「生かす」と「活かす」の違いは?似ている「いかす」の使い分け

違いのギモン

「生かす」と「活かす」は「生かす」は動植物などの生命を保つことであり、「活かす」は経験や能力などを活用することであるという点が異なります。

口頭で話しているときには意識しなかったとしても、いざ文字に起こそうとすると、「生かす」と「活かす」のどちらを使えばいいのか迷ってしまうことがありますよね。

使い分けのポイントがわからず、なんとなく使ってしまっているという方が多いのではないでしょうか。

この記事では、「生かす」と「活かす」の違いや、それぞれの使い方、英語訳などについて詳しく解説します。

「生かす」と「活かす」の違い

  • 生かす
    「動植物などの生命を保つこと」を表す
  • 活かす
    「経験や能力などを活用すること」を表す

「生かす」と「活かす」には、上記のように意味合いの違いがあります。

「『生かす』は“生”命を保つという意味で、『活かす』は、“活”用するという意味だ」と、漢字で相違点を覚えましょう。

 

ただし、「活かす」の意味を「生かす」と表記する場合があります。

なぜなら、「活かす」が常用漢字(※)ではないからです。

そのため、新聞などの正式な文書では、「特性や能力、道具などを活用する」という意味で使う際であっても、あえて「生かす」と書くことがあるのです。

(※)常用漢字とは

常用漢字とは、国が制定した、社会生活での漢字使用の目安のことです。

公的な文書では、常用漢字の範囲内で漢字を使います。

「生かす」の意味

かす

動植物などを死なないようにさせて、生命を保つこと

「生かす」とは、動植物などを生きさせることです。

「生」という漢字には、以下のような意味があります。

  1. 命を保たせる
    例:自然の恵みが私たちを生かすのだ。
  2. うむ
    例:誤解を生む発言をしてしまった。
  3. はえる
    例:庭に新しい芽が生えた
  4. なま
    例:採れたてのトマトをのまま食べた。

このなかで①の意味が、「生かす」に使われています。

「生かす」の使い方

「生かす」は、生命に関する文脈で、以下のように使うことができます。

  1. 瀕死の子猫を心肺蘇生で生かすことができ、胸がいっぱいだ。
  2. ゲームの世界では、敵を生かすか殺すかという判断能力が問われることがある。
  3. 花は丁寧に手入れや水やりをすれば、長く生かすことができる。
  4. あの事故で、私の祖父は救助隊の懸命な努力によって生かされた

「生かす」の類義語

「生かす」には以下のような類義語があります。

  • 生存させる
  • 救う

「生かす」の英語訳

「生かす」を英語に訳すと次のようになります。

  • revive
    (生き返らせる)
    例:I succeeded to revive the plant which was almost dead.
    (瀕死状態だった植物を生かすことができた。)
  • keep alive
    (生きた状態にしておく)
    例:I want you to keep the insect alive.
    (その虫を殺さないでほしい。)

「活かす」の意味


かす

経験や能力などを活用すること

「活かす」とは、体験したことや能力、長所などを活用することを表します。

「活」という漢字には、以下のような意味があります。

  1. 勢いがあり、いきいきとしている
    例:「快活」「活性」など
  2. 暮らす
    例:「生活」「復活」など
  3. 動きなどを役立てる
    例:「活かす」「活用する」など

上記のなかで③の意味が、「活かす」に使われています。

「活かす」の使い方

「活かす」は以下のような場面で使うことができます。

  • 経験を活用するとき
    例:留学経験を活かす仕事に就きたい。
  • 能力を活用するとき
    例:彼女は計算力を活かして経理の仕事をしている。
  • 特徴を活用するとき
    例:この絵画は、鮮やかな青色を活かして制作された。
  • 長所を活用するとき
    例:持ち前の体力を活かす日々です。
  • 失敗・反省を活用するとき
    例:試合の作成を考える際には、前回の反省点を活かすことが大切だ。
  • 道具を活用するとき
    例:彼は、コインを活かすマジックが得意だ。

「活かす」の類義語

「活かす」には以下のような類義語があります。

  • 利用する
    物事を能力などを活用して使う
    例:工作には落ち葉を利用した
  • 役立てる
    目的のために使う
    例:虫を研究に役立てる

「活かす」と「利用する」の違い

「活かす」と「利用する」は、「何かを活用する」という点は共通しています。

ただし、厳密には以下のような違いがあります。

  • 活かす
    自分が設定した目的のために活用する
  • 利用する
    本来とは違う目的に活用する

「活かす」と「役立てる」の違い

「活かす」と「役立てる」も、「何かを活用する」という点は共通しています。

ただし、厳密には以下のような違いがあります。

  • 活かす
    能力などを発揮するという点を重視する
  • 役立てる
    目的を達成させるという点を重視する

「活かす」の英語訳

「活かす」を英語に訳すと次のようになります。

  • use
    (活用する)
    例:I want you to do the job for which you can use your characteristics.
    (あなたの特性が活かせる仕事についてほしい。)
  • make use of
    (活用する)
    例:I have to make use of this mortifying failure for next time.
    (この悔しい失敗を次に活かさねばならない。)
  • utilize
    役立たせる
    例:We must utilize our students’ capabilities.
    (私たちは、生徒たちの能力を活かさなければならない。)

「活かす」と「生かす」の使い分け


すでに解説したとおり、「生かす」は動植物の生命を保つことを表し、「活かす」は体験や能力などを活用することを表します。

そのため、基本的には以下のように、意味の違いで使い分けるだけで問題ありません。

  • 生かす
    すぐに動物病院に連れて行き、弱っていたノラ猫を生かすことができた。
  • 活かす
    私は、コミュニケーション能力を活かして営業の仕事をしている。

ただし、「活かす」の意味を表したいときに、あえて「生かす」と表記する場合がありますから注意しましょう

なぜなら、「活かす」というは常用漢字の読み方ではないため、厳密には正式ではないからです。

そのため、法令や新聞といった正式な文書では、「体験や能力などを活用する」という意味であっても、「活かす」ではなく「生かす」を使っています。

 

ただし、「常用漢字であるかどうか」という点はあくまでも目安であるため、日常生活においてはあまり気にする必要がありません。

また、「活かす」を使った方が、「“活”用する」というニュアンスがより伝わりやすいです。

そのため、「活かす」の意味を強調させたいときには、「活かす」のほうを使いましょう。

就職活動や転職活動で「能力を “いかす”」という文章を書きたいときにも、「活かす」を使うのが一般的です。

「生かす」と「活かす」の違いのまとめ

以上、この記事では、「生かす」と「活かす」の違いについて解説しました。

  • 生かす
    「動植物などの生命を保つこと」を表す
  • 活かす
    「経験や能力などを活用すること」を表す

「いかす」は日常的にもよく使う言葉であるため、「生かす」と「活かす」を正しく使い分けましょう。