめ
以上、この記事では「移民」「難民」「亡命」について解説しました。
- 移民:比較的長い間、自国以外の国に定住する人全般のことを指す
- 難民:迫害や戦争から逃れるために自国を脱出した人々のことを指す
- 亡命:迫害や戦争から逃れるために自国を脱出する行為のことを指す
グローバリゼーションが世界的に進行し、日本では労働力不足から移民受け入れ推進を求める声も上がっています。
そういった状況の中で、「移民」「難民」「亡命」は日本の未来を占う重要なキーワードとなってくるでしょう。