「俳句」と「短歌」と「川柳」の違いとは?季語を入れるのは?

違いのギモン

有名飲料メーカーが主催する俳句コンクールや、短歌の大会、シルバー川柳など、世の中には多くの韻文ジャンルがあります。

学校で課題として出されることも多いですが、5・7・5なのか5・7・5・7・7なのか迷ったことはありませんか?また、季語を入れるのはどれかわからなくなったこともあるのではないでしょうか。

今回は「俳句」「短歌」「川柳」の違いについて解説していきます。

☆「俳句」「短歌」「川柳」の違いをざっくり言うと……

形式テーマ成立時期
短歌5・7・5・7・7身の回りの事実奈良時代
俳句5・7・5季節や自然江戸時代
川柳5・7・5社会風刺江戸時代

結論:形式・テーマ・成立時期が違う

短歌は奈良時代に成立し、俳句は江戸時代にできたものです。川柳は、俳句をもとにして作られたものです。古い順に短歌→俳句→川柳となっています。形式やテーマにも違いがあります。

形式テーマ成立時期
短歌5・7・5・7・7身の回りの事実奈良時代
俳句5・7・5季節や自然江戸時代
川柳5・7・5社会風刺江戸時代

「俳句」をもっと詳しく

5・7・5であることと、季語が入っていることが俳句の基本ルールです。季節や自然を題材にしたものが中心です。

俳句は俳諧(はいかい)とも言い、「面白い、こっけいな」という意味があります。今ではジャンルの一つとなっていますが、昔は形容詞として使われていました。笑いの要素のある作品を、和歌にたいして俳諧歌(はいかいか)、連歌にたいして俳諧之連歌(はいかいのれんが)と言いました。

実際に江戸時代に入るまで、俳諧は「和歌・連歌」の余興で遊びとして作られる格下の創作と見なされていましたが、松尾芭蕉はその概念を変えました。芭蕉は「しゃれやおどけだけが俳諧ではない」と考え、いわば「真面目な俳諧」を目指して創作をしました。また、正岡子規は俳諧を受け継ぎました。

 

文学ジャンルとしての俳諧は、俳諧之連歌を略して呼んだものです。連歌は5・7・5・7・7・5・7・5・7・7・・・と永遠に続いていくものですが、発句(ほっく。連歌の最初の5・7・5)が俳諧と呼ばれ、明治以降に俳句と呼ばれるようになります。

連歌の遊戯性・庶民性を高めたものが俳諧です。江戸時代に芭蕉がその芸術性を重視して俳句のもとになるものを確立し、明治時代に正岡子規が近代文芸として俳句を成立させたという流れを理解しましょう。

「短歌」をもっと詳しく

短歌は、5・7・5・7・7の三十一文字(みそひともじ)で構成されるもので、「やまとうた」の一種です。その「やまとうた」の一ジャンルだった「短歌」が、平安時代に「和歌」と呼ばれるようになりました。

本来短歌と和歌は名前が変わっただけの同じものでした。しかし和歌は貴族社会において進化をとげ、掛詞や枕詞・縁語・倒置法・引き歌など、数々の趣向をこらした技巧的なものになりました。しかし正岡子規はそのようにギミックに富んだ和歌を批判しました。

子規は素朴で自然な写生(見たものをそのまま表現すること)を重視したのです。そのため、優雅さや美しさを求めた和歌にたいして、短歌は自分の身の回りことや日常という事実を題材にするのが一般的です。

つまり和歌と短歌は形式的には同じですが、和歌は明治以前の技巧に富んだ歌を指し、短歌は明治以降の技巧にとらわれない素朴な歌を指します。

「川柳」をもっと詳しく

川柳は、5・7・5で構成され、おもに口語表現(話し言葉)が用いられます。

俳句から芸術性や季語・切れ字などの細かいルールをなくし、だじゃれや言葉遊びの要素を含んだものです。本来の俳諧に近いものかもしれません。

題材として、サラリーマン川柳のように誰にでもわかりやすいものや、社会風刺をしたものが中心です。

川柳は短歌や俳句に比べて自由度が高くて身近な創作だと言えます。

参考:和歌

和歌は5・7・5・7・7の三十一文字(みそひともじ)で構成されます。中国の漢詩にたいして「やまとうた」と呼ばれた短歌と形式的には同じで、やまとことば(日本古来の言葉)を使い、四字熟語などの漢語や流行語は用いてはならないなど、さまざまな決まりがあります。

和歌は、当時の官僚の能力をはかるのに非常に重要な役割を果たしていました。歌会(天皇の前で和歌を詠む会)などで良い歌を詠めばご褒美がもらえたり、出世したりできます。しかし失敗してしまうと天皇が怒って地位を落とされてしまうかもしれませんし、なにより大勢の前で恥をかくことになります。

官僚たちはそんな事態になったら大変ですから、必死で和歌を作るわけです。しかし現代を生きる私たちも、学術論文やビジネス文書のような固い文章ばかり書いていたら疲れてしまいます。たまには日記や手紙のようなライトな文を書きたくなりますよね。

昔の貴族もきっと同じことを考えていたのでしょう。だからこそ、息抜き感覚で俳諧歌なるものを詠んでいたのだと考えられます。

まとめ

以上、この記事では、「俳句」「短歌」「川柳」の違いについて解説しました。

形式テーマ成立時期
短歌5・7・5・7・7身の回りの事実奈良時代
俳句5・7・5季節や自然江戸時代
川柳5・7・5社会風刺江戸時代

「やまとうた」の一種としての明治以前の短歌が、和歌・俳句・川柳の源流だということがわかりました。

俳句と短歌は芸術性が高く、しっかり勉強してから作るものです。川柳は堅苦しいルールがなく、より身近で大衆的なものです。まずは敷居の低い川柳の創作から初めて、韻文の魅力的な世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

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mikan
愛読書は広辞苑。 日本語の持つゆかしさや含み、趣深さが大好きです。大学では音声学・日本語学を専攻しました。 慣用句や四字熟語が得意分野です。