「拍車がかかる」とは「物事の進行が一気に加速する」という意味です。
「良い意味と悪い意味、どちらで使えば良いのだろう」など、使い方に関して疑問を抱いている方が多いのでないのでしょうか。
この記事では、「拍車がかかる」の意味だけでなく、具体的な使い方や類義語、英語訳などについても詳しく解説します。
☆「拍車がかかる」をざっくり言うと……
| 読み方 | 拍車(はくしゃ)がかかる |
|---|---|
| 意味 | 物事の進行が一気に加速する |
| 使われ始めた時期 | 明治時代の中期から使われるようになった |
| 類義語 | 「エンジンがかかる」「エスカレートする」「加速する」など |
| 対義語 | 「歯止めがかかる」「焼け石に水」など |
| 英語訳 | spur〜(拍車がかかる)など |
このページの目次
「拍車がかかる」の意味
物事の進行が一気に加速する
「拍車がかかる」とは、物事の進行が一気に加速することです。
良い意味合いでも、悪い意味合いでも使うことができます。
「拍車がかかる」は、拍車の意味を知ると、さらに深く理解することができます。
ここからは、拍車について詳しく解説します。
拍車とは
拍車とは、馬に乗る人が、靴のかかとにつける金具のことです。

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「拍車がかかる」の「物事の進行が一気に加速する」という意味は、「拍車で馬の腹を蹴ると、馬が速く走る」という意味が転じたものです。
拍車は、馬が走るスピードを調節するために使う道具です。
拍車で馬の腹を蹴ることで、馬の走るスピードを速めることができるのです。
「拍車がかかる」の使い方

「拍車がかかる」は、「〇〇に拍車がかかる」というかたちで使います。
なお、「拍車がかかる」は現在形です。
そのため、過去形や現在進行形にしたい場合は、「かかる」の部分を以下のように変えることになります。
- 過去形
〇〇に拍車がかかった - 現在進行形
〇〇に拍車がかかっている
「拍車がかかる」の例文

「拍車がかかる」は、良い場面と、悪い場面の両方で使うことができます。
それぞれの例文を見ていきましょう。
良い場面での例文
「拍車がかかる」を良い場面で使うときの例文は、以下の通りです。
- 午後から作業に拍車がかかり、やるべきことを全て終えることができた。
- 先日、医師から「それ以上太ると、体に良くない」と注意されたので、トレーニングに拍車がかかった。
このように、「拍車がかかる」は良い場面で使うとき、「物事が捗る(はかどる)」というニュアンスになります。
悪い場面での例文
「拍車がかかる」を悪い場面で使うときの例文は、以下の通りです。
- 最近、祖父の老化に拍車がかかっているように感じる。
- 多忙に拍車がかかって、体調を崩してしまった。
このように、「拍車がかかる」は、物事がさらに悪化してしまったときにも使うことができるのです。
「拍車がかかる」と「拍車をかける」の違い

「拍車がかかる」と似ている表現に、「拍車をかける」というものがあります。
「拍車がかかる」と「拍車をかける」は、言い換え表現として使うことができるほど、ほとんど同じ言葉といえます。
ただし、厳密には、意味合いに以下のような違いがあります。
- 拍車がかかる
受け身の意味合いが強い - 拍車をかける
能動的な意味合いが強い
実際に、例文を比較してみましょう。
- トレーニングに拍車がかかる。
「外からの刺激で、トレーニングが捗る」という受け身の意味合い - トレーニングに拍車をかける。
「自分の意志でトレーニングを捗らせている」という能動的な意味合い
したがって、より正確に使い分けたい場合は、受け身の意味合いを表したい際に「拍車がかかる」を使いましょう。
「拍車がかかる」が使われ始めた時期

