「西部戦線異状なし」という本の題名をなぞらえて「就活戦線異状あり」なんてニュースを聞くことがあります。なぜ「異常」ではなく「異状」が使われるのだろう?と思いませんか。
私達の日常でよく使う「異常」には、「異状」という同音異義語があります。これらの違いを知っていますか?
「異常」は形容詞・副詞・名詞、「異状」は名詞
「異状」は名詞としてのみ使われます。
「異常」「異状」の名詞を区別するには「異常な物事」を伝えたいのか、「異常な雰囲気」を伝えたいのかに着目します。
「異常」をさらに詳しく
異常は、正常の対語、つまり「何か普通でない物事」を指します。形容詞・副詞として使われることが多いですが、名詞としても使われます。
名詞として使うときに「異状」との違いに注意しなければなりません。
一般に、数値や検査などで明らかな場合、どんな異常なのかが具体的であるときに使われます。
「異常」の使い方の例
- 異常気象が起こる
- 今日の友達は異常な行動をする
- 人前で話すときは異常に緊張する
- 精密検査で胃の中に異常が発見された
①はと②は形容詞的、③は副詞的、④は名詞的に使われています。
「異状」をさらに詳しく
異状は、状態が普段と異なること、つまり「異常な雰囲気があること」(多くは悪い状態のこと)を示します。そして常に名詞としてだけ使われます。
「異常」に比べて、「異状」が使われるのは限定的です。
一般的に、「状態・雰囲気」にこだわって伝えたいときに使います。
「異状」の使い方の例
- 喉の中に異状を見つける
- 警備員が異状を発見した
- 日本の満員電車は異状に見える
①は「異常」を使っても問題ないですが、精密検査をする前の段階で、はっきりとわかっていない段階だと「異状」が適切です。
②でも、明らかにおかしいことが起こっていたら「異常」が使えますが、「異状」の場合だと、警備員は普段と異なる雰囲気を感じ取ったに過ぎないと言えます。
「異常」と「異状」を名詞で比べてみる
「異常(名詞)」と「異状」を英語に訳して考えてみましょう。
「異常」は“unusual thing”と訳すことができます。これは「普通でない物事」と訳せます。普通でないことがはっきりしているときに、このように言うことができますよね。
一方、「異状」は“something wrong”と訳します。つまり、「(まだ具体的にはわからないけど)何かがおかしい」という意味です。
「イジョウ」という言葉を使いたいときは、まずは形容詞・副詞・名詞のどの形で使いたいのかに注意しましょう。
そして、もし名詞の場合には「異常な物事(unusual thing)」を伝えたいのか、「なんとなく異常な雰囲気(something wrong)」を伝えたいのかで区別するのが秘訣です。
まとめ
以上、この記事では、「異常」と「異状」の違いについて解説しました。
- 異常:形容詞・副詞・名詞として使う。具体的に異常な物事
- 異状:名詞として使う。異常な雰囲気
基本的には「異常」を使えば間違いがないと思って良いでしょう。もし「異状」を発見したら、それがどんな「異常な状態」なのかじっくり確かめてみてください。