「一葉落ちて天下の秋を知る」の意味とは?英語や類義語まで解説

言葉

今回ご紹介する言葉は、ことわざの「一葉(いちよう)落ちて天下の秋を知る」です。

言葉の意味・使い方・由来・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。

☆「一葉落ちて天下の秋を知る」をざっくり言うと……

読み方一葉(いちよう)落ちて天下の秋を知る
意味わずかな前兆から将来の大きな変化・衰退の兆しを察すること
由来『淮南子』の記述と片桐且元の句から
類義語桐一葉落ちて天下の秋を知る、桐一葉、霜を履みて堅氷至るなど
英語訳A straw shows which way the wind blows.(一本の麦わらは、風が吹く方向を示す。)

「一葉落ちて天下の秋を知る」の意味をスッキリ理解!

一葉(いちよう)落ちて天下の秋を知る:わずかな前兆から将来の大きな変化・衰退の兆しを察すること

「一葉落ちて天下の秋を知る」の意味を詳しく


「一葉落ちて天下の秋を知る」は、わずかな前兆から将来の大きな変化を察することを意味します。また、わずかな前兆から物事の衰退の兆しを察するという意味もあります。

このことわざの「一葉」は、「青桐の葉が一枚」という意味です。青桐とは、アオイ科・アオギリ属の高木(※1)です。葉が3つ~5つに裂けるのが特徴です。

 

青桐の葉は、他の樹木の葉よりも早く落葉します。そのため、季節の変化がいち早く反映される植物であるといえます。

青桐の葉が一枚落ちるのを見て秋の訪れを察するという状況から、「一葉落ちて天下の秋を知る」ということわざが生まれました。

同じ意味で、「一葉秋を知る」「一葉落ちて天下の秋」「一葉の秋」と言うこともあります。

  • 高木(※1):高さが5mを超える樹木

「一葉落ちて天下の秋を知る」の使い方

  1. トップ企業の経営コンサルタントを務めて20年。今となっては、社員1人1人の顔つきや、社内の雰囲気から、会社の行く末が大体わかる。会社で、一葉落ちて天下の秋を知ることについては自信がある。
  2. 彼は毎日散歩し、木々を観察している。この町の誰よりも一葉落ちて天下の秋を知ることができる人材だ。
  3. 今思えば、株価は暴落する1週間前から不安定な動きをしていた。一葉落ちて天下の秋を知ることが出来ず、悔しい。

➀と➁の例文は、「わずかな前兆から未来の大きな変化を察する」という意味で「一葉落ちて天下の秋を知る」を使っています。

一方、➂の例文は、「わずかな前兆から未来の衰退を察する」という意味で「一葉落ちて天下の秋を知る」を使っています。

「一葉落ちて天下の秋を知る」の由来

「一葉落ちて天下の秋を知る」の由来は、2つあります。

1つは『淮南子(えなんじ)』です。『淮南子』は前漢時代の哲学書です。全21章から成ります。「人間万事、塞翁が馬」「鶴(つる)は千年亀(かめ)は万年」などの表現も『淮南子』が由来となっています。

具体的には、『淮南子』の説山訓(せつざんくん)という章にある、以下の記述に基づきます。

一葉の落つるを見て、歳の将(まさ)に暮れなんとするを知り、瓶中(へいちゅう)の氷を睹(み)て、天下の寒きを知る。近きを以(もっ)て遠きを論ずるなり。

これを現代語に訳すと、「葉が一枚落ちるのを見て、秋の訪れを知り、かめの中に氷が張るのを見て、冬の訪れを知る。わずかな変化から、未来を予測することができる。」となります。

 

もう1つの由来は、安土桃山時代の武将で、片桐且元(かたぎりかつもと)です。片桐且元は、1583年の賤ヶ岳(しずがたけ)の戦いで活躍し、豊臣秀吉の重要な臣下となりました。

しかし、その後豊臣家の未来を見据え、次の句を詠みます。

桐一葉 落ちて天下の 秋を知る

豊臣秀吉の家紋は桐をモチーフにしており、「桐紋(きりもん)」と呼ばれていました。つまり、この句は、豊臣家が衰退し、終わりを迎えることを暗示しています。

これが直接の由来となり、「一葉落ちて天下の秋を知る」ということわざが出来ました。

「一葉落ちて天下の秋を知る」の類義語

「一葉落ちて天下の秋を知る」には以下のような類義語があります。

  • 桐一葉落ちて天下の秋を知る:わずかな前兆から将来の大きな変化・衰退の兆しを察すること
  • 桐一葉(きりひとは):わずかな前兆から将来の大きな変化・衰退の兆しを察すること
  • 霜(しも)を履みて堅氷(けんぴょう)至る:小さな兆候を見逃すと、いつか大きな災難に見舞われるということ
  • 瓶中(へいちゅう)の氷を見て天下の寒きを知る:わずかな前兆から将来の大きな変化・衰退の兆しを察すること

「桐一葉落ちて天下の秋を知る」は、先ほど紹介した片桐且元の句が元になっています。

「桐一葉」の由来も、「一葉落ちて天下の秋を知る」と同様です。片桐且元の句がきっかけとなり、現在では、俳句の秋の季語として定着しています。ちなみに、高浜虚子(※2)は、「桐一葉」を用いて、以下のような俳句を詠んでいます。

桐一葉 日当たりながら 落ちにけり

また、明治時代、坪内逍遥(つぼうちしょうよう)が、豊臣家の没落を描いた戯曲(※3)『桐一葉』を書きました。このことがきっかけとなり、「桐一葉」という表現の認知度が上がりました。

  • 高浜虚子(※2):明治から昭和にかけて活躍した、俳人・小説家
  • 戯曲(※3):演劇の脚本

「一葉落ちて天下の秋を知る」の英語訳

「一葉落ちて天下の秋を知る」を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • A straw shows which way the wind blows.
    (一本の麦わらは、風が吹く方向を示す。)
  • A falling leaf shows that autumn has come.
    (落葉は、秋の訪れを示す。)

まとめ

以上、この記事では「一葉落ちて天下の秋を知る」について解説しました。

読み方一葉(いちよう)落ちて天下の秋を知る
意味わずかな前兆から将来の大きな変化・衰退の兆しを察すること
由来『淮南子』の記述と片桐且元の句から
類義語桐一葉落ちて天下の秋を知る、桐一葉、霜を履みて堅氷至るなど
英語訳A straw shows which way the wind blows.(一本の麦わらは、風が吹く方向を示す。)

「一葉落ちて天下の秋を知る」は、小さな変化から大きな変化を読み取るという意味のことわざです。

小さな変化に注目し、未来を読み取るためには、普段から周囲に気を配ること・心の余裕を持つことが重要となるでしょう。

多くのことに応用できる表現だと思います。是非使ってみてください。