心理学用語「ダブルバインド」とは?意味やビジネスへの応用を解説!

言葉

ダブルバインドとは「2つの矛盾した命令がなされていること」という意味です。

たとえば、みなさんも幼少期に親から「もっと勉強しなさい」と言われたあとに「外で遊ばないなんて元気がない」などと言われ、困ったことがあるのではないでしょうか。

このように「どっちに従えばいいかわからない」という状況が起きていると、命令された側としては困りますよね。

逆に、うまく「良いダブルバインド」を使うことによって、相手にストレスを与えずに自分の望む結果を得ることもできます。

この記事では、ダブルバインドについて、意味や理論、抜け出し方やビジネスへの応用なども解説します。

「ダブルバインド」の意味

ダブルバインド

2つの矛盾した命令がなされていること

例:上司に「わからないことは質問しなさい」「そんなことをいちいち聞くな!」と言われる

ダブルバインドとは、「2つの矛盾した命令がなされている状況」のことを言う、心理学用語です。

日本語では「二重拘束」と言いますが、この呼び名はあまり普及せず、日本でも「ダブルバインド」と呼ばれています。

通常、矛盾する2つの命令を受けた側には強いストレスがかかります。そして、恒常的に命令が続いた場合はうつなどの精神疾患へとつながる可能性もあります。

もともとは精神科医であるベイトソンが精神疾患の原因として提唱した理論でしたが、心理学者のエリクソンはこれを逆手にとり、「肯定的(治療的)ダブルバインド」として催眠療法のスキルとしても発展させました。

「ダブルバインド」の6つの要素

ダブルバインドが起きている状況には、以下の6つの要素があります。

  1. 2人以上の関係者がいること
    このうち1人が「犠牲者」になる
  2. 何らかの命令がなされる
    第一次的な禁止命令

    これはもっぱら言葉で行われる
  3. その命令と衝突する命令がなされる
    第二次的な禁止命令

    これは言葉で行われる場合と、態度などの非言語コミュニケーションで行われる場合がある
  4. その状況から逃れることを禁ずる命令がなされる
    第三次的な禁止命令

    親に従わないと子供が生きていけない、上司に従わないと会社をやめさせられるなど
  5. 同じ矛盾した命令が何度も繰り返される
    一度きりではなく日常的にストレスがかかっているということ
  6. 犠牲者が「自分はダブルバインドの状況にいる」と認識できると抜け出せること
①〜⑥に対応して、たとえば、以下のような例が挙げられます。
具体例
  1. 親子のうち、子どもが犠牲者である
  2. 親が「もっと勉強をしなさい」と言う
  3. それにもかかわらず、たくさんの習い事をさせ、習い事の練習をしないと怒る
  4. 子どもはまだ8歳であり、家を出ると生きていけない。また、そのことを親からも強調されている
  5. この状況が数年間続いている
  6. 子どもが親の矛盾に気づくと、親に全て従う必要はないと思える
この例では、子どもはダブルバインドに気がつくまで「勉強をしても習い事をしても怒られる」という状況になっており、数年もの間、ストレスが恒常的にかかっています。

しかも、「親がいないと自分は生きていけない」と思い込まされることにより、その状況から抜け出す術がないと強く思っていて、ストレスを断つ方法がわからなくなっています。

ここで子どもが「親が言っていることは矛盾している」と気がつくと、親にそれを指摘する、あるいは隠れて反抗するなどの対応をとることができます。

「肯定的(治療的)ダブルバインド」の意味

上記のダブルバインドはストレスを与えるダブルバインドでしたが、エリクソンは逆に「どちらを選んでも自分が肯定される」という仕組みを作ることで、治療を成功させることができるのではないかと主張しました。

具体例を挙げると、以下の通りになります。

  • 症状
    人に反抗できない
  • 命令
    友達に反抗しなさい
  • ダブルバインド
    命令に従う=友達に反抗できた
    命令に従わない=治療者に反抗できた
このように、患者がどちらを選んでも治療が成功するように仕組みを作ることを、エリクソンは「肯定的(治療的)ダブルバインド」と呼びました。

「ダブルバインド」の具体例


ダブルバインドの例としては、たとえば以下のような状況が挙げられます。

  • 「わからないことはすぐに聞け」と言っていた上司が
    質問するとすごく嫌そうな顔をする
  • 先生に感想文を「自由に書きなさい」と言われたのに
    自由に感想を書いたら怒られる
  • 親に「勉強しなさい」と言われたのに
    自室で勉強していると手伝いをしろと怒られる
いずれも後半部分が前半の命令の否定になっています。