「拍車がかかる」が慣用句として使われるようになったのは、明治時代中期からです。
なぜなら、拍車という道具が日本で使われるようになったのが、明治時代だったからです。
ここからは、日本における拍車の歴史を詳しく解説します。
日本における「拍車」の歴史
すでに解説したとおり、拍車は、馬の走る速度を上げる道具です。
拍車は、紀元前4世紀ごろから、西洋諸国で使われていたとされています。
しかし、日本では明治時代になるまで、拍車が使われていませんでした。
馬を走らせる道具としては、拍車ではなく、ムチが使われていたのです。
明治時代になり、西洋の文化が広まると、ようやく日本でも拍車が使われるようになりました。
拍車が馬具として日本に浸透した結果、文学作品で「拍車がかかる」という慣用句が使われるようになったのです。
「日本の馬術では拍車が使われていなかった」という事実は、記述としても残っています。
安土桃山(あづちももやま)時代、ポルトガル人が、キリスト教を広めるために来日しました。
このとき、ポルトガル人たちは、「日本には拍車がない」と書き残しています。
「拍車がかかる」の類義語

「拍車がかかる」には、たくさんの類義語があります。
これらの類義語は、以下3つのパターンに分けることができます。
- 良い意味をもつもの
- 悪い意味をもつもの
- 良い意味・悪い意味の両方をもつもの
次の見出しからは、それぞれのパターンに分けて、「拍車がかかる」の類義語を紹介します。
類義語①良い意味をもつもの
「拍車がかかる」の類義語のうち、良い意味をもつものには、以下のような言葉があります。
- エンジンがかかる
良い調子が出てくる - 促進(そくしん)する
物事をスピーディに進める - 追い風(おいかぜ)に乗る
物事の速度が上がり、良い状態になること
類義語②悪い意味をもつもの
「拍車がかかる」の類義語のうち、悪い意味をもつものには、以下のような言葉があります。
- エスカレートする
激しさが増し、ひどくなる - 悪化(あっか)する
さらに悪い状態になる - 騒ぎが大きくなる
もめごとがさらに深刻になっていく - 火に油を注ぐ(そそぐ)
もともとの状態を、より悪い状態にする
類義語③良い意味・悪い意味の両方をもつもの
以下の類義語は、良い意味でも悪い意味でも使うことができます。
- 加速(かそく)する
スピードを上げる - 本格化する
レベルが上がり、本格的なものになる - 輪(わ)をかける
程度をさらに強める - 助長(じょちょう)される
傾向をさらに強める
「拍車がかかる」の対義語

「拍車がかかる」には以下のような対義語があります。
- 歯止め(はどめ)がかかる
物事の進行が止まる - 焼け石(やけいし)に水
努力や助けが役に立たず、状況が変わらないこと
どちらも、「物事が前進しない」という点で、「拍車がかかる」の対義語といえます。
「拍車がかかる」の英語訳

「拍車がかかる」を英語に訳すと、以下のような表現になります。
- spur〜
(〜に拍車がかかる) - give impetus to〜
(〜に拍車がかかる) - speed up
(〜を加速させる)
それぞれの表現を用いた例文を見ていきましょう。
“spur〜” を用いた例文
“spur〜” を用いた例文には、以下のようなものがあります。
(さらなる支援で、あなたの会社の成長に拍車がかかる。)
“spur” は、名詞でも使います。
名詞では、馬術の道具としての「拍車」を指します。
“give impetus to〜” を用いた例文
“give impetus to〜” を用いた例文には、以下のようなものがあります。
(この賞によって、地理研究に拍車がかかるだろう。)
“speed up” を用いた例文
“speed up” を用いた例文には、以下のようなものがあります。
(その式典は早く進行した。)
「拍車がかかる」のまとめ
以上、この記事では「拍車がかかる」について解説しました。
| 読み方 | 拍車(はくしゃ)がかかる |
|---|---|
| 意味 | 物事の進行が一気に加速する |
| 使われ始めた時期 | 明治時代の中期から使われるようになった |
| 類義語 | 「エンジンがかかる」「エスカレートする」「加速する」など |
| 対義語 | 「歯止めがかかる」「焼け石に水」など |
| 英語訳 | spur〜(拍車がかかる)など |
「拍車がかかる」は、良い意味合いでも、悪い意味合いでも使うことができる言葉です。
類義語などもふまえて、各場面で「拍車がかかる」を使いこなせるようになりましょう。










