「踏まえて」とは「ある事柄を前提として」「あらかじめ考慮に入れて」という意味です。
何となくのニュアンスで「踏まえて」を使ったことがある人も多いのではないでしょうか。
実は目上の人に対して「踏まえて」を使うと失礼に当たることもあるので、意味や使い方をしっかり抑えておくと役に立ちます。
この記事では「踏まえて」の意味や使い方を、例文付きでわかりやすく解説します。
☆「踏まえて」をざっくり言うと…
読み方 | 踏まえて(ふまえて) |
---|---|
意味 | ①ある事柄を前提として ②あらかじめ考慮に入れて |
類義語 | 基づく 鑑みて 念頭に置く など |
英語訳 | based on〜(〜を根拠として) considering〜(〜を考慮して) on the basis of〜(〜に基づいて) など |
「踏まえて」の意味
- ある事柄を前提として
- あらかじめ考慮に入れて
「踏まえて」は、「ある事柄を前提として」「あらかじめ考慮に入れて」という2つの意味をもちます。
前の言葉に引き続き、結論を述べるために使います。
「踏まえる」の意味
「踏まえて」は、動詞「踏まえる」に接続助詞「て」がついた形です。
「踏まえる」には以下のような意味があります。
- しっかりと足でふみつける
- 判断のよりどころにする
- あれこれ思案する
- 支配下に取り込み、掌握する
「踏まえる」は、①「しっかりと足でふみつける」から転じて②「判断のよりどころにする」という意味ももつようになりました。
「踏まえて」では、②の意味で使われています。
「踏まえて」の表記
「踏まえて」は、「ふまえて」とひらがなで表記することもあります。
しかし、一般的には「踏まえて」と表記します。
「踏まえて」の使い方
「踏まえて」は固い表現なので、ビジネスシーンなどで使われることが多く、日常会話ではほとんど使われません。
「踏まえて」は、「◯◯を踏まえて」の形で使います。
◯◯に入る言葉は以下のようなものがあります。
- 事実を踏まえて
- 経験を踏まえて
- 結果を踏まえて
- 現状を踏まえて
- 事故を踏まえて
- 以上を踏まえて
- 上記を踏まえて
「踏まえて」を使った文章の後には、結論が続きます。
下の例文でも、「踏まえて」の後に結論が続くことがわかります。
- 裁判員は事実を踏まえて判決を下した。
- 現状を踏まえて、計画を立てる。
- 事故を踏まえて、道路の工事を行う。
「踏まえて」は以下のような使い方をします。
- 自分の行為に対して使う
- 相手の行為に対して使う
それぞれ例文と一緒に見ていきましょう。
使い方①自分の行為に対して使う
「踏まえて」は、自分の行為に対して使うことで、へりくだることができます。
例文を見てみましょう。
- 部長にいただいたアドバイスを踏まえて、企画書を修正いたしました。
- 試合の反省点を踏まえて、ドリブルの練習に励む。
- 刑事は現場の状況を踏まえて、近隣の聞き込み調査に向かった。
- 以上の意見を踏まえつつ、最終的な決断をするつもりだ。
- アンケート結果を踏まえながら、もう一度作り直す。
使い方②相手の行為に対して使う
「踏まえて」は、基本的に相手の行為に対しては使いません。
どうしても相手の行為に対して「踏まえて」を使う場合は、以下のような敬語表現にします。
- 以上の要点をお踏まえいただきご選択をお願い申し上げます。
- 以上の要点をお踏まえになりご選択をお願い申し上げます。
- 以上の要点を踏まえましてご選択をお願い申し上げます。
相手に対して使うとき、「踏まえて」は以下のような言葉に言い換えることができます。
- ご確認のうえ
- ご注意のうえ
- ご留意のうえ
目上の人の行為に「踏まえて」を使うと、上から目線に感じられて失礼になることがあります。
そのため、使わないほうが無難です。
×上記を踏まえて、ご返信をお願いいたします。
×これらを踏まえて、意見をいただけますと幸いです。
「踏む」の意味
動詞の「踏む」は「踏まえて」と同じ漢字を使うため、間違われることがよくあります。
「踏む」には以下のような意味があります。
- 足で体重をかけて上から押さえる
例:土足で踏みつける - 交互に足を上げ下げする
例:地団駄(じだんだ)を踏む - 実際に経験する
例:場数を踏む - 決まったやり方に従って行う
例:複雑な手続きを踏む - 前もって見当をつける
例:値踏みをする
上記のうち、➂「実際に経験する」と④「決まったやり方に従って行う」の意味は、「踏まえて」の意味と混同しやすいです。