また、ダブルバインドが起きている場所にも注目しましょう。いずれも「会社」「学校」「家庭」と、一般的にはすぐにその場を去ることができないような場所になっています。

よくある「ダブルバインド」一覧

よくあるダブルバインドの例を一覧で紹介します。

第一次的な禁止命令第二次的な禁止命令
(矛盾する命令)
会社「わからない場合は質問しなさい」と言う質問すると怒る、嫌そうな顔をするなど
ミスとその理由を報告するように言う報告すると怒る、言い訳するなと言うなど
部下に意見を聞く意見を言うと「君の意見は聞いていない」と言う、不機嫌そうな顔をするなど
同期同士のコミュニケーションを奨励する「喋っていないで仕事をしなさい」と叱るなど
親子関係「怒らないから、正直に言いなさい」と言う正直に言うと怒る
「自分で決めなさい」と言う決めたことに対して文句をつける
「勝手にしなさい!」と言う親の望まない行動をすると怒る
学校「自分の意見を言いなさい」と言う自分の意見を言うと修正される
「個性を育てなさい」と言う周りと違うことをすると怒られる
不登校の子供に「無理に学校に行かなくてもいいよ」と言う学校に行くように折に触れて勧められる

自分や自分の周りでこういった状況が起きていないか、気をつけてみましょう。

「ダブルバインド」の提唱者


ダブルバインドの提唱者は、グレゴリー・ベイトソンです。

彼はイギリス出身です。精神科医の経験を持ち、文化人類学や精神学の研究を行っていた彼は、生物間で交換されるメッセージには複数のレベルがあるということを明らかにします。

そして、そのことで矛盾したメッセージが犠牲者に伝わってしまう状況をダブルバインドと名付け、統合失調症の原因をダブルバインドにより説明しました。

現在では統合失調症の発症との関連はないと言われていますが、ダブルバインドが起きている状況に長期間身を置くことが相当なストレスに繋がることにはかわりありません。

「ダブルバインド」の英語訳


ダブルバインドを英語に訳すと、次のような表現になります。

  • double bind
    (ダブルバインド、二重拘束)

元がイギリスで誕生した概念であるため、英語が語源となっています。

“double” は「2つ」、 “bind” は「束縛する」という意味です。この2つを合わせて「二重束縛」を意味する概念になりました。

「ダブルバインド」の悪影響


ダブルバインドの犠牲者には、以下のような悪影響があります。

  • 自由な意思決定ができなくなる
  • 主体性を失う
  • 自分を信じられなくなる
  • 感情を押さえ込むようになる
  • 心身に不調をきたす
また、精神疾患につながる可能性もあります。対人不安やうつ病、不登校、依存症など、ストレスに由来するさまざまな病気の原因になります。

なお、かつては統合失調症の原因だと言われていましたが、現在は関連性があるかどうかははっきりしていないようです。

「ダブルバインド」の対処法

「ダブルバインド」の犠牲者になった場合

ダブルバインドの犠牲者になった場合、まずは相手のメッセージの矛盾に気がつく必要があります。

相手のメッセージの矛盾に気がつく方法として、以下のような方法があります。

  1. 周囲を観察する
  2. 他の人に相談する
  3. 自分の感情と向き合う
それぞれ詳しく見ていきましょう。

方法①:周囲を観察する

1つめの方法は、「周囲を観察する」です。

相手が置かれている状況や、他の人にはどういう態度をとっているのか、今の環境などを観察してみましょう。

そのことで、相手の発言の矛盾や問題点に気づくことができ、心に余裕を持って相手と接することができます。

方法②:他の人に相談する

2つめの方法は、「他の人に相談する」です。

特にダブルバインドを引き起こす相手は自分より立場が上であることが多いため、逃げられなくなってしまったり、知らず知らずのうちに相手の言うことをすべて正しいと思ってしまいます。

第三者に相談することにより、客観的な目で矛盾点を見つけてもらえたり、場合によってはダブルバインドを起こしている相手に注意してもらえたりする可能性があります。

方法③:自分の感情と向き合う

3つめの方法は、「自分の感情と向き合う」です。

ダブルバインドが起きていると、どちらの選択をしても自分が相手に否定されてしまうため、自分でも自己否定を繰り返すようになってしまうことが多いです。

しかし、一度自己否定は脇において、自分の悲しみや傷つきと向き合うことで、相手の言動を冷静に見つめるチャンスを得ることができます。

「自分が悪い」「相手は自分のためを思って言ってくれているんだ」という気持ちに繰り返しなってしまう場合は、特に注意が必要です。

「ダブルバインド」の加害者になってしまう場合

ダブルバインドの加害者になってしまう場合の改善策としては、以下のような方法があります。

  • 強い立場にいることを自覚する
  • 自分の気持ちを冷静に整理して、正直に伝える
  • 相手の気持ちを一旦受け止める
  • 柔軟な考え方をする
  • 自分もミスをすることを認める
それぞれ詳しく見ていきましょう。

