夏になると、「熱中症」「日射病」「熱射病」などという言葉をよく聞くようになりますよね。そして、これらにならないように、きちんと対策をする必要があります。
ところで、これらの言葉の違いをみなさんはご存知でしょうか。質問されたら答えられない人も多いのではないでしょうか。そこで、今回は「熱中症」と「日射病」と「熱射病」の違いについて解説します。
結論:「熱中症」は「日射病」「熱射病」などの総称
「日射病」は、熱中症の中でも直射日光が原因のものを指します。
「熱射病」は、熱中症の中でも重度のものを指します。
「熱中症」をもっと詳しく
熱中症とは、高温多湿の環境によって引き起こされる体調不良の状態の総称のことです。これは夏などの暑い環境に体が適応できなくなることによって起こります。
そして、熱中症の種類としては日射病、熱痙攣(ねつけいれん)、熱疲労、熱射病などがあります。
また、日本救急医学会が新たに作成した「熱中症診療ガイドライン」では、熱中症は3つの段階に分けられます。「現場で対応が可能」な段階と、「受診が必要」な段階と、「入院が必要」な段階です。
そして、熱中症は屋外で起こるというイメージがありますが、室内でも起こることがあります。
また、小さい子ども、特に乳幼児は熱中症にかかりやすいので注意が必要です。なぜなら、大人と違って体温調整機能が十分発達してないからです。
ここからは、もっと具体的に見ていきましょう。
熱中症のメカニズム
まず、高温多湿の環境では、体温が37℃を超えることがあります。すると、体は体温を下げるために熱を放出しようとします。そのために、体は皮膚の血管を拡張させ、皮膚を流れる血液量を増やします。
なぜなら、普通は体温より気温のほうが低く、皮膚の近くを流すことで血液を冷却することができるからです。
しかし、高温多湿の環境では、この方法を使っても大した効果がないどころか、逆に体温が上昇してしまいます。そして、体は熱を放出するために大量の汗をかきます。
すると、体内にある水分の量が急激に減っていってしまいます。血液の主成分は水なので、体内を流れる血液の量も減っていってしまいます。
そして、血液の量が減ってしまうと、脳や心臓の活動に影響が出てきてしまいます。それを防ぐため、体は血管を収縮させます。
しかし、そうすると熱を放出できなくなってしまいます。これが更なる体温上昇につながり、熱中症になってしまうのです。
熱中症にかかりやすい時期や場所
熱中症にかかりやすい時期はもちろん、7月や8月など、気温が高い時期です。しかし、気温があまり高くなくても、湿度が高いと熱中症にかかりやすいので注意が必要です。具体的には、気温が35℃を超えたり、湿度が80%を超えたりする夏の日は熱中症にかかりやすいと言われています。
そして、炎天下の広場のほか、砂地、冷房の効いていない車内などに長時間滞在すると、熱中症になるリスクが高まります。
熱中症の応急処置
熱中症の応急処置のポイントは、早く体温を下げることです。具体的には、以下の通りです。
- 日陰や冷房の効いた室内など涼しい場所に避難し、衣服をゆるめて風通しをよくします。
- わきの下、後頭部などを氷で冷やしたり、冷たいタオルで体をふいたりして体を冷やします。
- 意識がある場合、水分・塩分補給をします。意識がない場合は行ってはいけません。
- 意識障害がある場合、体を横に寝かせて救急車を待ちます。
ちなみに、❸で意識がない場合に水分補給を行ってはいけないのは、水が気道に入ってしまい、窒息する可能性があるからです。
熱中症の予防方法
熱中症の予防には、主に3つのポイントがあります。服装・水分補給・休憩です。
服装
黒やそれに近い色の服は熱を吸収しやすいので避け、白やそれに近い色の服を着ると、熱を吸収しにくいのでおすすめです。そして、素材としては汗の吸収がよく、風通しのいいものが適しているでしょう。
更に言うならば、速乾性のあるものが最適でしょう。例えば、綿素材のものがおすすめです。
ただ、綿はそこまで速乾性がないため、長時間の外出をする際には、着替えを持ち歩くことをおすすめします。汗をかくと気持ち悪いだけでなく、体温も下がりにくくなってしまいます。
また、帽子をかぶったり、日傘を刺したりして、皮膚や後頭部を直射日光から守ると熱中症予防になります。
水分補給
熱中症を予防するためには、水分だけでなく、塩分や糖分も補給することが必要です。
