どちらも疑うことを意味する「訝しい (いぶかしい) 」と「怪しい」という言葉。
しかし、その意味の違いについて考えたことのある人は、少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、「訝しい」と「怪しい」の違いについて徹底解説します。
結論:「訝しい」は関心、「怪しい」は不快感を伴う
しかし、「訝しい」の動機は、疑いを抱いている対象に対する興味・関心です。
一方、「怪しい」の動機は、疑いを抱いている対象に対する恐怖や疑念・不安です。
「訝しい」をもっと詳しく
「訝しい」とは、興味・関心を動機とした対象に対する疑いを表します。
「怪しい」がさまざまな場面で用いられるのに対し、「訝しい」は人間に対して使われることが多い言葉です。
たとえば、『彼女は訝しそうに僕を見た』という表現があるとします。
この場合、彼の言葉か態度を受けて、彼女は「訝しい」視線を向けたのでしょう。
しかし、そこに怒りや不安、恐怖といった不快な感情を伴っているわけではありません。
「訝しい」というとマイナスな言葉のように聞こえますが、実際には、相手の本心を見抜こうという関心が根底にあります。
『相手の本音を探ろう』『何を言おうとしているのか理解させてほしい』
そのような対象に対する『知りたい』という気持ちから生まれるのが、「訝しい」疑いなのです。
つまり、例文の『彼女』の訝しい視線には、『あなたはどういう思いや考えでその言動をしたの?』という思惑が込められています。
「怪しい」をもっと詳しく
「怪しい」とは、恐怖・不安を動機とした対象に対する疑いを表します。
人の行動・態度に使われることもあれば、場所や状況に対して使われることもあります。
しかし、いずれも化学的根拠や物的証拠などがあるわけではなく、受け取り手の個人的観点による疑いとなります。
たとえば、『雲行きが怪しい』という表現があります。
これは『天気がはっきりせず晴れるかどうかわからない』ときに使われる表現です。
この場合、天気に対する疑いは、あくまでも空の様子を見た動作主の主観的なものであり、天気予報などの情報を根拠としたものではありません。
また、恋人の言動に対して「怪しい」を使う場合もあります。
恋人の発言や行動が普段と比べて違和感があったり、疑わしいと感じられるときに使われます。
しかし、先ほどの天気同様、疑いに関して何か確固たる証拠があるわけではなく、受け取り手の個人的な疑念や不安によるものです。
つまり、「怪しい」は、何か明確な根拠があるわけではないが、モヤモヤしたり、不可思議で自信を持てないときに用いられる言葉なのです。
まとめ
以上、今回は「訝しい」と「怪しい」の違いについて解説しました。
- 訝しい:興味・関心から沸く対象への疑念
- 怪しい:恐怖・不安から沸く対象への疑念
もしもあなたが、何かに対して「あやしいな」と感じたら、それが興味を引かれているからなのか、不快な感情によるものなのか考えてみるのも、良いかもしれません。
なぜなら、言葉とは実体験を通して初めて、その意味を本当に理解することができるものです。