方法①:強い立場にいることを自覚する

1つめの方法は、「強い立場にいることを自覚する」です。

自分が相手よりも強い立場にいることを自覚し、自分の言動のひとつひとつが相手に対して大きな影響を与えることがあることを認識しましょう。

特に、自分が強い立場にあることで、気の向くままに行動すると相手を必要以上に混乱させてしまうかもしれないことを理解しましょう。

方法②:自分の気持ちを冷静に整理して、正直に伝える

2つめの方法は、「自分の気持ちを冷静に整理して、正直に伝える」です。

ダブルバインドは、自分の正直な気持ちを隠そうとすることで起こることも多いです。

たとえば、本当は自分の仕事を邪魔されたくないと感じているのに、部下に「すぐに質問しなさい」と言ってしまうことで、「質問しろと言われたのに質問したら怒られた」という状況が起き得ます。

そういうときに、たとえば「わからない場合はすぐに質問して欲しいけど、教えるのはこちらの仕事のキリがいいときになるかもしれない」などと伝えることで、ダブルバインドを防ぐことができます。

方法③:相手の気持ちを一旦受け止める

3つめの方法は、「相手の気持ちを一旦受け止める」です。

相手が予想外の言動に出てしまったことで、一度良いと言ったものを取り消さなくてはならなくなることもあるでしょう。そういうときは、相手の気持ちを一旦受け止めることが有効です。

極端な例を挙げると、たとえば、子どもに「好きなものなんでも買ってあげるよ」と言ったときに、30万円のものをおねだりされたとします。

そのとき、「それは無理」とつっぱねるのではなく、「なるほど、これが欲しいんだね。でも、予算オーバーだから、申し訳ないんだけど〇〇円以内のにしてもらえるかな?」などと対応すると、ダブルバインドを防げます。

方法④:柔軟な考え方をする

4つめの方法は、「柔軟な考え方をする」です。

ダブルバインドが起きる原因として、相手を自分に従わせないといけないと思い込んでしまっている場合もあります。そのことから、自分の隠れた意思に従わない相手に敵意を見出してしまい、怒ってしまうことも。

しかし、「相手はこちらの内心をわかっていないものだ」「相手が〇〇しているのには、こういう理由があるのかもしれない」と想像することで、自分が不条理な怒り方をすることをやめることができます。

方法⑤:自分もミスをすることを認める

5つめの方法は、「自分もミスをすることを認める」です。

自分がミスをすることや、自分の中に矛盾した感情が存在することを認めることで、「もしかしたら自分は相手に不条理なことを言ったのではないか」ということに気がつきやすくなります。

これは方法①〜④の土台にもなります。

「ダブルバインド」の活用法


ダブルバインドは、「肯定的ダブルバインド」のように、うまく応用すれば相手の判断をこちらにとって望ましい方向に持っていくことができます。

ダブルバインドを応用するコツとしては、以下の2つがあります。

  1. メッセージや選択肢を肯定的なものにする
  2. 相手に選択してもらう
この2つを意識することで、「どちらを選択しても良いことがある」という状況に相手を持っていきながらも、自分の望む選択を相手にさせることができます。

たとえば以下のような例があります。

  • ×「いつ会う?」と聞く
    ○「平日と休日、どっちがいい?」と聞く
  • ×「こちらの商品、購入しませんか?」と聞く
    ○「赤と青、どちらを購入なさいますか?」と聞く
これらは厳密にはダブルバインドではありませんが、ダブルバインドの考え方を利用して、うまく自分の求める方向に相手を誘導しています。ビジネスでもプライベートでも使える手法です。

なお、この手法は誤前提暗示と呼ばれることもあります。本来向こうがまだ決定していないことを前提として選択肢を提示することで、意図した選択を相手に選ばせることができます。

「ダブルバインド」のまとめ

以上、この記事ではダブルバインドについて解説しました。

読み方ダブルバインド
意味2つの矛盾した命令がなされていること
提唱者グレゴリー・ベイトソン
英語訳double bind

自分がダブルバインドに巻き込まれていると感じたら、状況を冷静に見つめ直してみましょう。

ABOUT US

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日英バイリンガル東大生。 10年間小説を書き続けているため、文章力には自信があります。 いくつかの小説投稿サイトで掲載/連載している他、教育系NPOでもライターをしています。