まず、水分の補給が熱中症予防に必要なのは多くの人が理解できると思います。そして、汗をあまりかいていない場合には、水分補給だけで十分です。
しかし、汗を多くかいている場合には事情が違います。人間は汗をかくと、水分だけでなく塩分も放出してしまうため、これも補給する必要があるのです。
更に、熱で体が疲労しているため、エネルギー補給のために糖分も補給するといいでしょう。
そのため、汗を大量にかいた時には、スポーツドリンクを飲むと良いでしょう。ちなみに、これは水分1ℓに塩を小さじ0.5杯、砂糖を大さじ4.5杯加えた飲み物で自作することができます。
そして、運動の激しさなどによって、必要な水分補給の量は変わりますが、高温多湿の環境で激しい運動をする時には、最低でも2~3時間に1ℓの補給を行うべきです。
ちなみに、このような水分補給をアルコール飲料で行うと、逆効果になるので注意が必要です。なぜなら、アルコールは体内で無害な物質に分解するために、大量の水が必要になるからです。
休憩
気温が体温と同じかそれ以上になるような日には、最低でも30分に1回は休憩を取るべきです。しかし、熱中症になるリスクを考えれば、このような高い気温の日には運動をしないほうが無難でしょう。
そして、休憩をする際には涼しい場所に行き、冷たい飲み物を摂取したり、保冷剤などで首の後ろやわきの下などを冷やしたりすること効果的です。
また、冷房を使えるのであれば、部屋の温度が25℃~27℃、湿度が50%~60%に保たれるように設定しておきましょう。
「日射病」をもっと詳しく
日射病とは、熱中症のうち、直射日光が原因となっているものを指します。症状の重さが基準になっているわけではありません。そのため、日射病には軽症のものから、命に関わる重症のものまで幅広くあります。
具体的には、日射病は直射日光による日焼けと熱により、発汗などによる体温の冷却が間に合わなくなり、体がオーバーヒートして起こります。そして、体がオーバーヒートすると、顔が赤くなって息遣いは荒くなり、皮膚は日焼けによって熱を持ち、乾いて汗が出ない状態になってしまいます。
そして、日射病の症状としてはめまい・吐き気・頭痛などがあります。しかし、これが重症化すると意識不明になることもあり、最悪の場合は命を落とすことになってしまいます。
「熱射病」をもっと詳しく
熱射病とは、熱中症のうち、重度のものを指します。そして、日射病と違って直射日光の有無は関係ないため、室内などでも発症することがあります。
この状態では大量の汗をかいて体内の水分と塩分が著しく不足することによって体の体温調整機能がうまく働かなくなってしまいます。すると、体温が40℃以上にまで異常上昇してしまうことになり、重度の意識障害が起こってしまいます。
そして、体温調節機能が働いてないため発汗は起こらず、皮膚は乾燥しています。
この状態が続くと細胞の働きに支障が出てしまい、多臓器不全(※1)により死に至ることもあります。
もしこの状態になった場合にはすぐに体を冷却する応急処置を行った上で、救急車を呼ぶべきです。
- 多臓器不全(※1):体内の複数の臓器がうまく機能できなくなってしまう状態のこと。命に関わる。
補足1:熱痙攣(ねつけいれん)
熱痙攣とは、熱中症のうち、比較的軽い段階での症状です。ただ、放っておくと症状が重くなっていってしまうので、すぐに処置が必要です。
具体的には、熱痙攣は大量の発汗後に、水分だけを補給し、体の中で塩分やミネラル分が不足してしまった時に起こります。
そして、症状としては突然の不随意性有痛性痙攣(ふずいいせいゆうつうせいけいれん)(※2)、硬直、痙攣などがあります。そして、体温は正常で、発汗もすることができます。
- 不随意性有痛性痙攣(※2):俗に言う「つった」状態。筋肉が縮んで動かなくなり、痛みが走る。
補足2:熱疲労
熱疲労とは、熱中症のうち、中度の症状です。
大量の発汗により塩分だけでなく水分の補給も追いつかなくなり、脱水状態になって発症します。いわゆる脱水症状です。症状はさまざまで、体温は異常に上昇してしまいます。
しかし、肌は冷たく、発汗もある状態です。
まとめ
以上、この記事では、「熱中症」と「日射病」と「熱射病」の違いについて解説しました。
- 熱中症:高温多湿の環境によって引き起こされる体調不良の状態
- 日射病:直射日光が原因の熱中症
- 熱射病:重度の熱中症
熱中症は一度かかってしまうと何日も影響が出てしまうので、注意したいですね。特に夏の暑い日には水分補給などを欠かさないようにしたいものです。