「踏まえて」と「踏む」の違い
「踏まえて」と「踏む」は以下のような違いがあります。
踏まえて | 踏む | |
---|---|---|
意味 | ある事柄を前提として あらかじめ考慮に入れて | 実際に経験する 決まったやり方に従って行う |
ニュアンス | 考慮する前提 | それ通りに行うルール |
「踏まえて」は、考慮する前提を表すため、すべてその通りには行いません。
「踏む」は、すべてそれ通りに行うルールを表します。
「踏まえて」と「踏む」で混同しやすい表現には、以下のようなものがあります。
- 手順を踏む
物事に着手するときの順番を守って行う - 手順を踏まえる
物事に着手するとき、順番をあらかじめ考慮に入れる
- 場数を踏む
実際に何度も同じ経験をする - 場数を踏まえる
実際に何度も経験をしたことを考慮に入れる
- 前例を踏む
前例に従って行う - 前例を踏まえる
前例を基準にして行う
「踏まえて」の類義語
「踏まえて」の類義語を以下の2つの意味別に見ていきましょう。
- ある事柄を前提として
- あらかじめ考慮に入れて
類義語①「ある事柄を前提として」という意味のもの
「ある事柄を前提として」の意味をもつ類義語は以下のようなものがあります。
- 前提とする
ある事柄が成り立つために前置きとなる条件とする - 前提として
ある事物が成り立つために前置きとなる条件として - 基づく
それが基となって起こる。近づく。到達する - 基づき
そこに基礎・根拠を置く。よりどころとする - 基づいて
原因や発端、根拠などがそこにあるさま。よりどころとして - 根拠にする
物事が存在するための理由にする - 根拠とする
物事が存在するための理由とする - 根拠として
物事が存在するための理由として - 準じて
準ずること。準拠すること。則ること
類義語②「あらかじめ考慮に入れて」という意味のもの
「あらかじめ考慮に入れて」の意味をもつ類義語は以下のようなものがあります。
- 考慮する
考えの中に含める。配慮する。気を使う - 考慮して
考えの中に含めて。配慮して - 注意する
気をつけて。気をくばって - 注意して
気をつけること。気をくばること - 鑑みて(かんがみて)
見本や手本を元に考えて。他と比べながら考えて - 意識して
物事や状態に気づく。はっきり知る。気にかける - 加味(かみ)する
あるものに、別の要素を付け加えること - 念頭に置く
常に心にかける。いつも忘れないでいる - 心に留める
常に意識し、忘れずにおくこと
「踏まえて」と「鑑みて」の違い
「踏まえて」と「鑑みて」は以下のような違いがあります。
踏まえて | 鑑みて | |
---|---|---|
意味 | ①ある事柄を前提として ②あらかじめ考慮に入れて | ①見本や手本を元に考えて ②他と比べながら考えて |
事柄や前例を | 基準にして考える | 比較対象として考える |
「踏まえて」と「鑑みて」は、事柄や前例をどう考えるかが異なります。
例文を見てみましょう。
- 昨年の売り上げを踏まえて、今年の売り上げ目標を決めた。
(昨年の売り上げを基準にして考えて、今年の売り上げ目標を決めた) - 昨年の売り上げを鑑みて、今年の売り上げ目標を当初より引き上げた。
(昨年の売り上げを比較して考えて、今年の売り上げ目標を決めた)
「踏まえて」は、事柄や前例を基準にして考えます。
「鑑みて」は、事柄や前例を比較対象として考えます。
「踏まえて」の英語訳
「踏まえて」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- based on〜
(〜を根拠として) - considering〜
(〜を考慮して) - on the basis of〜
(〜に基づいて) - in accord with〜
(〜と一致して)
「踏まえて」のまとめ
以上、この記事では「踏まえて」について解説しました。
読み方 | 踏まえて(ふまえて) |
---|---|
意味 | ①ある事柄を前提として ②あらかじめ考慮に入れて |
類義語 | 基づく、鑑みて、念頭に置くなど |
英語訳 | based on〜(〜を根拠として)、considering〜(〜を考慮して)、on the basis of〜(〜に基づいて)など |
「踏まえて」は自分の行為にのみ使うことが無難です。
この記事を踏まえて、正しい使い方で「踏まえて」を使ってみてくださいね。