「現状」と「原状」の違いとは?意味から使い分けまでわかりやすく解説

違いのギモン

「げんじょう回復」や「げんじょう維持」等、「げんじょう」を用いる場面は多いです。ただ、そこには「現状」と「原状」の使い分けが存在します。みなさまは、両者の違いをご存知でしょうか。

以下では、「現状」と「原状」の違いについて解説します。

結論:「現状」は現在の状態を指し、「原状」はもとの状態を指す。

「現状」は、現在におけるそのままの状態を指します。

一方、「原状」は、もともとあった状態を意味します。

「現状」をもっと詳しく


「現状」とは、今目の前にあるそのままの状態を指します。つまり、「現在の状態」を短縮した熟語と考えればよいでしょう。英語では、「現在」と「状態」を表す単語を用いて present situation と表現します。

後に解説する「原状」との間違いが多いのは、「現状維持」という表現です。「現状維持」は、今の状態をキープするということを言いたい言葉です。そのため、「今の状態」に相当する「現状」を用います。

「現状」の使い方

  1. 受験勉強に取り組むにあたり、自分の学力レベルに関して、現状の課題を把握する。
  2. 現状維持に落ち着きたいが、もう少し挑戦もしてみたい。
  3. 現状を打破するには、やり方をがらっと変えねばならないだろう。
①のように、「現状の」という修飾語として「現状」を用いることもあります。「現状の課題」という表現はよく使われます。

②では、今の状態を維持するか、それとも一方踏み出すかを悩む人の気持ちが描かれています。

③の「現状を打破する」も頻出の表現です。この場合は、「現状」が、あまりよい状態ではないことが前提となっています。

「原状」をもっと詳しく


「原状」とは、最初にあった状態という意味の言葉です。英語では、original state と言います。

「現状」の場合は、いくつか段階を踏んだ上で「今の状態」を指すため、タイミングによって状態が異なります。それに対して、「原状」はもともとの状態を指すため、表現される状態は当然1つです。

また、冒頭で書き記した「げんじょう回復」は「原状回復」と書きます。「原状回復」は、もとの状態に戻すことを指します。

たとえば、ミーティング後の会場を、利用前の状態に戻すことなどが「原状回復」です。「現状回復」との間違いが多いですが、「現状」は今の状態を指すため、「回復」という言葉と釣り合わないですよね。

法律用語の「原状回復」

「原状回復」は、主に法律用語として使われる言葉です。法律上の事情が変化した場合に、再び元の状態に戻すことを指します。

たとえば、売買契約が解除された際に、売り主は買い主に売ったものを取り戻すことができ、これが「原状回復」に当たります。

「原状」の使い方

  1. ある俳優の名誉毀損における原状回復として、謝罪広告が新聞に載った。
  2. 賃貸契約を愛所した住人は、原状復帰の義務がある。
①の文では、俳優の名誉を回復させるために、不当に名誉を怪我したことを謝罪することを「原状回復」と表現しています。ここでの「原状」は、不当に名誉を損なう前の状態を指しています。

②の「原状復帰」は、建設業界における専門用語です。住居を明け渡す際に、部屋を綺麗にする等、できるだけ元の状態に近い形に近づけることを指します。

まとめ

以上、この記事では、「現状」と「原状」の違いについて解説しました。

  • 現状:現在の状態
  • 原状:最初にあった状態
「現状」と「原状」は、構成されている漢字に注目すれば、その違いがよりわかりやすくなります。

「現状」は、読んで字のごとく「現在の状態」を指します。一方、「原状」の「原」は、「原点」などのように、初めの状態を表す熟語に使われることが多い漢字です。そこを押さえると、「原状」はもともとの状態を指すということは理解しやすくなるでしょう。