「早い」は「物事が行われるタイミングが基準となる時点よりも前である」という意味で、「速い」は「一定の時間内であることが行われる回数が多い」という意味です。
「早い」と「速い」の使い分けはなんとなく知っているものの、ふとした時にわからなくなってしまう方が多いのではないでしょうか。
たとえば、「話がはやい」は「早い」と「速い」のどちらを使うのでしょうか。
そこで、この記事では「早い」と「速い」の違いから使い分けまでわかりやすく解説しています。
「早い」と「速い」の違い
「早い」と「速い」には以下のような意味の違いがあります。
- 早い
物事が行われるタイミングが基準となる時点よりも前である - 速い
一定の時間内であることが行われる回数が多い
「早い」と「速い」では意味が明確に異なるのです。
「早い」と「速い」の使い分けの例
「早い」と「速い」はたとえば以下のように使い分けられます。
- 早い電車
→早朝に発車する電車 - 速い電車
→特急や新幹線など、スピードがはやい電車
- 話が早い
→話が伝わるまでの時間がはやい - 話が速い
→早口で、高速で話している
「早い」はその動作が終わる時点、「速い」は1回の動作あたりの時間に着目した表現なのです。
「早まる」と「速まる」の使い分けは基本的に「早い」「速い」の使い分けと同じです。
「早まる」は時刻がはやくなることを表し、「速まる」は動作のスピードがはやくなることを表します。
ただ、「早まる」には間違った判断でまだ時期が来てない物事を行う、という意味もあります。
「早い」の意味
- 物事が行われるタイミングが基準となる時点よりも前である
例:日が落ちるのが早い。 - まだその時期ではない
例:あきらめるにはまだ早い。 - 簡単
例:自分でしたほうが早い。
「早い」は実は3つも意味がある言葉なのです。
「早い」の漢字
「早い」の「早」という漢字は、実は当て字です。
「物事が行われるタイミングが基準となる時点よりも前である」という意味の漢字がなかったため、「早」が当てはめられたのです。
なお、「早」の上の「日」の部分は太陽、下の「十」の部分は人の頭を表します。
人の頭の上に太陽が昇る時刻である早朝から、現在の意味が生まれました。
「早い」の使い方
「早い」は以下のように用いられます。
- 明日は家を出るのが早い。
- まだ大人の関係になるには早い。
- 話が早くて助かるよ。
- 今日もお早いですね。
- 手続きを早く済ませておく。
「早い」の類義語
「早い」の類義語としては、以下のような言葉が挙げられます。
- 早期
時期が早いこと - 早々に
時間的に早いこと
「早い」の対義語
「早い」の対義語としては、以下のような言葉が挙げられます。
- 遅い
物事が進むのに時間がかかること
「早い」の英語訳
「早い」を英語訳にすると、以下のような表現になります。
- early
(早い)
「速い」の意味
一定の時間内であることが行われる回数が多い
例:車は自転車よりも速い。
「速い」は「早い」と違って、意味はひとつしかありません。
1動作あたりのスピードに着目した表現です。
「速い」の漢字
「速」は「行く」という意味を表す「辶(しんにょう)」と薪を束ねた様子を表す「束」が合わさってできた漢字です。
そして、「時間を束にしてまとめる(= 時間を縮める)」というニュアンスから、「速い」の「一定の時間内であることが行われる回数が多い」という意味が生まれました。
「速い」の使い方
「速い」は以下のように用いられます。
- ウサイン・ボルトは足が速い。
- 新卒1年目なのに仕事が速くて助かるなぁ。
- 速いパス回しに翻弄される。
- この川は流れが速いから気をつけたほうがいい。
- 相手投手の球が速すぎて打てなかった。
「速い」の類義語
「速い」の類義語としては、以下のような表現が挙げられます。
- 高速
速度がはやいこと - スピーディー
物事がさっさと進むこと - ハイスピード
速度がはやいこと
「速い」の対義語
「速い」の対義語としては、以下のような表現が挙げられます。
- 遅い
物事が進むのに時間がかかること - のろい
進むスピードが遅いこと - ゆっくり
動作を急がないこと
「遅い」は「早い」と「速い」の両方で対義語として挙げられるのです。
「遅い」は時間が遅い時にも用いられますし、スピードが遅い時にも用いられます。
「速い」の英語訳
「速い」を英語に訳すと以下のような表現になります。
- fast
(速い)
「早い」と「速い」の使い分け【応用編】
ここまで「早い」と「速い」の使い分けについて見てきましたが、実は「早い」と「速い」の使い分け、もしくは「早」と「速」の使い分けには難しい例もあります。
今回は以下の項目に分けて、「早い」と「速い」の使い分けについてより深く学んでいきましょう。
「早い」と「速い」の使い分けに迷ったら、「早い」を使ったほうが無難です。
明らかに動作のスピードを表すのでなければ、「早い」もしくは「早」が用いられる場合が多いからです。
また、「はやい」とひらがなで表記することもひとつの手段と言えるでしょう。
「回復がはやい」は早い? 速い?
