「学習性無力感」とは?意味や克服する方法をわかりやすく解説

言葉

学習性無力感とは「ストレスをどうしようもできない状況に長時間いることで、次第にストレスから逃れようとしなくなる現象」を指す言葉です。

みなさんは、勉強していて点数が上がらない時に、ストレスを感じたことがありませんか?

これに関する心理学用語が、学習性無力感です。

ここでは、学習性無力感の意味や学術的に見る学習性無力感などについてわかりやすく解説します。

☆「学習性無力感」をざっくり言うと……

読み方学習性無力感(がくしゅうせいむりょくかん)
意味ストレスをどうしようもできない状況に長時間いることで、次第にストレスから逃れようとしなくなる現象
提唱者心理学者マーティン・セリグマン氏

「学習性無力感」の意味

学習性無力感がくしゅうせいむりょくかん

ストレスをどうしようもできない状況に長時間いることで、次第にストレスから逃れようとしなくなる現象

学習性無力感とは、抱えているストレスをどうしようもできないという状況に長時間追い込まれることにより、自分の手でストレスを解決しようとしなくなる、という現象のことです。

普通、何らかのストレスを抱えている場合には、そのストレスを解決しようと他人に相談したり、ストレスの原因を取り除こうとしたりと様々なアクションを起こします。

しかし、それらのアクションを起こしてもストレスが解消されない場合、だんだんと「自分はこのストレスをどうすることもできないんだ」と無力感に苛まれるようになります。

この状況が長い間続くことで学習性無力感を発症し、その後抱えているストレスを解消できるような状況に好転したとしても、自分でストレスを解消しようとしなくなるのです。

 

そんな学習性無力感は、人間だけでなく、犬やネズミなど様々な生物で発症します。

さらに、学習性無力感は伝染するとも言われています。

学習性無力感に陥っている人の様子を見ていることで、自然と見ている側もストレスがかかっていき、逃れられなくなるのです。

加えて、学習性無力感はうつの原因となるとも言われています。

学術的に見る学習性無力感

学習性無力感は、心理学の用語です。

心理学において学習性無力感は、「期待理論」という理論の中の「結果期待」という分類における、「随伴性認知」というものの一種と考えられています。

「期待理論」「結果期待」「随伴性認知」という言葉のそれぞれの意味は、以下の通りです。

  • 期待理論
    人がどのように動機付けを行い、行動を選ぶのかということを考える学問
  • 結果期待
    「Aという行動をとると、Bという結果が起きるのではないか」と予測すること
  • 随伴性認知
    自分が選んだ行動によって、物事の成功や失敗が変化したと認知すること

つまり、学習性無力感は人が自分の行動予測を外し続けた結果、物事に動機付けをすることができなくなって発生する現象であると考えることができます。

「学習性無力感」の具体例

学習性無力感は以下のような場面で発生すると考えられます。

学習性無力感の具体例
  • テストで赤点をとり続けるのが嫌で必死に勉強をするも、赤点を回避できない状況が続くと、次第に勉強そのものを全くしようとしなくなる。
  • 営業成績を上げるために必死に頭で考えて営業を行うも、成績が上がらない状況が長い間続くと、次第に考えながら営業をすることをやめてしまう。
  • 配偶者からの暴力を止めてもらうために周囲の人に相談するなどの対策を行うも、配偶者からの暴力が全く改善されない場合、次第に暴力に対して抵抗するのをやめてしまう。

「学習性無力感」の提唱者


学習性無力感は、アメリカの心理学者マーティン・セリグマン氏によって1967年に発表されました。

彼は、2匹の犬と電流を用いた実験を行い、この現象を証明しました。

彼が行った実験は以下の通りです。

 

実験内容

彼は2匹の犬を、それぞれ以下のような部屋に分けて入れました。

  1. 電流が流れているが、犬がスイッチを押すと電流が止まる
  2. 電流が流れており、犬が何をしても電流は止まらない

このような部屋に長時間犬を入れた後、次に彼は2匹の犬を「電流が流れているが、しきりを飛び越えることで電流を回避できる部屋」に入れました。

すると、①に入っていた犬はしきりを飛び越えて電流を回避することができましたが、②に入っていた犬はしきりを飛び越えようともしなかったのです。

このことから、長時間ストレスを回避できない状況にいると、ストレスを回避しようとしなくなることがわかりました。

学習性無力感の実験

上で行われているような犬を使った実験以外にも、学習性無力感に関する実験は存在します。

ここでは、雑音を使ったものと数学の問題を使った実験の2つを紹介します。

雑音を扱った実験

この実験では、人間を2つのグループに分け、それぞれ以下のような2つの部屋に分けて入れました。

  1. 雑音が流れているが、スイッチを押すと雑音が止まる
  2. 雑音が流れており、何をしても雑音が止まない
この状態で長時間待機したところ、②のグループでは学習性無力感が発症したと言われています。

このように、犬ではなく人間であった場合でも、ストレスを回避できない状況が長時間続くと、学習性無力感が発症するのです。

数学の問題を使った実験

この実験では、2つのグループを作り、グループごとに以下の①か②のどちらかの問題を解かせました。

  1. 答えがある問題
  2. 答えも解説もない問題
この状態で長時間待機したところ、どちらのグループにも学習性無力感は発症しませんでした。

これまでの流れで行くと、②のグループは「問題を解く」というストレス解消方法がとれないため、学習性無力感に苛まれるのではないかと予想できます。

しかし、この場合は与えられた問題がたまたま答えも解説もないだけであり、どうにもできないという状態が複数回にわたって続くものではなかったため、学習性無力感を回避することができるのです。

「学習性無力感」の対処法

学習性無力感は、心の持ち方によって対処することができます。

学習性無力感の対処法としては、以下のようなものがあります。

  1. 自分の行動が結果に影響を与えると実感する
  2. ストレスが解消されない原因を「自分の能力」や「自分の努力」にあると考える

それぞれの方法について、詳しく解説を行います。

①:自分の行動が結果に影響を与えると実感する

学習性無力感の一番の原因は、自分の行動によってストレスを解決できないと思い込むことにあります。

そのため、些細なことであっても自分の行動によって状況が変わったと認識することで、学習性無力感に陥ることを避けることができます。

だからこそ、行動によって何か変化してないかと、変化を探すことが大事になります。

②:ストレスが解消されない原因を「自分の能力」や「自分の努力」にあると考える

ストレスが解消されない理由を、自分のせいだと捉えることも一つの解決策になります。

このように考えることで、「自分が成長すればストレスを解消できるのではないか」と希望をもつことができ、学習性無力感に陥ることを避けることができます。

しかし注意点として、既に自分が最大限努力していると心で考えている場合には、この方法は有効ではありません。

そのため、自分を責めすぎないようにしましょう。

「学習性無力感」のまとめ

以上、この記事では学習性無力感について解説しました。

読み方学習性無力感(がくしゅうせいむりょくかん)
意味ストレスをどうしようもできない状況に長時間いることで、次第にストレスから逃れようとしなくなる現象
提唱者心理学者マーティン・セリグマン氏

このように、学習性無力感はストレスを回避しようとしなくなるという、生命にとって危険な状況を起こしうる心理状況です。

対処法を参考にしながら、学習性無力感を回避していくようにしましょう。

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つつつ
この道10年以上の読書家。 短い言葉で人を惹き付けるコピーが大好きです。 本の帯に書かれたコピーを見て買ってしまうこともしばしば。 読書で得た文章力を活かして、日常生活でよく使う言葉を中心に執筆しています。