「貪欲」と「強欲」の違いとは?意味から使い分けまでわかりやすく解説

違いのギモン

「悪徳会社の借金取りは貪欲(どんよく)で、毎日のように取り立てにくる。」
「悪徳会社の借金取りは強欲(ごうよく)で、毎日のように取り立てにくる。」

どちらの文章も誤りはありません。「貪欲」と「強欲」は、どちらも「欲深いこと」を表す言葉です。

 

しかし「貪欲」と「強欲」は、違う言葉である以上、意味的に何らかの違いがあるはずです。あなたはこの2語の違いを知っていますか。

今回は、使いどころは分かっても、明確な違いが分からない「貪欲」と「強欲」の違いを解説していきます。

結論:「貪欲」は良い意味でも使う。

どちらも「非常に欲深いこと」という意味です。

「貪欲」は、良い意味でも悪い意味でも使います。

「強欲」は、悪い意味でしか使いません。

「貪欲」をもっと詳しく


「貪欲」とは、欲深く、どれだけ欲しいものを手に入れても満足しないことです。「貪欲」である対象として、金銭や物の他、知識などがあります。古くは「とんよく」とも読まれていました。

「貪欲」の「貪」には、「むさぼる、欲張る」といった意味があります。常用漢字の1つですが、日常会話の中で使う頻度としては、「強欲」の「強」よりも少ないです。そのためか、「貪欲」よりも「強欲」の方が言葉として広く使用される印象があります。

 

「強欲」との違いは、否定的な意味だけでなく、肯定的な意味でも使うことです。例えば知識に対して「貪欲」である場合には、知的好奇心を純粋に追求し、知識を増やしていく良い意味として使用されます。

 

仏教において、人間の基本的な10種類の罪悪を表すものとして「十悪(じゅうあく)」という言葉があります。「十悪」には、次のものが該当します。

  • 殺生(せっしょう):生き物を殺すこと
  • 偸盗(ちゅうとう):他人のものを盗むこと
  • 邪淫(じゃいん):配偶者でない人との性行為
  • 妄語(もうご):嘘をつくこと
  • 綺語(きご):言葉を飾り立てること
  • 悪口(あっく):人の悪口(わるぐち)を言うこと
  • 両舌(りょうぜつ):人によって話す内容を変えること
  • 瞋恚(しんい、しんに):憎しみ、怒ること
  • 邪見(じゃけん):道理とは違う、誤った考え方をすること
  • 貪欲(どんよく):非常に欲深いこと

 

これに対し、「十悪」を犯さないことを表す仏教の言葉として「十善(じゅうぜん)」があります。

  • 不殺生(ふせっしょう):生き物を殺さないこと
  • 不偸盗(ふちゅうとう)::他人のものを盗まないこと
  • 不邪淫(ふじゃいん):配偶者とのみ性行為を行うこと
  • 不妄語(ふもうご)::嘘をつかないこと
  • 不綺語(ふきご)::言葉を飾り立てず、素直に言うこと
  • 不悪口(ふあっく):人の悪口を言わないこと
  • 不両舌(ふりょうぜつ):話す内容が誰に対しても同じであること
  • 不瞋恚(ふしんい、ふしんに):憎しみや怒りがないこと
  • 不邪見(ふじゃけん):道理に従った考え方をすること
  • 不貪欲(ふとんよく):欲深さがないこと

「貪欲」の使い方の例

・彼は教わったあらゆる知識を貪欲に吸収している

→このように知識に対し「貪欲」である場合には、良い意味として使用されます。

・彼はどれだけ富を蓄えようと、貪欲に金を求め、仕事をする。

→単に金や物に対する欲深さを表す時には、「強欲」と同様に悪い意味になります。

「強欲」をもっと詳しく


「強欲」とは、非常に欲深いことです。自分が持っていないものを欲しがり、どれだけ手に入れても「足りない」と感じるような場合に使用します。

「強欲」という言葉は、「貪欲」とは異なり、良い意味で使われることはありません。常に自己中心的で、欲張りな意味になります。

 

キリスト教のカトリック教会における言葉として、 “seven deadly sins” 、日本語では「七つの大罪」というものがあります。これは、人間にとって罪となりうる危険な欲望や感情を総称した言葉です。

この中の1つには「強欲」が含まれています。

  • 暴食
  • 色欲
  • 強欲
  • 憤怒
  • 怠惰
  • 傲慢
  • 嫉妬

「強欲」の使い方の例

・君の金に対する強欲な態度は、いつか君自身の身を滅ぼすだろう。

→「非常に欲深い」と言い換えることができます。

まとめ

以上、この記事では、「貪欲」と「強欲」の違いについて解説しました。

  • 貪欲:良い意味でも悪い意味でも使う
  • 強欲:悪い意味でのみ使う

適度な欲は、向上心や生きる上での活力となり、有益です。一方、強すぎる欲は、周囲から奪おうとする思考となり、人が離れていってしまうかもしれません。

ある程度の欲は大切にしながらも、「貪欲」で「強欲」な人間にならないように気をつけていきましょう。