今回ご紹介する言葉は、熟語の「反芻(はんすう)」です。
言葉の意味・使い方・類義語・英語訳、また心理学用語の「反芻思考」についてわかりやすく解説します。
☆「反芻」をざっくり言うと……
読み方 | 反芻(はんすう) |
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意味 | 繰り返し考えて、よく感じ取ること。 1度飲み込んだ食べ物を口の中に戻し、よく噛んでから再び飲み込むこと。 |
類義語 | 咀嚼 |
英語訳 | rumination((動物の)反芻、熟考), ruminate((動物が)反芻する、よく考える)など |
「反芻」の意味をスッキリ理解!
「反芻」の意味を詳しく
「反芻」とは、「繰り返し考えて、よく感じ取ること」を指します。誰かに言われた言葉や、過去に経験したことなどが「反芻」の対象になります。
たとえば、「監督が放った言葉の意味を反芻する」という使い方があります。監督が発した言葉の意味について思いを巡らせ、十分に噛みしめることを指しています。
食物の摂取方法を指す!「反芻」のもともとの意味
「反芻」のもともとの意味は、「1度飲み込んだ食物を口の中に戻し、よく噛んでから再び飲み込むこと」です。「芻」は「まぐさ」と読み、牛や馬などのエサとなる草を指します。つまり、「芻」を「反復」して食べることを「反芻」と言うのです。
「反芻」は、ある種の草食動物に見られる食物摂取の方法です。「反芻」を行う動物を反芻動物と呼び、牛や羊などが該当します。
反芻動物には、反芻胃と呼ばれる特別な胃袋があります。反芻胃は通常 4つあり、それぞれ第1胃・第2胃・第3胃・第4胃と言います。反芻動物は、反芻胃を駆使しながら、草に多く含まれるセルロースという物質を消化していきます。
セルロースとは、植物から作られる食物繊維のことです。一般に、食物繊維は硬く結合しているため、生物の体内では消化できません。しかし、反芻動物は、体内にすむ微生物の力を借りることで、セルロースを消化しているのです。
そして、通常は消化しにくい草を上手く体に取り込もうとする過程で、「反芻」は行われます。体内に飲み込まれた草は、第2胃から口の中へ一旦戻されます。そこでもう 1度草をよく噛んで細かくすることで、消化しやすくすることに繋がるのです。
このように、本来は食物の摂食方法を指すのが「反芻」でした。しかし、「自分の中に取り込もうとして、何度も働きかける」という点が派生して、「言葉や経験についてよく考え、よく味わうこと」も「反芻」と言うようになりました。
「反芻」の使い方
- その時は不可解だと感じた彼の言葉を反芻してみると、真意が徐々にわかってきた。
- 中学時代のアルバムを手に取った彼女は、旧友との思い出を反芻しているようだった。
- 牛がよく口を動かしているのは、草を反芻しているからだ。
①と②では、「繰り返し考えて、よく感じ取ること」という意味で「反芻」が用いられています。①のように、誰かの言葉を「反芻」した結果、真意にたどり着くことはよくありますよね。
③の「反芻」は、特定の動物が行う食物の摂取方法を指しています。牛は、1日当たり 6~10時間かけて「反芻」を行います。
「反芻」の類義語
反芻には以下のような類義語があります。
- 咀嚼(そしゃく):食物を噛みくだくこと。言葉や文章の意味をよく考えて、噛みしめること。
「咀嚼」と「反芻」は、どちらも「食物をよく噛むこと」が原義です。ただ、「咀嚼」が噛むことのみを指すのに対して、「反芻」は「1度飲み込んだものを、再び噛みなおして飲み込む」という一連の流れを指しています。
また、派生した意味についても違いがあります。「咀嚼」は、言葉の意味をよく考えて味わうことを意味します。一方、「反芻」の場合は、言葉だけでなく、過去の経験なども味わう対象となります。
「反芻」の英語訳
反芻を英語に訳すと、次のような表現になります。
- rumination
((動物の)反芻、熟考) - ruminate
((動物が)反芻する、よく考える) - chew the cud
((動物が)反芻する) - chew over ~
(~についてよく考える)
動物が行う「反芻」を指す場合と、「繰り返し考えて、よく感じ取ること」を表現する場合とで英語訳を使い分けましょう。
上記 4つの英語を用いた例文は次の通りです。
- By monitoring the cow’s rumination patterns, we know their state of health.
(牛の反芻パターンを監視すると、彼らの健康状態がわかる。) - I ruminated on what he said to me yesterday.
(彼が昨日私にかけた言葉について、私は深く考え込んだ。) - A ruminant is an animal that chews the cud.
(反芻動物とは、食物を反芻する性質を持つ動物のことである。) - It seemed that he was chewing over his teacher’s remark.
(彼は、先生の指摘をよく噛みしめているようだった。)
「反芻思考」とは
人間のメンタル状態を指す言葉として、「反芻思考」があります。
「反芻思考」は、過去にあったネガティブな出来事を何度も思い返してしまい、落ち込んだ状態が続くことを指します。ネガティブな過去を「反芻」するということですね。
「反芻思考」は、リフレクションとブルーディングという2つの思考に分けられます。リフレクションは、「なぜあのような失敗をしたのか」と分析すること、「ブルーディング」は、「もっと状況がこうであればよかったのに」と不満を膨らませることです。
リフレクションは次に反省を活かすことにつながる可能性がありますが、ブルーディングは行きすぎるとうつ状態を招く恐れがあります。
まとめ
以上、この記事では「反芻」について解説しました。
読み方 | 反芻(はんすう) |
---|---|
意味 | 繰り返し考えて、よく感じ取ること。 1度飲み込んだ食べ物を口の中に戻し、よく噛んでから再び飲み込むこと。 |
類義語 | 咀嚼 |
英語訳 | rumination((動物の)反芻、熟考), ruminate((動物が)反芻する、よく考える)など |
「反芻」には 2つの意味がありますが、「自分の中に取り込もうとして、何度も働きかける」という点は共通しています。ぜひ、意味や使い方を覚えてみてください。