日本語の「不審」と「不信」の違いとは?わかりやすく解説

違いのギモン

「人間不信」や「不審者」といった言葉の中で、同音異義語である「不審」と「不信」を見かけることがあります。

疑わしいというニュアンスが共通しているため、両者の違いをはっきりと説明できる人は少ないと思います。しかし、これらの熟語を適切に使い分けるためには区別を明確につける必要があります。

今回は「不審」と「不信」の違いを例文とともに解説します。

結論:「不審」は疑わしいこと、「不信」は信頼できないこと

「不審」は物事に不明確な点があって、疑わしく思うことです。一方、「不信」は物事や人を信じられないこと、または信頼できないことです。

「不審」をもっと詳しく


「不審」とは物事に不明確な点や合点のいかない点があって、疑わしく思うことです。
「不審」の「審」は、物事を細かく調べてはっきりとさせる、是非を見分けるという意味を持っています。「審」に否定の「不」がついて、是非を見分けられない、つまり疑わしく思うという意味の熟語になっています。

「不審」を含んだ熟語の例を以下にまとめました。

  • 不審者
  • 不審火
  • 挙動不審

「不審」の使い方の例

「不審」を使用した例文を以下にまとめました。

  1. 彼の言い分が先ほどと少し変わっていたため、不審に思った。
  2. 挙動不審な女性を発見したので、すぐさま通報した。
  3. いくつかの不審な点を問い詰めてみたが、ボロは出なかった。
  4. 住宅三棟を全焼させた火事は、不審火として扱われた。

①は「不審に思った」という言い回しで疑わしい感覚を表現しています。

②は先ほど挙げた「挙動不審」という熟語が使われています。意味は「立ち振る舞いに落ち着きがなく怪しいさま」です。

③の「不審」は、「疑わしい点」という意味で使用されています。

④の「不審火」は、放火の疑いがある原因不明の火事を指します。

「不信」をもっと詳しく


「不信」は物事や人を信じられないこと、または信頼できないことを表します。信仰心や敬意がないことも意味する言葉です。

「不信」の「信」は、言動に偽りがないこと、正しいことを意味します。「信」に否定の「不」がついて、言動に偽りがある、つまり信用できないという意味になります。

「不信感を抱く」や「不信を買う」といった言い回しをします。

「不信に思う」は表現として誤りです。「信頼できないことを思う」と置き換えると、意味が通らないことがわかります。

「不信」の使い方の例

「不信」を使用した例文を以下にまとめました。

  1. 彼女はいつも待ち合わせの時間に遅れてくるため、友達からの不信を買っている。
  2. 他人のレポートを写したことがばれて、教授陣の不信を招いてしまった。
  3. 不信行為ばかりしていると、さすがの僕でも友達をやめるよ。
  4. 人間不信になってしまった患者のメンタルケアを専門にしています。

①の「不信を買う」という表現は、信頼できないと判断されることを表します。

②の「不信を招く」という表現も、①と同じく信頼できないと判断されることを表します。

③は、常識を疑うほどの信じられない行為という意味で「不信行為」が使われています。

④は、人間を信じることができないという意味で「人間不信」が使用されています。

まとめ

以上、この記事では、「不審」と「不信」の違いについて解説しました。

  • 不審:物事に不明確な点があって、疑わしく思うこと
  • 不信:物事や人を信じられないこと、または信頼できないこと
疑わしく思うことと、信頼できないことのニュアンスの差を掴むことは難しいでしょう。その場合は本記事の例文を読み直せば、ニュアンスの差が明確になります。

「不審者」や「人間不信」など、熟語として区別する場合や、「不審に思った」や「不信を招く」など、表現を選ぶ場合があります。どちらもしっかり使い分けてください。

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シェスカ
公的文章に詳しい大学院生。 学術論文や特許の執筆を得意としています。 スッキリではその知識を活かし、専門用語の解説を担当しています。