「回復がはやい」は「早い」を使うのが正解です。
「回復がはやい」は一見、「回復するまでのスピードがはやい」という意味から「速い」が正解ではないかと思うかもしれません。
しかし、「基準となる時点よりも回復するのがはやい」ということなので「早い」が正解になるのです。
「時が経つのがはやい」は早い? 速い?
「時が経つのがはやい」は「速い」を用いるのが正解です。
「思ったよりも時間が進むスピードがはやい」というニュアンスだからです。
「計算がはやい」は早い? 速い?
「計算がはやい」では「速い」を使うのが正解です。
「計算をするスピードがはやい」というニュアンスになります。
「早口」「早業」はなぜ「早」?
「早口」や「早業」などの熟語には「早」の漢字が使われています。
しかし、「早口」は「話すスピードが速い」という意味ですし、「早業」は「すばやくて巧みな技」という意味ですから、「速」を使うのが正しいように思えます。
ただ、「早口」は「基準となる時点よりも早く話し終わる」と言えますし、「早業」は「基準となる時点よりも仕事が早く終る」と言えます。
このように、どちらのニュアンスでも取れる表現の場合、「早」が使われる場合も多いのです。
他の「はやい」と読む言葉
「早い」と「速い」の他に、「はやい」と読む言葉には以下のようなものが挙げられます。
- 疾い
- 捷い
- 迅い
それぞれの言葉について詳しく見ていきましょう。
疾い
素早い
例:川の流れが疾い
「疾い」はあまり使われませんが、川の流れ、足のはやさなど、「素早い」というニュアンスがある時には用いることができます。
「速い」よりもさらにスピードがはやいという印象を与える表現です。
「疾」は人が病気でベッドにもたれている様子を表す「疒(やまいだれ)」と、武器の「矢」からできた漢字です。
捷い
素早い
例:足が捷い
「捷い」も使われることが少ないですが、「疾い」とほぼ同じニュアンスです。
「速い」よりもスピードがはやいと感じた時に用いられます。
「捷」は女性が使うかんざしを手で素早く取る様子を表す漢字です。
迅い
速度が優れていること
例:新幹線は迅い。
「迅い」も使われるケースは少ないですが、「疾い」「捷い」と同じような意味で用いられます。
「迅」ははやぶさが飛ぶ様子を表す「卂」と「行く」という意味を表す「辶(しんにょう)」を組み合わせた漢字で、「速く進む」様子を表します。
「早い」と「速い」の違いのまとめ
以上、この記事では、「早い」と「速い」の違いについて解説しました。
- 早い
物事が行われるタイミングが基準となる時点よりも前である - 速い
一定の時間内であることが行われる回数が多い
今度からは「早い」と「速い」を明確に使い分けていきたいですね。